軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レフ人の見た目は竜人とほぼ同じなので、最初はやっぱり驚かれていた。だけれど彼らの存在こそが僕が来た「表の世界」の証明になるので、竜人たちも少しずつ「表の世界」を信じ始める人が出てきた。

まあ、裏とか表とか僕らが勝手に言ってることなので、竜人からしたらこの世界が表なのだろうけれど。

「では——いろいろと話を聞かせてもらおうかぬ」

会議場を仕切っているのはキミドリパパだった。

広々とした会議場だけれど、書記や役人っぽい竜人が数人いるきりで、あとは僕らとレフ人たちだけだった。

「あの……こういうときは長老が出てくるものではないのですか?」

「長老か……」

キミドリパパが遠い目をした。

「……あれ以来、一日中、浴場におってな。『老い先短い命、好きに使わせろ』と言われればなにも言えないんだぬ」

「なんか、ごめんなさい」

「いや、いや、構わんぬ! そのうち飽きるだろうから、そのときには山ほど仕事をさせる予定だぬら! わっはっはっは!」

キミドリパパが力強く笑う。

どうやら指を失いはしたものの、都市内での影響力が大きい人なので今後はまとめ役の仕事を任されるようだ。

「よし、それではいろいろと情報交換から始めようか」

レフ人の曹長は今やグループの代表のような立ち位置になっており、「裏の世界」に来てからのことを話してくれた。

キミドリパパは地底都市の状況が特に気になるらしく、熱心にたずねていた。

ほとんどは僕も知っていることだけれど、2艇あった飛行船のうちもう片方はすでに墜落したというのが新たな情報だった——悪い、情報だ。

ただやっぱり、僕らの興味はどうやって帰るか、だ。

「おそらくだが、向こうの世界とつながっている空の亀裂は、『未開の地カニオン』上空にあるものと思われる。しかし、レイジ殿と我々と、かなり離れた場所へ降り立ったのも不思議な話だが……」

「それについては僕も考えがあります。亀裂を通じての移動中ですが、自分たちで行き先を選択できるような感覚がありました。戻るときも同じようなことになるのではないかなと」

「選択、か……飛行船に乗っていたせいか、そういうことはなかったな。気づけば雲霞のごとく群がるモンスターのまっただ中にいて、夢中で逃げ延びていくとお化け山羊と遭遇して、叩き落とされたからな……」

「世界をつなげるメカニズムがよくわかりませんからね」

「なぜあのような現象が起きたのだろう?」

「光の柱が立った後に、空が割れましたよね。あの光は『九情の迷宮』から発せられていたのでラ=フィーツァが2つの世界をつなげるシステムを作ったのではないかと思います」

「なんと……」

僕はそれから竜人都市で聞いた話をした。

ラ=フィーツァは「裏の世界」の竜人で、何らかの方法で「表の世界」へと渡った。

その後、「九情の迷宮」を作った。

「ということは、ラ=フィーツァが世界を渡るのに使った手段がある、と……?」

「はい。まだ使えるかどうかはわかりませんが、今から飛行船を使ってカニオンへ突入するよりも多少はマシかもしれません」

するとキミドリパパが、

「なんだ、君たちはこの街を出ていくつもりなのかぬ? てっきり我が軍に入ってくれるものと」

「入りませんて」

「ではそちらの子はどうだぬ」

そちらの子——と指差されたのはスーメリアだった。

だけれど僕の陰に隠れるだけだった。

「まあ、ちゃんと話せるようになるには時間が掛かるかもしれません」

「そうか」

キミドリパパはうなずいたけれど——確かに、スーメリアをどうするかは考えなければいけないと思った。

会議が終わると夕食時で、キミドリパパとともにお屋敷に戻り、今日最後の浴場をオープンしてから食事をいただいた。するとスーメリアは船を漕いでいるのでベッドに寝かせてあげた。

(僕も今日は早く寝よう……なんか毎日めちゃくちゃ働いている気がするぞ)

だけれど食堂へと戻る途中、アーシャが僕を待っていた。

「少しだけ、お話ししませんか?」

月光が差し、アーシャを青白く照らす。

外から大浴場の声が遠い喧噪のように聞こえてくる。

僕はアーシャとともにお屋敷の庭へと出た。

「どうかしましたか?」

「————」

すると僕の前にいたアーシャは振り返ると、僕を抱きしめた。

突然のことに立ちすくんだ僕は、次になにが起きたのか脳がパニックを起こす。

だけれど——彼女の身体が小さく震えていることに気がつくと、冷静さが降りてきた。

「……レイジさんが、帰ってこなかったらどうしよう、って思うと、怖くて……!」

そうか——待たせる身より待つ身のほうがつらいよな。

偵察チームに伝言をすれば大丈夫だろうと軽い気持ちだったけれど、考えてみればアーシャだって右も左もわからないこの竜人都市でたったひとりだった。

「ごめんなさい、アーシャ。でもあなたを連れて行くわけにはいかなくて……」

「……はい、わかっているのです」

そっ、と身体を離したアーシャは、ふわりと笑った。

「これは私のワガママだと、わかっているのです。早く帰ってきて欲しかったことも、無事を願ったことも、今、あなたを困らせたことも……」

帝国にいたときは、籠の鳥だったアーシャ。まるで大切な人形のように毎日手入れされていた髪もここではほこりと汗にまみれ、服もくたびれている。

でも彼女の中心にある、一本通った芯は、前も今も変わらないままだ。

崖に咲く一輪の花のように気高く、美しく、そして強い。

「あの……」

なんと言っていいかわからなかった。信じられないほどに強い自制心を持つ彼女が、今、烈しい感情をあらわにした。他ならぬ僕にだけそれを見せてくれた。

だというのに僕はなんと言っていいかわからず——次の言葉が出てこなかった。

「今日もお疲れでしょう、レイジさん。せめて夜はゆっくり休んでください」

アーシャは僕の横をすり抜けて、お屋敷へと戻った。

僕は——なにを言うべきだったのだろうか。

彼女を突き放したのだろうか。

彼女は、それでも満足したような顔をしていたと見えたのは僕の勝手な思い込みなのだろうか。

「……わからないな」

空には月が掛かっている。

「表の世界」と同じ月が。

レフ魔導帝国でヘビギンチャクが出てきたときに——月光を浴びたラルクがいた。

今もラルクは、自分と同じように月を眺めているのだろうか。

そう思うと少しは気持ちが楽になり、一方で、なるべく早く「表の世界」に戻らなければという思いに駆られる。

「今は、帰る方法を探すのが先決だ」