軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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額にふつふつと汗を浮かべたヤーゴさんだったけれど、

「はい。すばらしくお強い方なのだということを再確認しました。私は非才の身でございますが、レイジ殿が発する強者のオーラ、とくと拝見しました」

「言い過ぎです。ちなみに僕は身体強化系の天賦を持っているだけで、魔法系は【魔力量増大】以外は所持しておりませんよ」

「!?」

僕が言ったその内容は、まさにヤーゴさんが「視た」ものと同じだったはずだ。

さらりと所持天賦の話をした僕に、周囲の人たちはざわつく。

「まさか、八道魔法の天賦を持たずに魔法を使われていらっしゃるのですか」

「なんとも……確かに、玄人は魔法系の天賦を あえて(・・・) 外すとも言いますが」

「そのお年でそれほどの魔法を使えるというのはすばらしい才能ですな。まさに持って生まれた天賦」

そんな言葉が聞こえてくるのを僕はにこやかに聞き流す。

(なーんてね)

内心では、舌を出しているけれど。

だって僕はそんな天賦はひとつも つけていない(・・・・・・) のだから。

僕が今つけている天賦はふたつだけ。

ひとつは【森羅万象★★★★★★★★★★】。

もうひとつは——【オーブ擬態★★★】である。

アーシャの身体に元々入れられていた天賦で、これをつけているおかげで誰に視られても問題ない。

(それにしても、今のが【オーブ視】か。【森羅万象】で覚えたんじゃないかな)

試してみたくてしようがないけれど、なにか機会があったときにしよう。握手しなければ使えないみたいだし、他人の天賦を盗み見るってのは悪趣味だからあまり使うチャンスはなさそうだけど。

「——そうだ、町長さん。沖合の群島にいるという賢者様についてなにかご存じではありませんか?」

「『薬理の賢者』様ですな。はい、存じております。なかなか難しい海域にいらっしゃるので相当の腕利き船頭でしかその場所へはたどり着けぬという島におられます」

「そう……なんですね」

やっぱり、到着するのは難しいのか。

最悪、近いところまで運んでもらって空を飛んでいくか……? かなり身体に負担を掛けるけど、一時的なものならなんとかがんばるしかないか……。

「——というのは昔の話」

「え?」

いきなり町長の声のトーンが変わった。

「潮が速くとも今は魔導船がありますからな、魔導船ならば問題なく島に渡ることはできましょう」

「そうなんですか!?」

すごい。科学の進歩すごい。

魔法万能のこの世界でもちゃんと科学が進歩してる!

「ここは『英雄』レイジ殿のために軍の魔導船を動かしましょう——」

「ちょっと待たれい、町長。ここは私の魔導船を」

そこへ割って入ったのが町長のお兄さんだ。

「いや! 是非ともここは我が商会の船に」

さらに割って入ってきたのがヤーゴさんだ。この人の船には乗りたくないけど。

「いいえ」

凜とした声——なんと、アーシャまでもが割って入ってきた。

「エルフの魔導飛行船で運びますわ! 他ならぬレイジさんの頼みでしたら!」

「……殿下、『梟の 羽搏(はばた) き』の目的外使用は固く禁じられております。たとえ王族であるアナスタシア殿下であっても認められません」

「あぅ……」

ポリーナさんにたしなめられ、アーシャは真っ赤になってうつむいてしまった。

張り切った小さい子どもが失敗したようなようにも見えて、大人たちがほっこりとした笑顔で見守っている(僕も含む)。

「ありがとうございます、アーシャ。気持ちだけでもうれしいです」

「……うぅ、私は役に立てないのでしょうか……」

「海坊主を1体倒してくれたじゃないですか。アーシャがいなかったらやばかったですよ」

僕が言うと、なぜか大人たちも結束して「そうだそうだ」「アナスタシア殿下はすごい」と褒めちぎる。これやっぱりしょんぼりしている小さい子どもを励ましてる図だよな。

「では——レイジ殿を誰が『薬理の賢者』様の島へ送り届けるかについては、カードで決めましょう!」

「ほう……」

「構いませんぞ」

「では私も参加しよう」

「我も」

町長率いる 大人(オッサン) たちはぞろぞろと邸内へと入っていった。いつの間にか魔導船の所有者が増えていて10人近くも立候補してくれたらしい。

「……い、いいのかな?」

僕、魔導船を使うのにいくら掛かるとか全然わからないんだけど。

トントン拍子に話が進んだことに僕がおろおろしていると、アーシャがぽつりと言った。

「レイジさん、大人気ですね。少しだけ……寂しいですわ」

「アーシャ?」

「 あちらの(・・・・) 世界に行ったときには私とレイジさんしかいなかったのに、いつの間にかレイジさんの周囲には人が増えて、こちらの世界に戻ってきてちょっと目を離した隙にさらにまた多くの人が集まりますもの」

「……協力してくださる方は多いですけど、これから先もいっしょにいられる方は少ないですよ」

「そう……でしょうか?」

「はい。流行は一過性のもので、評価はいつでも表にも裏にもなり得る物だと僕は理解しています。だから」

アーシャが言ってくれたことを思い返す。

——私は、レイジさんといっしょにいたいです……これから先も、ずっと!!

それは確かに、僕の胸に響いた。

「……アーシャが僕といっしょに 冒険(・・) をしたいと言ってくれたのがとてもうれしかったんです」

アーシャは目を瞬かせると、ふう、と小さく息を吐いた。「しょうがないヤツだ」とでも言いたげに。

「僕、変なこと言いました?」

「いいえ。今はそれでいいことにします。だって私はレイジさんからもらってばかりなのですから。……でも、あくまでも、 今は(・・) ですからね」

「? はい」

「そうだ……レイジさんに贈り物があったのです」

ポリーナさんが布で包まれたものをアーシャに手渡すと、彼女はそれを僕に見せてくれた。

小さな革製の……ベルト、だろうか?

「僕にこれを?」

「はい。——それでは、レイジさん。私はもう 行きます(・・・・) 」

「あ……」

ドレスを翻して去っていくアーシャを照らすのは、かがり火の炎だった。

いつの間にか日は暮れて、夜のとばりが下りている。

炎の明かりに照らされたアーシャは、彼女がどれだけ 厭(いと) おうとも美しく見え——。

「アーシャ!」

なぜだろう。

僕はアーシャが自分からどんどん離れていくように感じられた。

彼女がこれからどうするのか、とか、ダークエルフたちはどうしたのか、とか、レフ魔導帝国での身柄の解放のこと、とか……話さなければいけないことはたくさんあったのに、

「僕は姉の治療を今はしなくちゃいけないんです……でも、それが終わったら、きっと冒険をしましょう」

なぜか僕は、冒険をしようとしか言えなかったのだ。

足を止めたアーシャは横顔だけをこちらに振り向いて、

「もちろんです。約束ですよ」

とだけ、にこやかに言ったのだった。