軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

猫耳だよ猫耳!

ふとノイエは足を止めた。宙に浮くドラゴンの鼻先でだ。

突然人間に踏まれたドラゴンは目を剥き顔を振るうが……彼女が離れることはない。

まるで磁石か何かでくっ付いた感じで迷うことなく鼻先に立ち続ける。

「……何か嫌」

漠然とした感覚にノイエは呟いていた。

胸の奥からモヤモヤとした痒さを覚える嫌な感じが込みあがって来たのだ。

「ギィギャァァァッ!」

「煩い」

タンッと器用に爪先でドラゴンの鼻先を撃つ。

突然の激痛にドラゴンは身を捩り暴れるが、ノイエはその度に接地面に施している『くっ付く力』を切って立った姿勢を保ちつつドラゴンを足場にし続ける。

何となく建物が立ち並ぶ方を見つめるが……良く分からない。モヤモヤも消えた。

「煩い」

そうなるともどうでも良い。ノイエにより2回目の攻撃を受けたドラゴンは、鼻先と言うか……顔の半分を消失して地面へと落ちだした。

軽く蹴って落ちる方向を『ゴミ置き場』に調整し、ノイエは次なる獲物を狙い宙を蹴って進んで行く。

遠くに見えるノイエが恐ろしい曲芸をサラッと披露してみせた。

蛇型のドラゴンに同情したよ。鼻先で立ち止まるし、落ちないし、攻撃して来るし、でも落ちないし、最後は頭を砕かれるとか。

「にいさま」

「なに?」

「がんばります」

ギュッと拳を握ってやる気を見せるポーラは何を頑張る気なんだろう?

僕もドラゴンスレイヤーの認定を受けているけど、やはりノイエは別格だと思う。

今だって宙を蹴って次なる獲物へと向かっているし……何より宙を蹴るって何さ? 何なのさ?

先生に言わせれば空気中の埃を蹴っているらしいんだけど意味不明だ。

「ポーラもあれをするの?」

「がんばります」

「……頑張れ」

「はいっ」

本人がやる気なのだから兄である僕が水を差すのは間違いだろう。

ポーラはこのまま伸び伸びと大きく育つと良いな。そして僕に楽をさせてくれれば最高です。

僕らは城を抜け出し現在王都内を移動している。目指すは我がお店である。

「知らない間にコリーさんに大量注文していたとは」

「ぜんぶししょうのしじです」

「そうですか」

「はい」

素直なポーラが悪だくみとかあり得ない。結果として全てあの賢者の企みなのだろう。

ただノイエの姉たちの衣装を頼んだ手前、服に関しては強く言えない弱みもある。

リグの水着風衣装とかひと目見て『流石!』と思ってしまった。

デザインを一任している馬鹿賢者は性格破綻者であるがセンスは良い。おかげで我が家には新作衣装がどんどんと備蓄されていく。嬉しいことなのだが問題が生じた。衣装作りにのめり込むあまりコリーさんが他の仕事をしないそうだ。

『オーナー。少しだけ自重していただけると助かるのですが』と店長をしているホールンさんにそう告げられた。

うむ。今年の僕の目標は自重である。

結果としてこうしてポーラと共にお店に向かい優先順位を決めることとしたのだ。

「だが譲れんよ!」

「ダメよ! こっちが優先なの!」

お店のバックヤードに入り僕とポーラは……決別した。

厳密にいえば僕と馬鹿賢者とがだ。

「何を言ってるの? こっちでしょう? こっちだよね?」

「はぁ? 馬鹿なの? 死ぬの?」

僕が指さす衣装は仮縫いを終えた先生用の魔女服だ。

黒くてタイトなスカートの両側にガッとスリットの入った先生のあの美しい足を山盛りで堪能できる逸品である。贅の限りを尽くしているせいで製作が遅れているとか。

対する馬鹿賢者はメイド服を押してくる。クラシカルな感じだけれどフリルがたくさんあしらわれたシュシュの為の服だ。

何故か僕らの中ではシュシュの衣装はメイド服と化している。

「大丈夫です。両方とも完璧に仕上げますからっ!」

目の下にクマを作ったコリーさんが、ある意味職人根性を見せてそんなことを言ってくる。

完全に目が逝っている。

「でも他にも注文入ってるんでしょ?」

「……大丈夫です。寝ずにやれば」

フラフラでそんな危ないことを言ってくるのです。

とりあえず僕らがどちらを優先するか話し合っている間だけでもと告げてコリーさんには椅子に座ってもらう。

あら不思議。椅子に座ると寝落ちするの法則により彼女はあっさりと眠ってしまった。

「さあ馬鹿賢者。どうやら白黒はっきりと決める日が来たらしいな」

「馬鹿ね? 私は無敗の女よ?」

「笑止! 僕も強いぞ?」

「良い根性ね……かかって来なさい!」

向かい合い身構えて、

「「じゃんけんっ」」

「今日もまた不敗記録を更新してしまったよ」

「……」

帰りの馬車で勝利の余韻に浸る僕と自分の手をグーチョキパーと形を変えながら首を傾げるポーラが居る。

ポーラ的にはこのじゃんけんの勝ち負けの仕組みが良く分からないらしい。

言われて考えると結構謎である。

何となく勝ち負けを理解して使っているが突き詰めると……まあ良い。僕は勝ったのだ。

結果として先生用の衣装が優先され、次にシュシュのメイド服が作られる。

「にいさま」

「ん?」

「こっちの服は?」

「ああ。僕らの寝室に運んでおいて」

「わかりました」

じゃんけんの謎を棚上げしたらしいポーラは、足元に置かれているケースを持ち上げると自分の膝の上に置いた。

ついでに完成していた衣装も引き取って来た。

まずはノイエ用のベビードールだ。

ポーラが着ていた物をノイエ用にとアレンジして作り上げた逸品だ。スケスケ具合は弱くなったがエロさが倍増した。

何て素晴らしい逸品なのでしょう。今夜は久しぶりに僕の方からノイエを求めてしまうかもしれない。

で、もう一着はファシー用の猫耳フード付きのパーカーである。

顔を隠したがるファシーの為にフードをと考えたら、あの馬鹿賢者は僕の想像の上を行ってくれた。猫耳だよ猫耳! 賢者的には着ぐるみを作りたかったらしいが、それは流石に外では着れないだろうから保留にした。パジャマならありかもしれない。

ちなみにパーカーの下はミニスカートだ。ここまで来るとスニーカーが欲しくなったがこの世界には存在しないので諦めた。代わりに網サンダルで代用する。

こっちも早くファシーに着せたい。絶対に愛らしさが倍増だ。

「にいさま」

「なに?」

呼ばれて顔を向けると、ケースを開けてファシーの服を見つめていたポーラが僕を見つめていた。

「どうかしたの?」

「にいさまは……こういうのがいいんですか?」

返事を間違えるととんでもない地雷のような気がする。

決して僕はロリコンではないはずだ。ただしファシーは凄く可愛い。可愛すぎるが年上だ。

リグも可愛い。可愛すぎるがデカすぎだ。じゃなくて年上だ。つまり合法ロリだ。セーフだ。

「可愛い子が可愛い服を着ると似合うと思うんだ。それは僕の趣味とかじゃなくて大自然の定理なんだよ! 分かる?」

「わかるきがします」

うむ。流石我が妹だ。

ただ『可愛い服も必要です』とか呟いているポーラさんは何を考えているのでしょうか? ねぇ?

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