軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ハイエルフの王族ではあったものの、声を出すとエルフの嫌う【火魔法】を自然と発動してしまうことから、アーシャは魔導飛行船との「対価」としてレフ魔導帝国へとやってきた。

声も出さず、能動的に動かないアーシャはまさに「鑑賞物」としての扱いを受け、公式の行事などに参列してただそこにいるだけの存在として扱われていた。

だけれど、彼女の体質はコントロール可能だったわけで、今、アーシャはしゃべることもできるし自由に魔法も使える。それは「裏の世界」で十分わかった。

「でもそれならどうして、レイジくんは、アナスタシア殿下の声を治してしまったことを言ったんだべな?」

僕は皇帝に「お願い」をしたときに、アーシャの喉や声についても一通り説明した。まあ、もちろん、部屋に忍び込んだことまでは言わなかったけど。

そうなるとアーシャの「価値」は高まり、帝国としては彼女を手放したくなどないだろう。それもあって「持ち帰って検討」という日本のサラリーマンみたいな対応になったのだと思う。

「……これから自由になるというときに、隠し事や秘密があったら、その自由に陰りができてしまうと思ったんです」

「レイジくん……」

ミミノさんは心配そうに僕を見る。

ああ、こういう顔を見ると、ミミノさんは僕よりも年上なんだなあと思う。ふだんは僕よりも小さい子って感じなのに。

きっとミミノさんは、僕が「言わなかったこと」にも気がついた。

僕の「自由」は、「隠し事や秘密」のある「自由」だったから。

鉱山から解放されたことは契約奴隷としてはイレギュラーなことだったし、僕はラルクのことを隠し、ゼリィさんとともにこっそりと国外に脱出した。

アーシャにはそんな思いをして欲しくなかった、と思うのは僕のワガママでしかない。

事情を話してしまうことで皇帝がアーシャを手放したくないと思う、そのデメリットを知りながら。

「大丈夫ですよ、ミミノさん。僕自身のことはもうなんとでもできるでしょうし」

【森羅万象】のおかげで戦闘能力も高くなったし、なにより逃げ足についてはだいぶ自信がある。キースグラン連邦で捕まることはないだろう。

「それに皆さんがくれた これ(・・) があるから、黒髪黒目であることの引け目もなくなりました」

道具袋から取り出したのは、レフ魔導帝国が発行した僕の身分証だ。

「……レイジくんをいじめるヤツがいたら、わたしが許さないから! それにレイジくんが望むならどこにでもついてってやるべな!」

「ありがとうございます、ミミノさん。心強いです」

「もっと頼っていいべな!」

胸を張るミミノさんが可愛い。でも急に幼く見えてきた。

魔導エンジンを積んだ軍船は100人以上が乗れるような代物ではあったけれど、海坊主を相手にするならこれくらいは必要ということだった。

ダンテスさんにノンさんもやってきて合流し、ゼリィさんはすでに酔っ払っていたけど甲板に放り込んで、僕らも船に乗った。

「——すると、冒険者ギルドは何百年も昔から海坊主について把握しながらも、ほとんど情報はないということですか?」

ダンテスさんからの報告を聞いて、僕は言った。

港から沖に出ると船の揺れが大きくなるが、船室に入ってしまえば風はない。

「ああ。過去に何度か討伐チームを組んでやってみたが、全滅を繰り返し、最終的には『触らぬ神に祟りなし』ということになったらしい。実際、長くても数か月すればいなくなるし、次に出てくるのは何年後、何十年後だからな」

「——しかしですな、『銀の天秤』リーダー、ダンテス殿。その数か月の間に食い扶持をなくし、死ぬ者もあるのが事実なのです」

町長もなぜかついてきた。そして町長は「銀の天秤」の活躍も耳にしており、騎士だとか冒険者だとか関係なく尊敬のまなざしを向けていた。いや、ミミノさんには向けていなかったのでマッチョが好きなだけかもしれない——と僕はフリードリヒ様を思い出しながら思った。

「そんなに影響があるのか——あったんですか」

「ダンテス殿、私相手にはふつうに、ざっくばらんに、気軽に、冒険者同士のように接してくだされ」

「し、しかし……」

「いいのです。私がいいと言っているのです」

ダンテスさんが助けを求めて僕を見るけど、僕は「あきらめて」という顔でうなずき、部屋にいる他の騎士さんたちは「すまん」って感じでうなずき、ゼリィさんは甲板で「おえええええ」と盛大に海へ吐いていた。

「じゃ、じゃあ、ふつうに話すが……」

「はい、ダンテス殿」

おえええええ。

「海坊主で、陸地に死者が出る、と?」

「はい……残念なことですが、数か月も留まられると沖を専門に活動している漁師がどうしても食い扶持をなくしてしまいます。町も補助をしているのですが、借金をしている者などはどうしようもなく、自ら命を絶つ者が出てきますな」

「そうか……」

「そのために、海坊主を討伐できないまでも、追い払う方法がないかを確認したいのです」

僕は、テーブルに広げられた海図を見た。そこには海坊主の目撃地点が、今回、過去と、色分けされてバツ印がつけられてある。

発見箇所はばらけているのだが、堤防や陸地からは一定の距離になっている——つなげれば線になりそうな感じで。

つなげれば線になるもうひとつの海岸線……それって アレ(・・) のことか?

いや、でも、さすがにそれくらいみんな考えてるよな……。

うーん。

「どうした、レイジ? なにか思いついたことがあるなら言ってみてくれ」

「あ、えーっと……その、皆さんもう考えたことかもしれないんですが」

僕はバツ印を指差した。

「あのー……もしかしてここに、大陸棚のようなものがあるのでは?」