軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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敵対している間柄ではあったが、ボロボロの地底人を見て戦いを挑むダークエルフたちではなかった。

ダークエルフたちは亡くなった仲間たちの弔いに出かけ、やってきた地底人に対応したのは僕とノックさん、それに地底人の百人長だった。一応居場所がないからとキミドリゴルンさんもついてきている。

「ありゃァ……フォレストイーターか!? アンタら、倒したのかよ!?」

地底人のひとりが驚くと、ノックさんが自慢げに、

「我らが崇拝する指導者が倒したのダ」

と胸を張った。

彼らはアーシャの極大魔法が炸裂したところまでは確認し、その後は魔法に吹き飛ばされて見ていない。まあ、僕がしゃしゃり出てもあまり意味がないのでそのままにしている。

「そんなことより、お前らどうしたんだ。まさか……初夏鳥の群れがそっちへ行って被害が?」

「百人長、聞いてくだせェ。確かに鳥公は来ましたが、ほとんど喰われちまったンです」

彼らが言うにはヒトマネという巨大トカゲが出現し、初夏鳥を食っていたらしい。

それからサルメという女傑が戦いを挑んだが、ヒトマネを倒すことはできなかった。

サルメ……確か、調停者を呼び出した人だ。そんな人が自ら戦ったのか? まるで戦えるような感じではなかったけれど。

いや、それより……。

「サ、サルメ様が……!?」

それを聞いた途端、百人長はその場に膝から崩れ落ちた。

「あの方が……地底都市をなによりも大事にしてくださった方が、死んだ……」

「百人長、しっかりしてくだせェ……。問題はこっからなんです」

「これ以上の問題があるってェのかよ」

「…………」

地底人たちは顔を見合わせてから、

「ヒトマネは地底都市に突っ込んできたんです。山が崩れ、都市内の天井も崩落し、元帥閣下は全市民の撤退を命じました」

「元帥が……!? バカな! あそこを失っちゃァ、俺たちは生きていけねェだろ!」

「生き埋めになるよりゃマシなんですよ!」

地底人のひとりが吠えるように言ったあと、肩を震わせる。

「ランプが切れて真っ暗闇で……天井が崩落してくるのは恐怖でしたよ……。元帥閣下が決断してくださったおかげで、兵士たちが誘導しながら外へ逃がすことができました……」

「……そう、だったのか」

「まとまっていることはできねェので、3つの集団に分かれました。ですが、食料は1日2日で尽きやす。なんとしてでも地底都市に戻って食料は取ってこねェと」

「ヒトマネは?」

「山の周辺にいるようです。だもんで、地理に明るく勇敢な人が必要ってことで……元帥閣下は百人長をなんとしてでも連れてきてくれと」

「俺を?」

「『サルメ様の思いをいちばん深く知っている百人長が、今は必要だ』と、必ず伝えてくれと言われまして」

「————」

ぽかん、とした百人長だったが、複雑そうな顔で、

「……そうか、元帥はあの方と俺のことを知ったのか……」

とつぶやいた。

「百人長」

地底人たちに詰め寄られ、百人長は腕組みしてしばらく悩んでから、

「なァ……あんたノックって言ったっけな」

「そうダ」

すると百人長は地面に手をつくと額をこすりつけた。

「こんなこと頼める義理じゃねェッてことはわかってる! だが、頼む、力を貸してくれねェか!? 地底種族が絶滅しちまう!」

これには仲間たちもぎょっとしたようだったが、次々に百人長にならって土下座を始めた。

「…………」

ノックさんはどうしていいかわからない、という視線をこちらに向けてきた。

ね? 困るよね? いきなり土下座されても。

「——プンタに聞いたぞ。おまえは、プンタが制止するのも構わず初夏鳥の卵を割り、鳥に襲撃されるや我らがダークエルフ集落にそれをなすりつけようとしたのダそうだな」

やってきたのは族長だった。向こうのほうで、泥だらけのプンタさんがこちらを見ている。

はっとして顔をあげた百人長は、何事かを口にしかけ、一度口を引き結んでから、

「そのとおり……です……」

絞り出すように言った。

「我らにこれほどの被害を与えておいて、よくもまあ、手を貸せなどと言えるな?」

「……はい。だけどッ」

百人長はもう一度額を地面にこすりつける。

「虫のいい頼み事だとはわかってる……俺の命ならッ! どうしてくれても構わねェッ! 八つ裂きにしても、どんなひどい殺され方をしてもッ……! だから、お願いだ、ほんの少しでいい、手を……お願いだ、手を貸してくれェ……」

ぶるぶると震えながら頼み込む百人長に、族長は——ニヤリと笑った。

「顔を上げよ。お前は地底人の中では多少なりとも立場があるのダろう? 仲間も困惑しているぞ」

「しかし……」

「手は貸す」

「——えっ!?」

予想外の族長の言葉に、百人長が驚いて身体を起こす。

「プンタから聞いた。お前は、置いていけばいいというのにプンタを叱咤激励し、ここまで連れてきたのダと。卵が割れたことは決定的ダが、プンタが『卵置き場』に入った時点で初夏鳥にマークされていた可能性もある……。お前は、プンタの恩人でもある」

「そ、それは……別に……」

「なにか駆け引きを考えてのことではなかったのダろうな。ニッキを救ったこともダ。人は、極限の状態でその本性が現れる。その点で、お前は完全なる悪人ではない」

「…………」

「それにこれは、私個人の決定ではない。我らが崇拝するハイエルフ様のご指示ダ」

え、アナスタシアの——と思っていると、

「レイジさん!」

いつ目覚めたのか、アーシャが走ってきて僕の顔を両手でがしっとつかむ。

「ああ、ああ、本物です、本物のレイジさんです……!」

「い、いひゃいれふ」

「もっ、申し訳ありません!」

手を離しながら真っ赤になったアーシャは血色がよくなっている。魔力も戻ってきているようだ。

「……えっと、アーシャ。いいの? 地底人を助けるというのは」

僕がたずねると、アーシャはうなずいた。

「はい。我らエルフ種は地底人の方々に協力をします。その代わり——交換条件がひとつ」

口を開いたアーシャは、ほんの少しの時間でだいぶ変わったようだった。

交換条件、と聞いた地底人たちが固まる。

「……これまでの遺恨をすべて水に流し、互いの存在を尊重し、協力し、生きていくこと。守れますか?」

14歳の少女とは思えない威厳を感じ、僕ですら鳥肌が立つ。

百人長を始め、地底人たちは目尻に涙を浮かべ、頭を垂れる。

「守ります。必ずそのお約束、守り抜きますッ!!」

こうしてダークエルフと地底人は、恒久的に互いの種族を敬い、助け合うという 盟約(・・) を結んだのだった。