軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ぼよん

「本当に良いんですかね?」

「なら温泉に浸からないで砂浜でドラゴンの始末を手伝って来ても良いんだよ?」

「……アルグスタ様の護衛で来てますしね。うん」

ノイエの体を軽く洗ったルッテがその裸を布で隠して温泉に入って来る。

先に入って来たノイエは僕の右腕に抱き付いたままだ。

「アルグスタ様」

「はい?」

「左腕の具合はどうなんですか?」

「ん~。何かもう大丈夫そうな気がするんだよね」

「早くないですか?」

「真面目に温泉生活を過ごして来たせいかな?」

「決して真面目じゃ無いと思いますが」

呆れつつルッテは1人で温泉を堪能し始める。

彼女の指摘通りに僕の左腕はもうそれ程違和感が無い。

試しに巻いたままの包帯を解いてみる。

「気持ち細くなった気がする」

「大丈夫」

「何が?」

「大丈夫」

答えを持ち合わしていないノイエのいつもながらの『大丈夫』に頷き返しておく。

結局僕の我が儘と言う形で、今日の撤収は無くなり明日の帰還となった。

と言うか、退治したドラゴンをあのまま放置しておくわけにもいかない。

分解して梱包して船に乗せて王都にまで運ぶそうだ。

ただ綺麗に潰されていた2つの頭を見て、コンスーロさんが呆れていたけれど。

近くの砦から兵士たちを呼んで現在ドラゴンは解体作業中だ。

小型のドラゴンが近寄ってきたりしているはずだが、この辺に生息しているのは大半が水生タイプなので、陸に上がって来ることはほぼほぼ無いらしい。

何かあればルッテが気づいてノイエが飛んで行って一発殴って来るしね。

「雨期なのにこの辺は雨降ってないね」

「ですね」

「でも雨が降る前に帰りたいかも」

「王都は雨ですよ」

「憂鬱だな」

左手を温泉に浸からせてにぎにぎしていたら、ノイエが優しく左腕をマッサージしてくれる。

本当に完治してるっぽい気がする。帰ったら一度診て貰おう。

「さてと。夕飯食べてのんびりして……今日は早く寝ようね」

「はい」

嬉しそうな雰囲気を出すノイエは左腕のマッサージをしたままだ。

もう上がる気で居たけど、もう少しだけこのままかな。

「アルグスタ様~。お先に失礼しますね」

「は~い」

「ってあれ?」

その声に自然と目が移る。

体を隠すように巻かれていた彼女の布がっ!

「きゃぁぁぁああああ~っ!」

突然のことに一瞬以上動きを止めていたルッテが、急ぎ大切な三角地帯を両手で隠す。

『ぼよん』という効果音が良く似合うたわわな胸が躍っている。

と、小さくて白い手が僕の目を遮った。

「ダメ」

「そうだね」

お嫁さんの前で他人の裸を見ちゃうのは流石に宜しくない。

慌てた様子のルッテは凄い水しぶきと水音を発して温泉から逃げ出して行った。

そっか。もう10日なんだ。

「ならもう少し待てばノイエも戻るね」

「?」

小首を傾げないでよ。ルッテと同じ日に君も5歳若返ったんだから。

湯から出ようと思っていたけどもう少しだけ待つことにする。

たしかミシュがノイエを騙して壺の中を覗き込ませたから……もう戻っても良いんだけど?

体感的には5分以上経つけど変化は無い。

流石に湯から出て待つけれど変化が無い。

「どうしてノイエは戻らないの?」

その問いに当の本人は小首を傾げるだけだった。

温泉から出て着替えを済まして食事も済ませる。

終始涙目のルッテはスルーで良い。後でお詫びの品として高級お菓子を贈呈すれば良いだけのことだ。

問題はまだノイエが戻らない。本当にどうした?

「どうしてノイエは戻らないの?」

草木も人も寝静まった頃……彼女はベッドの上で体を起した。

甘えるように彼の背中に抱き付いていたのが良く分かる。

「怖いわ~」

「よね」

「グローディアが率先して手を貸すとか……本当に小さかった頃のノイエが好きだったんだね」

「好きだったじゃ無くて、好きなのよ」

「怖いわ~」

部屋に備え付けられている鏡の前に立ってその幼い姿を確認する。

皆に愛され、玩具にされていた少女の姿がそこある。

「異世界の道具の力に干渉するとか、どんな術なの?」

「知らないわよ。私馬鹿だし」

「グローディアは良いとして、『術式の魔女』まで手を貸すだなんてね」

「何だかんだでアイルローゼもノイエのことを愛でていたしね」

「最低で最悪の術式を作った人が、実は幼女好きの変態とか……最悪だ~ね」

「あはは。その言葉、彼女の耳に入ったら殺されるよ?」

「大丈夫よ。封印が解けて表に出て来なければ彼女の術式はノイエにも使えないし」

「うわっ! アイルローゼがこっち見てる。私は関係ないも~ん」

「待ちなさい!」

糸が切れたようにノイエは鏡の前で崩れ落ちてそのまま床に横になる。

しばらくすると彼女はゆっくりと立ち上がった。

「遊ぶのは良いけどちゃんと元に戻しなさい」

「あはは。グローディア……お母さんみたい」

「せめて"姉"と呼びなさい。レニーラ」

「あはは。半殺しにされる前にに~げよっと」

「もう」

鏡の前に立つノイエは、もう一度クルッと回ってその姿を確認する。

うっとりとその表情を蕩けさせ……しばらく。結構。かなりの時を経てからベッドに戻った。

「もう少しこのままで居ましょうね。ノイエ」

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