軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ラザレスお爺ちゃんからの贈り物

俺が中庭にある雑草を全て土魔法で抜いて、サイキックによる鍬で畝を作り終わった頃。屋敷の敷地の外に一台の馬車がやってきた。

今日はトリーが来るとも聞いていないし、他の貴族が来るとも聞いていない。

一体何の用事だろうか?

馬車の音を聞きつけたらしいサーラが、屋敷の玄関から出てきて馬車の下に向かう。

それからしばらくすると、馬車はあっさりと立ち去って、木箱を胸に抱えたサーラが戻って来た。

一瞬、ドール子爵から新たな人形が届いたのかと思ったが、子爵にしては木箱の装丁が地味な気がする。

「サーラ、その荷物はなに?」

「ラザレス様からアルフリート様宛の贈り物だそうです。中には、王都でアルフリート様が作っていたコマの完成形が入っているのだとか」

「おお! コマか! 見せて見せて!」

俺が今すぐ開けるように促すと、サーラはその場で木箱を開封しだす。

俺が戯れに作っていたコマを本当に商品として作ってくれるとは。

ワクワクとしながら待っていると、サーラが木箱の蓋を開けて見せてくれる。

木箱の中には、大、中、小といった色々なサイズのコマがゴロゴロと入っていた。

きっと大人や子供が楽しめるように、大きさを変えて作ってくれたんだろう。

コマの造りは飾り気がなく、シンプルなものだがとても綺麗な形をしている。

歪な形のないコマを見れば、ひとつひとつのコマに職人達の手間がかかっているのが窺われた。

俺の木箱の中にあるものから、自分の手の平に収まる小さなコマと付属のヒモを取り出す。

それからコマにグルグルと紐を巻きつけて、石畳の引かれた場所に放り投げる。

すると、お爺ちゃんのくれたコマは綺麗に回り出した。

おお、爺ちゃんと職人ってばいい仕事しているな。まったくブレることがないや。

「はぁ……器用なものですね」

「巻いて投げるだけだから誰でもできるよ」

俺はにっこりと笑ってサーラに言うと、止まってしまったコマを回収する。

うん、これなら問題なく遊べるな。

せっかくコマがあるんだ。これはもうトール達とぶつけあって遊ぶしかないな。

コマの調子を確認した俺は、サーラの手にある木箱から小さなコマ二つと大人用のコマ二つを取ってポケットに入れる。

「後は俺の部屋に置いといて。暇があったら皆で遊んでいていいから」

「どこに行かれるんですか?」

「トールの家!」

俺はサーラにトールの家に向かうことを告げて、そのまま屋敷の中庭を飛び出した。

「おー! アルじゃねえか!」

コマを手に持ちながらトールの家に向かっていると、前方からルンバとゲイツが歩いてきた。

ルンバは相変わらず今日もデカく、ゲイツは相変わらず顎が長い。

「あっ、ルンバにゲイツ。今日は何してたの?」

「おう、今日はゲイツと村の周りにいる魔物を退治していたぞ!」

「それからセリア食堂で飯を食っていたって訳だ」

ルンバの言葉に続くようにゲイツが自慢げに言う。

「……王都に行く時の道中では、ハイゴブリンに負けていたけど大丈夫なの?」

ハイゴブリンとはいえ、所詮魔物の中では比較的弱い部類だと聞く。

コリアット村の周辺に凶暴な魔物は少ないが、外れの方ではオオカミやクマがいると聞く。

そんな所にゲイツが行っても大丈夫なのだろうか?

「……あれは、偶然ハイゴブリンの棍棒がクリティカルヒットしただけだ。忘れてくれ」

ハイゴブリンに負けたことはゲイツにとっても忌々しいものなのか、苦い表情をしながら言う。

「ガハハッ! 今回はイノシシと相打ちになっていたけどな! ゲイツの剣がイノシシの喉に刺さって、イノシシの牙がゲイツの顎に当たって両方ノックダウンだ!」

「バカ! それを言うな!」

あー、もう簡単に想像できるな。

というかイノシシの牙って結構危なかったと思うんだけど、ゲイツの顎には傷一つないよね。

何だかんだゲイツは運がいい気がする。

それにしてもイノシシと相打ちになっているゲイツとか受ける。

次は何と戦って相打ちになるのだろうか? ネコか? イタチかな?

「露骨に俺の顎を見て笑うな。失礼だろ? ふん、次はもっと大物を完全勝利で倒してみせるさ」

「コリアット村の周りにはそんな大物なんていねえけどな」

次へと息巻くゲイツへと水を差すルンバ。

まあ、次はクマでも倒せるように期待しているよ。熊鍋とか食べたことがないから。

「ところで、アルの手にあるそれは何だ?」

俺が温かい目でゲイツを見守っていると、ルンバが俺の手にあるコマを指さして言う。

ああ、そうか。ルンバとゲイツは王都にあるお爺ちゃんの家に行ってなかったから知らないのか。

「これはコマっていう遊び道具だよ。俺が簡易版を作って、王都にいるお爺ちゃんが商品にしてくれたんだ」

「おー、となるとアルが考えた新しい遊びか! 面白そうだな!」

「紐が巻かれていて不思議な形をしているな。投石紐みたいに投げて遊ぶのだろうか?」

前世にあるものを真似しただけなので、俺があたかも考えたかのように言われると後ろめたいな。

まあ、楽しく過ごすために俺がこっちの世界で造ったものだ。一応それなりに苦労はあったので、割り切って考えよう。

「どうやって遊ぶんだ? ちょっとやってみてくれよ!」

「いいよ。これからトールの家でコマを使って遊ぶ予定なんだけど二人共来る?」

どうせこれからトールとアスモにも説明をするのだ。

それなら一度に説明した方が手っ取り早い。

「おう! 俺は特に何も予定はないぞ!」

「これから流行るかもしれない遊びだ。参加しない理由はないな」

忙しい印象を受けない二人だが、案の定予定は空いていたらしい。

コリアット村は村人の交流も盛んなので、勿論ルンバやゲイツとトールも面識はある。

というかこんなにも目立つ二人を知らないはずもないしな。

どうせ今日はミュラさん出かけているのをいいことに、家でダラダラとしているのだろう。

俺とルンバとゲイツが行こうと問題ないに違いない。

「それじゃあ、トールの家に行こうか!」

「「おう!」」

こうして勇者アルフリートは、二人のおじさんをパーティーに加えた。