軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「大陸棚」は海底の地形のことで、陸地から一定の距離まで緩やかに傾斜する海底が、ある場所で急に深くなる場所までのことを指す。

ここに大陸棚があるということは、賢者がいるという群島はかなり遠く、違う大陸プレート上にあるのだろうか……なんて考えてしまったけれどそれは今はどうでもいいことだ。

僕は一通り大陸棚について説明をしたのだけれど、ダンテスさんは「?」という顔で首をかしげ、

「レイジ、大陸棚なんて言葉は俺は初めて聞いたぞ。町長はどうだ?」

「海坊主が目撃されたあたりの水深は100メートルをはるかに超えており、どれほど深いかわかっておりません。そのため海底地形は不明ですな」

「あ……」

そうか。そりゃそうだよね。海底の地形がどうなってるかなんて調べようがない。

この世界には海底探査船なんてものはないし、超音波の測定器なんてものももちろんないのだから。

「しかし……この辺りの海域では採れる魚種が変わるという話は聞いたことがございます。そうだろう?」

と町長は騎士たちにも聞いてみるのだが、ほとんどは「わからない」という感じで、ひとりの若い騎士がおずおずと手を挙げた。

「うちの爺様が漁師をやっておりますが、『海坊主は食い物が違うから港までは来ない』というようなことを言っておりました」

「……それは初耳ですが、報告書にそのような内容は今までなかったと思いますよ」

「ちょ、町長、爺様の発言はまともに取り合ってもらえなくてですね……そもそも海坊主がどんな化け物かもわからないのに、なにを食べているかなどはさらにわからないものだからと」

「ふー……わかりました。あなたのお祖父様はすばらしい漁師の勘をお持ちなのでしょう」

「はっ。恐れ入ります」

「——レイジ殿。大陸棚という場所があることは不勉強ながら初耳でしたが、そこに棲息する魚の生態は変わるのでしょうか?」

僕は日本にいたときの知識を必死で思い出す。

「ええと、はい、たぶん。大陸棚があることで海流の動きにも変化があるはずですから、魚の棲息はもちろん、回遊魚の訪れる季節も変わると思います」

「ふむ……つまり海坊主は捕食のためにザッカーハーフェンの沖合、大陸棚に現れると?」

「……可能性はあります。ですが、僕が思うに……」

もうひとつの可能性を口にしようとしたときだった。

「——町長! 前方に魔導船を発見!」

監視に当たっていた騎士の声が聞こえてきた。

「戦闘中!! 何者かと戦闘中です!!」

水平線にぽつんと見えた小さな点が、僕らの追っている——ラルクの乗っている魔導船なのだというのはすぐには信じがたかったけれど、すぐにそれがそうなのだとわかるようになった。

派手に水しぶきがあがっているのだ。

それは魔導船からの攻撃なのか、あるいは海底からの攻撃なのかは定かではなかった。

「スピードもっと上がりませんか!?」

「これで全速力ですよ……!」

僕は操舵室の騎士に声を掛けたが、すでにできる限りの速度を出しているらしい。

甲板に飛び出して舳先へ向かうとそこにはゼリィさんがいた。

「坊ちゃん」

「ゼリィさん、見えますか?」

「なんとなくは」

船酔いしていたゼリィさんの口元はキラキラしたなにかで汚れていたけれどそれを突っ込む気にはなれなくて放置。

ゼリィさんは僕より目がいい。僕は天賦を吸収しているのにゼリィさんのほうがよく見えたりすることがあり、それはきっと猫系獣人という種族特性なのだろう。

「……ヤバイっすね」

額に手をかざして目を凝らしていたゼリィさんが言った。

「あれ、戦ってないっすよ。逃げてるんです!」

「えっ——」

そういうことか。

1日先行していたはずのラルクの魔導船にすぐ追いついてしまったことが不思議だったけれど、海坊主に遭遇し、Uターンして沿岸へと逃げてきているからなのだ。

すさまじい水しぶきとともに緑色の触手のようなものが跳ね上がった。直撃は免れたものの魔導船はぐらりと揺れている。

「海坊主……あれが!?」

僕は目を疑った。

沖からこちらへ向かっている魔導船は、濃い色の海を走っていた。それは単に海の色が変わっているだけなのだと思っていたけれど——すさまじい広範囲に渡る「影」なのだ。

その全部が海坊主なのだとしたら。

村や町をまるごと呑み込むほどのサイズだ。

(あんなのとどう戦ったらいい!? 海中にいる敵だぞ!?)

魔導船の姿が見る見るはっきりしてくる。向こうもこちらに気づいたようで、「逃げろ」とでも言わんばかりに甲板に立った誰かが白旗を振り回している。そこへ、波が立って魔導船が揺らいで白旗が空へと舞った。

触手が何本も伸びてくる。あれに捕まったら終わりだ。

「あっ——」

黒い刃がほとばしり、触手を切り裂いていく。

「……あんのバカ! バカラルク!!」

ためらわずに【影王魔剣術】を使った。天賦が原因で身体がもたないことを理解していないのか? 理解してても使っているのか? どっちにしろ——バカだ。

「これ以上は近づけません! 撤退しましょう、町長!」

「し、しかし……」

「旋回している間に追いつかれますよ!?」

「ううむ」

後ろでは町長に騎士たちが詰め寄っている。

騎士たちの言うことは正しい。この船に載っている装備で、あの巨大な生き物をどうこうできるとは僕にも思えない。

「町長——」

僕は言った。

「引き返してください」

「坊ちゃん、それは——」

横にいたゼリィさんがぎょっとした顔をする。

だけど、僕が言おうとしたことはゼリィさんが考えたことと少し違う。

「皆さんは引き返してください。僕がひとり、向こうの魔導船へ 飛び移り(・・・・) ますから」

僕は【火魔法】と【風魔法】を展開した。