軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その衣装が過激すぎたかな?

「複数!」

「1回!」

何故かレニーラとシュシュが、正面から顔を押し付け合って喧嘩していた。

セシリーンはその低俗な内容に眉を寄せながら、ため息を吐く。

レニーラの言うことも正しいのかもしれない。ただ前日のシュシュの行為を聞いている限り……あれもあれでありだと思う。

レニーラやホリーは堪え性が無い。直ぐに跨ってしまう。

でもシュシュは最後まで我慢する。我慢して我慢して十分に高まってから行為に及ぶ。

その時の艶やかな声は、耳を澄まして聴いていたセシリーンの全身を熱くさせた。

「人それぞれってことね」

「にゃん?」

深部から戻って来た猫が顔を上げて、また伏した。

スリスリと太ももに頬を擦り付けてくるのが愛らしい。

こんな状態でもファシーは常に緊張状態だ。暴れないように気を張っている。

ファシーは本当に根が真面目で優しいのだ。それを捻じ曲げてしまったのは彼女の家庭環境だとも言える。二つの性格をその身に宿しているからファシーは常に不安定だ。

自由気ままな猫の振りをしているのは、その不安定から来る不安を誤魔化すためだ。

手を伸ばし歌姫は猫の頭を軽く撫でる。耳は動かない。

「残念だったわね。良い魔法が無くて」

「なぁ~」

悲しそうに彼女が鳴く。

耳や尻尾が動けば彼が喜んでくれると知っているからの悲しみだ。

優しく頭を撫でるとファシーが足に腕を回して抱きついて来る。甘えるようにだ。

「どうしたの?」

「セシリーン……」

何かを言いかけて言葉を飲み込む。

我慢する必要はないとばかりにセシリーンは猫の頭を撫でて続きを促す。

「お母さん、みたい」

「老けているって言いたいの?」

「ちが、う」

「分かっているわよ」

揶揄われたと気付いたファシーが拗ねた様子でギュッと足に抱き着く。

それからフルフルと全身を震わせた。

「とても、優しい、から」

「嬉しいわ」

両手を伸ばして猫を捕まえると持ち上げて自分の足の上に座らせる。

素直に従うファシーの心は、今日は荒れていない。

「でもファシーも優しいわよ」

「……ちが、う。私は」

「優しいのよ」

そっと相手を抱き寄せて、セシリーンは我が子のように相手を包み込む。

「悪い子だと貴女は自分のことをそう言うけれど、でも先日の時だって貴女はずっと逃げ遅れた人のことを気にかけていた」

「あれ、は」

「ええ。貴女が人を殺せばアルグスタ様が悪く言われるからでしょ?」

胸の中で素直にファシーが頷く。

「でもあの状況でそのことに気が回る貴女は凄いのよ」

「すご、い?」

「ええ」

優しく頭を撫でていたらフードが外れてしまった。

掌にファシーのサラサラとした髪の感触を覚えながら、セシリーンは優しく言葉を紡ぐ。

「人を救うことを念頭に置いているから誰一人欠くことなく救うことが出来た。それは凄いことよ」

「ほん、とう?」

「ええ」

「……嬉しい」

スリスリと甘えて来るファシーを優しく抱き続ける。

ただ確かにこうしていると自分が母親にでもなった気がして……セシリーンは言いようの無い感情が自分の胸の内に宿っていることに気づいた。

「限界の向こう~!」

「一回の~喜び~!」

ただ周りの声で現実に戻る。

レニーラとシュシュの言い争いは、取っ組み合いの喧嘩へと発展していた。

「ねえファシー?」

「な、に?」

ゆっくりと顔を上げる相手にセシリーンは見えない目を向ける。

我が子に言い聞かせるような気持ちで口を開く。

「貴女はどっち?」

「……何回、でも」

見た目に寄らず貪欲なのがファシーらしい。

「ファシーも女なのね。なに?」

「……くひひ……」

相手の囁きに、セシリーンは自分の背筋に冷たい物が走るのを感じた。

「……そうね」

肯定するしかない。

ただ相手の囁きにセシリーンは遠い場所に対し視線を向ける。彼に同情した。

『彼が弱っていくのを見るのが大好きだから。くひひ。必死に抵抗して、気持ちよさそうな表情をして果てて……それでも終わらない行為に、だんだんと絶望へと変化していく彼の表情がたまらなく興奮するの』などと聞かされたら同情するしかない。

「リグはちゃんと出来るのかしらね?」

魔力が貯まり宝玉を使って外に出たリグの身をセシリーンは案じた。

あの子も何かと不器用だから……と不意に違和感を感じ思いを馳せるのを止める。

「ファシー?」

「おかあ、さん」

「……」

甘える猫が吸いついて来る。

セシリーンが母性を発揮し過ぎたせいか、子猫と化したファシーが胸に吸い付いていた。

吸われても母乳は出ない。けれどやはりこうされると胸の奥がキュンっとしてしまう。

「もう……大きな赤ちゃんね」

「……は、い」

甘えたければ甘えれば良いとセシリーンは開き直って猫の好きにさせる。

猫は古来より好き勝手に生きる生き物だと言う。だからこれは正しいことだ。

「で、2人は何かしら?」

喧嘩を止めて取り囲むように移動して来たレニーラとシュシュに、舞姫は見えない目を向けた。

「セシリーンのその姿は良く似合うかも?」

「だぞ~」

「それっていい意味での言葉かしら?」

「うんうん」

「だぞ~」

何故か2人は手を取り踊り出す。

「私たちに子供が生まれたらセシリーンが乳母を務めて欲しいな」

「だぞ~」

「乳母って」

呆れながらも、ふと気づいた。気付くと頬が熱くなる。

乳母になるには母乳が出なければいけない。そうなると自分も子供を産んで……頭の中の妄想が暴走し、セシリーンは自身が2人目の子供を産んだ辺りで現実に戻った。

「誰か来る」

「ほい?」

「だぞ~」

不意に耳に届いた違和感に警告を飛ばせば、レニーラは歌姫の前に立ちセシリーンやシュシュを守る盾となる。

シュシュも素早く魔法の準備をし……そして中枢の片隅で変化が生じた。

「……ようやく帰れた……」

「グローディアか」

盾となっていたレニーラが警戒を解く。

疲れ切った様子で床に両膝を落とし蹲った存在は、この場の支配者たる王女様だった。

「どこ行ってたのさ?」

「……色々あったのよ。本当に」

疲れ果てた様子でグローディアは辺りを見渡した。

「アイルローゼは?」

「あ~」

その問いにレニーラは返事に困る。

助けを求めようにもシュシュは背中に張り付いて身を隠している。セシリーンに至っては『子猫に餌を』と言いたげに完全にスルーだ。

「えっと……何処から話せば良いかな?」

何とも言えない舞姫の様子に、立ち上がりパンパンとドレスのスカートを払ったグローディアは笑みを浮かべる。

「決まっているでしょう? 最初から全てよ」

「ですよね~」

貧乏くじを引かされたとばかりにレニーラは天井を仰ぎ見た。

「……無常です~」

「……ありえない」

絶望を直視した2人が、床の上で四つん這いになっている。

僕には見える。あの2人の背中に『越えられない何か』という存在がドカッと座っている姿がだ。

「見世物にされるのは……」

「ごめんねリグ」

「……別にいいけど」

恥ずかしそうに僕の背後に隠れるのは、今朝突然姿を現したリグだ。

本来なら僕の選択肢はその時点で自宅待機のはずなのだが、今日は鎮魂祭の話し合いがある。

忙しい陛下が時間を割いて進行具合や当日の催しなどを確認するための質疑応答だ。よってズル休みが出来ず、ノイエはもっと休めない。

ならばポーラに頼もうかと思ったが、彼女は現在『術式の魔女』の代理人扱いだ。本当は『刻印の魔女』の代理人だが。

事前に連絡をくれれば良かったのにこうなると打つ手が無い。だったら手など打たずに連れて来た。

吸血のリグはとある猫と違って悪名高き存在ではない。

『吸血』の二つ名も酒場で揶揄して発生した物だとすら言われている。問題は無い。

そう思って連れて来たのだが……彼女は行く先々で問題を起こしていた。

小さいのに大きいと言う存在は規格外すぎたらしい。

現に僕の執務室に居た貧乳代表の2人が、絶望の余り冷たい石の床と友達になっている。

「ん~」

視線を僕の背後に隠れるリグへと向ける。

「なに?」

「その衣装が過激すぎたかな?」

「……かもしれない」

恥ずかしそうに身を竦ませるリグの様子に床を友誼を計る2人が、何故かそんな床を殴りだした。

プルンと暴力的に震えた胸が良くなかったらしい。もう知らん。

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