軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天使を見た

全裸のルッテが可哀想なので服をどうにかしてあげたいが、ミシュもクレアも脱がしたとしてもその服は着れそうにない。

投げ捨てられた彼女の服を回収して手渡す。

「ありがとうございます」

「うん。ってノイエ? ちょっと……」

グイグイ押されてルッテの前から離される。

どうしたの? アホ毛が不満げに揺れてるけど?

「まあ……確かに若返ったな。ルッテ」

「ふぁい」

「祝福を使ってみろ」

「……はい」

自分の服を胸や腰などに回しながら、泣いてるルッテが片目を閉じた。

ふと額や頬などに汗が浮かび……ゆっくりと開かれた目が黒く窪んでいる。全てを吸い込んでしまいそうなブラックホールな感じにも見える。

「見えるか?」

「見えます」

「祝福も使えるな。後は魔法だが……お前って魔法はダメなんだよな?」

「適性無しと言われました」

「なら仕方ないな」

何やら紙にペンを走らせ馬鹿兄貴が書類作りをしている。

ってちゃんと仕事してるとかビックリだ!

「あとは魔法が使えるか試すだけだな。クレア。フレアと交代して呼んで来てくれ」

「……お姉さまに使うんですか?」

「お前くらいになって丁度良いだろう?」

何が?

つかフレアさん似のクレアと背格好まで近くなったら比べようが無くなりそうなんだけど。

行きたくなさそうなクレアの様子からして……やっぱりお姉ちゃん子なんだな。フレアさんが幼くなるのは嫌らしい。

それよりもどうしてこのお兄ちゃんはずっと僕を見ているのかね?

「まあ魔法が使えれば誰でも良いんだけどな」

「……何故僕を見るのか問いたい」

「骨折してて事務仕事だけの男なんて適任だろう?」

「誰のせいで骨折したのか問い詰めたい。何より適性はあっても使えない」

「魔法の勉強もしろ。それと骨折は帝国の大女のせいだろ?」

両方の意味でその通りだけど……後半は納得いかん。そろそろノイエに殴る振りして追い回して貰うか。

ってノイエは? あれ?

「えっ?」

壺の中を覗き込んでいるノイエの姿を見つけた。

隣にミシュが居るから……誰が犯人か一目瞭然だ。

「ってノイエっ!」

「……」

僕の声に反応してこっちを見た彼女が見る見る縮んでいく。

そして僕は……天使を見た。

「うわ~」

その感嘆の声はもしかしたら僕だったのかもしれない。

縮んだノイエは無表情だが幼さが強まり愛くるしい顔立ちをしている。

今までに見たことの無い本当の意味でのエンジェルフェイスだ。可愛い。可愛いなんて言葉が陳腐なほど可愛すぎる!

「さあっ! この齢の隊長なら私だって……私だって……嘘よ~っ!」

脱ぎかけの服の間から手を差し込んだミシュが、確認を終えて床に伏した。

服が 開(はだ) けて見えるノイエの胸は膨らんでいた。あれにも負けるんだ。まあ温泉の時に見たが……確かにほとんど無かったけどね。

と、自分の胸を押さえたクレアがプルプル震えて僕を見る。

「引き分けですから! 負けてませんから!」

「11歳のノイエと引き分けの時点で負けだと思うよ」

「はうっ!」

彼女も床に伏した。

こうして貧乳戦争は終わりを迎えた。って何の話だっけ?

「あの~」

「はい?」

「どうして誰も隊長の変化に疑問を抱かないんですか?」

必死に胸と腰を隠したルッテが恐る恐る質問をしてきた。

ノイエの変化だって?

綺麗だったお嫁さんが天使もビックリな美少女になりました。

「うん。凄く可愛い。このまま家に飾っておきたい」

「じゃ無くて! 髪! それに瞳!」

煩いな。指摘するなよ……面倒臭いことになるから。

ブンブンとノイエを指さしてルッテが騒ぐ。

「色が違いますから! 別人みたいですから!」

「それを言ったら君も大概だよ? 特に身長と胸が」

「はうっ!」

ルッテも床に伏した。

これでノイエの変化にツッコミを入れる者は居なくなった。

「遊んでないでアルグよ」

「……」

「何故睨む?」

「嫁の全裸を見た馬鹿兄貴をどう始末するか悩んでたところ」

「はっ! そんな平らな胸をした小娘などに欲情するか馬鹿」

「「はうっ!」」

それ以上に平らな胸をした二人が、激しく額を床に打ち突けだしたぞ?

「ノイエに魔法と言ってもな……城で使うと騒ぎになるか。ならこの紙はお前に預けるから仕上げて俺に戻せ」

「へいへい。うちの屋敷の外でなら良いでしょ?」

「日没間近とかなら問題あるまい。使えるかどうかを知りたいだけだ」

兄貴から紙を受け取ると、とりあえずそれを三角巾の中に入れる。

ポケット替わりに使えて便利なんだよね。

「はいノイエ。えっと……こうしてこうすれば」

「ちょっと待て」

馬鹿兄貴の呼びかけにメイドさんが部屋の中に入って来る。

ノイエとルッテの体を一通り触って確認すると、彼女は静かに一礼して立ち去った。

「って?」

「何かの時の為に着替えのドレスくらいは置いてある。ただ買い取りになるけどな」

「はうっ! ハーフレン様? わたしはこのままでも」

「良い訳無いだろう? 馬鹿か?」

給金の大半を貯金とお菓子に費やす騎士見習いが全身を震わせた。

「ノイエに関してはミシュが悪いからミシュに代金請求しといて」

「分かった」

「分かるなこの糞王子!」

復活したミシュが殴りかかって返り討ちに合った。いい気味だ。

「でも可愛いお嫁さんに服ぐらい贈りたいから、ノイエの分は僕に。替わりにルッテの分をミシュで」

「……その二人の給金はお前の管轄だろ? 許すから好きにしろ」

「好きにするな~」

僕に襲いかかって来たミシュは……ノイエに投げ飛ばされて窓の外へと消えた。

うん。可愛くなっても力持ちさんだ。

「アルグ様」

「なに?」

「服。良いの?」

「良いよ」

しゃがんで彼女の頭を撫でる。アホ毛の無いサラサラとした"金髪"をだ。

クリリとした蒼い目が嬉しそうに細まった。

11歳のノイエは……金髪碧眼だった。

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