軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

性欲か色欲でしょ?

「はっ!」

目を見開いて天井を見た。大丈夫。ちゃんと呼吸をしている。

ただ腕や足……と言うか体の全てが重たい。

どうしてこうなった?

原因は分かっている。全ては黒いベビードールを装備したノイエの破壊力が悪い。

何と言う精神攻撃。あの姿を見て心揺さぶられない男が居たら、それはたぶんもう何かしらの機能が枯れている。悲しいことに枯れていない僕は心を揺さぶられてしまった。

半端ない愛らしさとエロスに思わず飛び掛かってしまったほどだ。

問題は僕のお嫁さんはほぼ最強だと言うことぐらいか。

最初は僕の行為を喜んで受け入れ、気づけば自分のペースに移行し……最後は容赦なく絞り尽くされた。

必死に頭を巡らせると隣でノイエがスヤスヤと寝ていた。もう味わい尽くして満足そうだ。

こっちは生死の境を垣間見た気がしたんだけど気のせいか? 何故かリグが川向うで手を振っている気がしたぞ?

手より揺れ動く胸を凝視してしまったけれど。

体を起こそうとしたら上手く動かない。こんな疲労は久しぶりだ。

「……ん?」

すると僕の視界に足元の方から可愛らしい猫が映り込んできた。

前髪で顔を隠した猫である。色は何故か三毛なのだ。変なこだわりを見せるから作り手のコリーさんがあんなにも燃え尽きることとなるのだろう。

「ファシー?」

「……にゃん」

可愛い猫が嬉しそうに抱き着いて来た。スリスリと頬を擦り付けてきて愛らしい。

「早速着てくれたの?」

「にゃん」

「ファシー?」

「にゃん」

ファシーに猫耳を付けたら猫化するらしい。

何と言うことでしょう。実に素晴らしい。

根性で体を起こして可愛らしい猫を抱きしめる。

ヤバい。良く見ればスカートに尻尾までついていた。あの賢者は天才か?

「ウリウリ」

「にゃん」

「ここはどう?」

「なぁん」

「こっちは?」

「やんっ」

撫で回してファシー猫を可愛がる。これが本当の猫可愛がりか?

全力でファシーを撫でていたら、頬を上気させてトロンとした表情を見せて来た。

知らない間にマタタビでも与えてしまったのだろうか?

「どう? ファシーの服は?」

「にゃん」

嬉しそうに甘えてくるので喜んでいると判断しても良いはずだ。

「もうファシーは可愛いな」

「なぁん」

「ん?」

抱き着いているファシーがペロペロと僕を舐めだした。

本当に猫と化してるな。実はファシーは猫になりたかったのか?

「あはは。くすぐったいって」

「あんっ」

「ん~。もう」

「にゃん」

「……ファシーさん?」

「なふっ」

気づけば可愛い猫さんが僕のある部分だけを舐めている。

そこはダメだよ? そこを喜んで舐めるのは肉食獣なホリーさんぐらいですからね?

舐めてから徹底的に食らい尽くすんだけどね。

「これこれファシーさん。君にそこは」

「フシャー」

「……」

やめさせようとしたら威嚇された。猫パンチまで飛んできた。

と言うか全力でノイエに味わい尽くされた後の僕に、これ以上の行為は正直無理なんですけどね?

「この猫も肉食獣なのか~!」

目覚めたノイエは軽く背伸びをする。

隣を見れば彼が寝ていた。ただいつもと違う。口が半開きで目が白い。

唇を近づければ相手の呼吸を感じた。なら問題ない。

キスを楽しんでからそれに気づいた。

彼に跨り縋りつく大きな猫がいた。猫だ。ユニバンスには貴重な存在だ。

実は犬はそれなりに居るが猫はあまり見かけない。手を伸ばし頭を撫でてみる。

「……にゃん」

可愛らしい鳴き声がした。撫でると鳴くらしい。

だからノイエはしばらく撫で続ける。

撫でる度に猫が甘い声を上げて、何故か彼から苦しそうなうめき声が上がる。

でも猫が可愛い。

撫でて撫でて撫で続けると……不意に猫がブルブルと震えだした。

ゆっくりと顔を動かし耳だけ見せていた頭が持ち上がる。

「ノ、イエ?」

「おはよう」

「おは、よう」

猫は姉だった。

優しい姉だ。ずっと体の真ん中が真っ黒だったけれど、今は違う。

何とも言えない複雑な模様をしている。白と黒とがグチャッとしている。

でも優しい姉だ。動物に好かれる人は優しいのだ。

「ファ」

「なに?」

「猫さん」

「……にゃん」

撫でると姉が鳴いた。可愛いのでまた撫でる。

と、ノイエは視線を巡らせる。ゆっくりと扉が開き小さな妹が入って来た。

「にいさま。ねえさま。おはようございます」

「はい」

「にゃん」

返事をしたら妹が顔を真っ赤にした。

慌ててベッドの傍に来るとシーツを掴んで姉にかぶせる。

良く分からずにノイエは首を傾げる。

どうして可愛い姉を隠すのだろう?

何故か2人が言い争っている。妹は姉を注意しているようで、姉は猫だ。

「そういうことは、くらいあいだにすることです!」

「にゃん」

「もうあかるいんですから!」

「にゃん」

「おりてください。って、かくしてください!」

「ぃやん」

「にっにいさまのがっ! えっ? つながって……はうあ~!」

彼から姉を引き剥がした妹が顔を真っ赤にさせて慌てだした。

辺りを見渡してから何故か一点を凝視し……右目におかしな模様を浮かべてうんうんと頷いている。と、模様が消えてまた慌てだした。

やはり良く分からない。

だから……ノイエは自分のお腹に手を当てて起き上がった。

「お腹」

「はい?」

その声に妹が目を向けてくる。

シーツで寝ている彼の体を隠すと、姉がまた彼の傍で丸くなって寝た。

その全てを見てからノイエはまた口を開く。

「空いた」

由々しき事態だった。

「むはっ!」

今絶対に心臓が止まっていた気がした。

川の向こうからリグが体の一部を浮き輪にしてこっちに泳いで来る姿を見た気がする。

何故にリグなのだろうか?

確かにあれなら水に浮かびそうだ。

つまり水~の、浮き輪~の、リグと言う発想だろう。あの胸は本当に凄い。

鉛のような重い体を起こすと、隣で三毛猫が丸くなって寝ていた。

寝ている限りは安全な動物だ。ただし起きて甘えだすと肉食獣化する……そんな夢を見た。

夢? あれは夢だったのか?

手を伸ばして恐る恐る頭を撫でてみる。

スリスリと撫でていたら猫が動き出した。僕の手に頬を擦り付けてきて愛らしい。

「おはようファシー」

「は、い」

すり寄って来て彼女が僕に抱き着く。

ここまでは平気だ。肉食獣化はしていない。やはりあれは悪い夢だったのだ。

「ノイエが居ない?」

もう片方……右隣に居たはずのお嫁さんは姿を消していた。

「お仕事に、行った」

「そうか」

あれほど僕を貪り尽くして仕事に行けるノイエがズルい。僕も治療の祝福が欲しいです。

神様! 僕に治療の祝福を!

『性欲か色欲でしょ?』

うっさいわボケ! たまのツッコミがそれってふざけんな!

って無視か? スルーか? やり逃げかっ!

ガウガウとひと通り憤って終えておく。

そもそも性欲とか色欲とかの祝福を得たら間違いなくノイエと終わらない戦いになる。ゴールが見えない戦いとか恐怖でしかない。

だから僕は無尽蔵な体力が欲しいです。それか健康な体かな?

甘えてくる猫ファシーを撫でつつ気づいた。

窓の外が赤いんです。夕暮れなんです。

こうして今日も一日無駄に過ぎ、そして明日2日分の仕事が僕を待っているのです。

どんなイジメですかね!

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