軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スライムの可能性

自分の部屋に戻った俺は、枕に入っていた力ないスライムを見る。

餌を貰えずに息絶えてしまってせいか、瑞々しかった水分は失われ、皮にもシワが入ってペシャンコだ。あのように弾力のあるスライムとは思えない見た目。

もう枕として使うことはできないが、何かに再利用でもできたらいいのに。

「ん? んん?」

悲しげにスライムを持ち上げていた俺だが、ある事に気付いた。

このスライムを使えば、ポイの和紙代わりにできるのではないだろうか?

少しぬるっとしたスライムの皮は、綺麗な膜となっていてポイにちょうどよさそう。

そんな事を思った俺は、ちょっと実験をするために中庭に移動。

土魔法でバケツを作って、そこに水魔法で水を入れる。

そして、中にスライムを入れて軽く洗う。

しかし、思ったよりぬめりが取れないので、バケツの水を抜いて新しい水を入れてやり、もう一度水洗い。

すると、大分ぬめりが取れてきたので、スライムを取り出して亜空間から取り出した布で水気をとる。

「おっ、ちょっと潤いが戻ってきたな」

水に浸したからだろうか、スライムの皮に入っていたひび割れはなくなった。

ぷるりとした感触に驚きながら、俺はそこにハサミを入れて円形に切る。

そして、ポイで挟むと一応問題なく張ることができた。

よし、次は魚をすくえるか実験だ。

俺はスライムポイを持ったまま、屋敷の外にある小川まで移動。

小魚すくいにちょうど良さそうな小魚を見つけたら、水魔法でそれらを捕獲。

亜空間から収納しておいた水槽を取り出して、そこに入れる。

水槽の中をチョロチョロと泳ぎ回る小魚達。普通の川魚のせいか色合いがほとんど茶色ばかり。

いささか小魚すくいをするには色合いが乏しいが、実験をするだけなので我慢するとしよう。

土魔法で小さなお盆を作ったら、それを左手に持ってスライムの皮を張ったポイを水の中に入れる。

まずは耐久テスト。スライムポイを持ったまま水の中で動かす。

スライムの皮に水の圧力がかかるが、紙のように破れることはない。むしろ、スライムの弾力を示すように若干波打っている気がする。

スライムの皮を観察しながら水の中で左右に動かしたが、破れる気配はない。

やはりスライムの皮だけあって、水には強いようだ。

それを確認した俺は、次に魚を狙うことにする。

動かしていたポイを水中から上げて、ジーッと泳いでいる小魚を眺める。

そして、動きの鈍そうな小魚を見つけ、そーっとポイを差し込んですくった。

小魚が乗るとどうなるのだろうか。

実験のために敢えて皮に負担をかけるようにすくうと、ポイの表面が小魚の重みに波打った。そして、その重みを吸収するかのように元に戻る。

スライムの皮によって小魚は、呆気ないほど簡単に取れてしまった。

「うーん? 今のは和紙じゃ破けちゃうような勢いでやったんだけどな……」

スライムの皮の予想以上の丈夫さに驚きながらも、俺は続けてポイで小魚をすくっていく。

ポイに負担をかけないコツは知っていたが、それを実践せずに初心者のように。

しかし、それでもスライムポイは丈夫なせいか、ポンポンと小魚がすくえてしまった。

まさに入れ食い状態で、小魚をポイの上に乗せれば簡単に獲れるものだった。

水に強いことや、問題なく小魚をすくえることはわかった。

スライムの皮は、和紙に変わる十分な素材だ。

しかし、これでは簡単すぎる。

俺がやりたいのは、破れやすいポイを使いながらも、知恵を絞ってどれだけ多くの小魚をすくえるかというものである。

水に強いのは結構なのであるが、もうちょっと和紙のようないい塩梅になってくれないものだろうか。

こう、ぷよんぷよんじゃなくって和紙のようにパリッと……。

水に濡らしたら弾力が出てきたし、今度は乾燥させてみたらどうなのだろう? 確か水で濡らす前は、皮が乾燥してしまってひび割れのようなものが入っていた気がする。

ふむ、可能性はなくはないな。

俺は水槽に入っていた小魚達を川に放流。水槽やポイなどを亜空間に放り込むと屋敷へと引き返す。

中庭に戻ってくると真っ白な服やシーツが、風に煽られてはためいていた。

どうやら洗濯中のよう。そう思っていると、シーツの後ろからミーナが顔を覗かせてくる。

「あ、アルフリート様、お帰りなさいませ。今日は散歩ですか?」

「ちょっと収穫祭の催し物の実験するために、近くの小川にね」

「ああ、なんか小魚すくいとかいうやつですね! どんなものになるか想像できないですけど、きっと投球ターゲットのように楽しいはずです! 完成したら是非やらせてくださいね!」

ずいっと身を乗り出しながら頼み込んでくるミーナ。

この間やった投球ターゲットなどがよっぽど気に入ったらしい。

「うん、ノルド父さんとエルナ母さんに見せないといけないし、その時は呼んであげるよ」

「ありがとうございます。今年はアルフリート様が色々なものを考えてくれたお陰で、いつもよりも賑やかになりそうで楽しみです」

俺がそう言うと、ミーナが嬉しそうな笑みを浮かべてそんな事を言う。

このような事を言われれば、意識の高いノルド父さんやシルヴィオ兄さんなんかは奮起するのであろうが俺は違う。

ノルド父さんとエルナ母さんから頼まれたから引き受けたけど、結構遊んでいるしな。

村人全員を楽しめるように企画しよう、頑張ろうという訳ではなく、自分の楽しいものを好きに作っている感覚だ。

だから、この程度では俺が村のために大きく貢献しようとか働こうとは思わない。

だけど、自分の好きなものを同じように好きだと共感してくれるのは嬉しいものだな。

自分のそんな感情に思わず苦笑する。

「あ、そうだミーナ。これも干しておいてくれる」

「はいはい、濡れた服ならついでに干しちゃいま――ひゃああああああっ!?」

何気なく後ろ手に持っていたスライムの皮を手渡すと、ミーナが悲鳴を上げながら地面に投げ捨てた。

「ああっ、ちょっと!? 地面に投げ捨てるなんて酷い!」

ミーナが投げ捨ててしまったスライムを慌てて広い上げる俺。

ああ、芝の生えているところではなく、土の所に放り投げられたせいか砂塗れだ。

夏に砂浜に打ち上げられたクラゲを思い出しながら、俺はスライムの皮を持ち上げて砂を払う。

それでも完全には取れないので水魔法で洗い流した。

「ちょ、アルフリート様! そのぬめっとしたものはなんですか!?」

「死んだスライムだけど?」

ミーナだってそれくらい知っているはずだ。今更何を言っているのか。

「いや、それはそうですけど、洗濯物を出すようなノリで出さないでくださいよ! 服だと思っていたのに、急にぬめっとしてものが出てきてビックリしちゃったじゃないですか!」

「え、なんかごめん」

別にスライムなんて珍しくもない魔物なので、そのまま追加で洗濯物を頼むように言えば普通に干してくれると思っていた。

「それじゃ、改めてこのスライムを干してくれる? あ、できればちゃんと広げてシワにならないように」

「は、はぁ、いいですけど、干してどうするんです?」

「乾燥させたら、もしかすると催し物に使える道具になるんだ」

俺がそう言うと一応は納得したのか、ミーナはまるでタオルでも干すかのようにロープに干してくれた。

シーツやシャツ、タオルと並んでスライムが干されている光景は、とてもシュールだった。