軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今日は本当に感度良好ね?

ユニバンス王国・王都内スラム廃墟

「アルグ様っ!」

突然気絶しかけても僕が地面と激突なんて、ノイエが原因でなければあり得ない。

何故なら心優しいお嫁さんが絶対に抱きとめてくれる。今回のように。

ノイエに抱きかかえられ僕は大きく息を吐く。意外とダメかもしれない。

「どれどれ。見せてみなさい」

「はい」

大御所ぶってポーラの姿をした悪魔がノイエに屈むよう指示をする。

素直に従ったノイエは屈み、ポーラが僕の頭の傷を見る。

「頭って血管が多いから結構出血するのよね。ただこれならちゃんと手当すれば大丈夫。あのおかしなぐらいおっきい子にでもやらせなさい」

「はい」

素直に頷いたノイエはリグを認識しているのだろうか?

おっきいで認識していたら……まあ誇れば良いと思います。

「あ~もう!」

突然暴れ出したポーラが残念に思えてしまった。

ウチの可愛い妹が心配してくれているなら良いんだけど、おかしな方向への成長なら勘弁してください。

「どしたの?」

「……前の時もそうだったけど、イレギュラーで取り込むと色々と不都合が生じるのよ。あの時はカミューとか言う大噓吐きにまんまと騙されたしね」

「そっか~」

全身が怠くて重い。でも今は気になることがある。

「ねえ馬鹿賢者」

「何よ?」

「ノイエの中の人たちって……生きてるの?」

改めて聞きたかったことを口にする。

すると彼女は腰手を当てて何故か踏ん反り返った。

「聞いてなかったの? あの爺が言ってた言葉を?」

「何だっけ?」

からかい過ぎて相手の言葉を真面目に聞いてませんでした。

「……その子はたくさんの影を纏っている。で、特に強い2人が実体化した。つまりそう言うことよ」

確かにそんなことを言われた気がする。

「ならみんな死んでいるの?」

「どうかしらね?」

フンッと鼻で息をして賢者が顔を背ける。

「でも少なくとも左目の中に肉体を持った人間は居ないわよ」

「そっか」

「ええ……後味の悪いことを言わせないでよね」

「ごめん」

確かに後味悪すぎるかな。

ノイエを介して中の人たちは見聞きしているのだろうしさ。

「私はそろそろ魔力が切れるから引っ込みま~す。あとは勝手にしなさ~い」

「了解です」

途切れそうになる意識の中で、そっとノイエが僕の耳元に口を寄せた。

「アルグ様」

「なに?」

あ~。気絶しそうだ。

「あの子言ってた」

「何が?」

「『どれが嘘でしょうか?』って」

「そっか」

ゆっくりと目を閉じて全ての体重をノイエに預ける。

「ポーラ」

「はい。にいさま」

「後始末をお願い。僕らは屋敷に運んで」

「はい」

「リグの回収もね。ノイエにお願いして良いから」

「わかりました」

途切れそうな意識の中で最後に仕事をして、僕は大きく息を吸った。

もう大丈夫だ。気絶しても問題は無い。

「あのお馬鹿賢者! どこまで遊べば気が済むんだよ!」

全力で不満を口にしたら意識が飛んだ。

絶対に殴る。あとでポーラに土下座することになっても殴ってやるんだから……

「あらあら……今日は本当に感度良好ね?」

最後に少しだけ遊んだというのにネタバラシをされたらつまらないのに、仕方ない。

クスクスと笑いながら刻印の魔女は先に移動させた人物の元へ向かう。

狭い部屋のような場所にその人物は眠っていた。

死んでいるかのように静かで、でもその醸し出す雰囲気は静謐だ。

「あれの姉というだけあって本当に美人よね? それに胸も大きいし、色白だし……何この腰の細さは? うわっ! お尻も良い感じだし、太ももエロっ!」

触診は大切とばかりに魔女は相手を全裸に剥いて触って色々と確認をする。

何か本当に凄かった。

「さて。新しい実験材料も手に入れたことだし……しばらくはこれで遊ぶとして」

全裸にした相手にシーツをかけ、部屋を出た魔女は歩き出す。

「まずはこっちね。本当に面倒臭い」

静々と歩き……彼女は別の場所へと入って行った。

ユニバンス王国・王都内中央広場

「消えましたね」

「ですね」

警戒を続けていたルッテとモミジは、改めて辺りを見渡し息を吐く。

走り回る伝令に『警戒を少し緩めます』と副隊長であるルッテが伝え、ついでに他の場所がどうなっているのかも確認をする。

化け物たちの駆逐を終えて片づけを始めていたところ、突然今度はドラゴンの死体が姿を現したのだ。

最前線で日々ドラゴンの相手をしている対ドラゴン遊撃隊だからこそ、『あ~。やっぱり出るんだ~』程度の動揺で済み駆除を開始したが、他の場所では混乱し被害が出たと伝えられた。

「生きたドラゴンよりも格段に弱いのに被害とか……」

頬に指をあてて首を傾げるモミジの言葉にルッテは苦笑するしかない。

「王国軍の主力を新領地の2ヶ所に派遣しているので、今王都に居る兵は新人さんが多いんですよ」

「そう言うことですか。なら仕方がありませんね」

普段の発言や行動などでモミジは上司から『残念な子』と呼ばれているが、決して残念な存在などではない。ちゃんと思考し何より知識も豊富だ。

今回も仲間たちを率いて迫りくる化け物たちを相手に奮戦し勝利を得ている。

ただ……その手の活躍が目立たない可哀そうな星の元で生きているのだ。

「あの~ルッテさん? どうしてそんな切なげな目を?」

「……祝福の使い過ぎで目が疲れたな~と」

「そうですか」

あっさりと相手が納得してくれたので、ルッテはこれ以上深く考えるのを止めた。

「それにしても」

実際使い過ぎで疲労困憊ではあるが、ルッテは自分の祝福を使い王都の上空から俯瞰して現状を見る。

あちらこちらで被害は出ている。

崩れ落ちた建物や立ち上る煙など……場所によってはまだ混乱しているのだろう。

「凄い被害ですね」

「そうですね」

仲間の1人から受け取った干し肉を手に、モミジは祝福を使っているルッテの元へと来た。

祝福を解いて視界を元に戻し、ルッテは相手が差し出した肉を受け取る。

「建物などは再建すれば良いとしても、こう立て続けに王都で騒ぎが起こるのは」

「ですよね~」

硬い干し肉をナイフで削りながらルッテはそれを口に運ぶ。

ここまで硬い物ならばスープに入れて欲しくなるが、それを使わなければいけないほど王都内が混乱しているとも言える。

「現王が就任してからこう騒ぎが続いてますからね」

「ですね~」

モグモグしながらルッテは、噂話に疎いモミジですら知っている事実を噛みしめる。

現王シュニットが就任してからと言うもの、王都ではこれで3度目の大ごとだ。

その全てに参加しているルッテとしては、『悪いのは陛下では無い』と声を大にして訴えたい。

「……今回もアルグスタ様がやらかしたんですかね?」

「そう思いますよ。あの人は騒動に愛されていますし」

ルッテの呟きにモミジは肯定する。

と言うか上司である彼が関係していない騒ぎの方が珍しい。

「その結果貴族から睨まれて……私、アルグスタ様の強心臓が欲しくなる時があるんですけど」

「と、申しますと?」

問われてルッテは一瞬で顔を真っ赤にする。

モミジは相手の様子から……そっと顔を寄せて彼女の口元に耳を動かす。

「はいはい。なるほど」

「欲しいですよね?」

「いいえ」

話を聞いたモミジはあっさりと否定した。

「私はちゃんと誘えますし……今夜は相手が気絶しても、し続けると決めてますから」

「……死にませんか?」

「大丈夫です」

グッと拳を握ってモミジは視線を遠い場所へと向けた。

「我が心の師であるファシー様が言うには、××を男性の××にねじ込んで無理矢理に××すれば何度でも蘇ると言っておられました。早速実践です」

「……本当に大丈夫なんですかね?」

××を××とか常人では考えられないことだ。

それを目の前の同僚は今夜婚約者相手にすると言う。あの小柄な相手の色々な何かが心配になる。

「何よりこうカタナを振るっていたせいか興奮が冷め止まなくて」

「はぁ」

両手を頬に宛ててうっとりとモミジは熱い吐息を吐き出す。

「ですから今夜は眠れそうにありません。頑張ってもらいます。強制的に」

「そうですか……」

言われてみれば、ルッテもこう胸の奥が熱せられたままのような感覚に気づいている。

これが興奮だとしても、それを性欲に変換するのは……難しい。難しいが、今夜ぐらいは少しぐらい大胆なことをしたい気もする。

「なら私も今夜は少し頑張ってみようかな?」

「その意気です」

「あはは~」

相手に促され仕事を終えたルッテは、その夜少しだけ頑張った。

化け物たちとの戦いを知った彼が、日が沈んでから様子を見に来てくれたのだ。

嬉しくて嬉しくて……ここ最近で一番大胆なことをしていたのだ。

自分からキスしてみたのだ……。

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