軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第98話:オーク決戦・前

『オーク族の狩猟草原』、第二十層。

ついにこのダンジョンの最深部へと至る、光るゲートの前にカイトたちは立っていた。

「イスト、ティロフィ。ここをクリアしたら、このダンジョンの攻略もいよいよ完了だ。プロの一線級の冒険者パーティーがレイドを組んで、ようやく勝てるレベルの難易度らしい。最後まで油断せずに行くぞ!」

「はっ。この銀の刃にて必ずや討ち果たしてみせます」

「グルァァッ!」

二体はこれ以上ないほどに頼もしい咆哮を返し、戦意を漲らせる。カイトが頷き、ゲートへと入っていく。

足を踏み入れた第二十層は、それまでの開けた草原ではなかった。巨石の柱が空に向かって立ち並び、奥には巨大な石造りの玉座が据えられた、まるで『天井のない城の玉座の間』のような広間が広がっていた。

そして、その空間を埋め尽くすように、圧倒的な軍勢がカイトたちを待ち受けていた。

前衛には、剣の技量に長けた二・五メートルの全身鎧兵『オークナイト』が十体。

その一歩奥には、一際巨大な四メートルの体躯を誇る、圧倒的な膂力と剣戟を誇る『オークジェネラル』が二体、直衛として控えている。

中衛には弓を構えるアーチャー、後衛には古めかしい杖を持つ『オークマジシャン』が七体と、大きな赤い戦旗を掲げた『オークフラッガー』が五体。

そして――それら全ての軍勢の中心、一段高い玉座に、五メートルを超える凶悪な鎧を纏い、王冠を戴いた覇王――『オークキング』が、自身の身長ほどもある巨大な錫杖を手に、傲然と腰を下ろしていた。

カイトたちの侵入を捉えたオークキングが、冷酷な瞳で一行を見下ろし、手に持つ錫杖を誇示するように高く振り上げた。

それを合図に、後衛のオークフラッガー五体が同時に戦旗を地面へと突き立てる。

ズゥゥゥンッ!!

五本の戦旗から放たれた禍々しい光の波動が重なり合い、空間全体を真っ赤に染め上げた。ただでさえ強力なオークジェネラルやナイトたちの身体が、何重もの赤いオーラに包まれ、その攻撃力、防御力、敏捷性が爆発的に跳ね上がる。

「――作戦開始だ! いつもの戦法で行くよ! ティロフィは【挑発の咆哮】でヘイトを集めて! イストは【瞬動】でフラッガーを最優先で落とすんだ!」

「グルァァァァッ!!」

カイトの鋭い号令とともに、ティロフィが翼を広げて【挑発の咆哮】を轟かせ、前衛を引きつけようとする。同時に、イストが完全に気配を消し、フラッガーを暗殺すべく【瞬動】で爆発的なスタートを切った。

――だが、いつもならティロフィの咆哮に狂うはずのオークたちの動きが、今回は違った。

前衛のオークナイトたちはティロフィを完全に無視し、一糸乱れぬ完璧な連携でイストの進路を塞ぐように盾を並べ、その【瞬動】の軌道を完全にブロックしたのだ。

「なっ……!?」

さらに、イストの足が止まった一瞬の隙を見逃さず、後衛のオークマジシャン七体が息の合った詠唱を完了させる。激しい劫火、狂い咲く雷撃、水の槍が、身動きの取れないイストを目掛けて一斉に降り注いだ。

「グルァァァ!!!」

その危機に動いたのはティロフィだった。ティロフィは【飛翔】によって低空を滑るように滑空すると、イストの前に強引に躍り出て、自身の巨体でその魔法攻撃の嵐を覆い隠すようにカバーした。

激しい爆鳴とともに火花と煙が立ち込める。しかし、煙の中から現れたティロフィの黒い鱗は、傷一つなく無傷だった。カイトが事前に見越して付与していた【属性エンチャント・ガード】の超高耐性が、七体分の魔法を完全に霧散させていたのだ。

「ナイスカバー、ティロフィ! イストもよく耐えた!」

カイトは戦況を冷静に分析する。これまでの階層の敵とは、明らかに統率のレベルが違った。オークナイトたちの技量が高いだけでなく、まるで一つの生き物のようにこちらの意図を先読みして動いている。原因は、玉座から冷徹に指揮を執る、あの王だ。

「イスト、ティロフィ。あのオークキングがいる限り、敵は完璧に統率されている。小細工でヘイトを集めたり、死角を突いて先にバッファーを暗殺したりする戦術は、通用しないようだよ」

オークジェネラルが重々しい大剣を構え、ナイトたちが隙なく陣形を組み直す。キングがいる限り、彼らはただのモンスターではなく、洗練された「軍隊」だ。

「だったら、やることは一つだ。搦め手が通じないなら――正面から、その軍勢ごと叩き潰すぞ!」

カイトの不敵な言葉に、イストが白銀の剣を強く握り直し、兜の奥の炎を揺らめかせた。

「御意。我が主の御前なれば、如何なる堅陣であれ正面から切り裂いてみせましょう!」

「グルァァァァッ!!」

ティロフィもまた、主の信頼に応えるように激しく咆哮する。

搦め手が破られたからと言って、カイトたちの優位が揺らぐわけではない。今一度、今度は純粋な力と力の正面衝突で『パーティー』の真価を示すべく、覇王の軍勢へと果敢に突撃を開始した。

『現在のジョブ:調教師(Lv.60)』

『使役モンスター:イスト(Lv.24・銀騎士)、ティロフィ(Lv.24・黒白竜)』