軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37話.藤堂誠也の為に①

皆が集まり、騒々しくも楽しい一日を終えて。

休んだ翌日の登校は思っていたよりも騒がしくて。

「大丈夫なのかよ榊!? お前はこのクラスのホープなんだから無理すんなよ!?」

「そうですわ榊様! 無理をなさって体調を崩していては本末転倒ですわ!」

「すみません榊様。お嬢様はこれでも、それはもう心配なさっていて……押しかけようとして住所が分からずジタバタしていた経緯がありまして……」

「リーズゥ!? 主の恥ずかしい事を赤裸々に公表しないでくださいまし!?」

「あ、あはは……心配かけてごめん皆。この通り一晩で良くなったから」

一晩どころか、寝て起きたら全快してましたけども。

皆が次々に見舞いにくるものだから、もはや俺の部屋では収まりきらなかったのでリビングに移動したくらいだ。

最初に来たリーシャさんが帰ろうとした所に紅葉さんが来て、それから烈火に美樹也、美鈴さんが一緒に来た。

なし崩し的にそのまま集まる形になったのだ。

俺的には楽しかったけど、急いで帰ってきた咲や拓には悪い事をしたなぁ。

なんせ皆、午後の自主練をしないで来るんだもの。

推し達が俺の為に集まってくれたと考えただけで、こう、胸に来るものがあるよね。

そうして今週は「榊チーム」としての連携を高めるべく練習に励み(何度か陽葵先輩や彰先輩達と模擬戦を交えつつ)、金曜日が終わる。

「お疲れ様皆! 僕はツヴァイが欲しい本があるらしくてさ、買いに行くからこれで帰るね!」

「お疲れ様アイン。気を付けてね、最近魔族がまた活発になってきてるから」

黒騎士の件は例外としても。

「うん、ありがとう榊君。僕も強くなってきたけど、油断はしないよ。それじゃ、また来週皆!」

「俺、も、これ、で。また、来週、榊殿、リーシャ殿」

「ええ。また来週」

そうして、いつも通り俺とリーシャさんだけになったタイミングで話す事にする。

「リーシャさん、待たせてごめん」

「え?」

「藤堂先生の呪いを解く為のアイテムの素材集め、そのうちの三つを集めに……」

「行くわ! 明日ね!?」

「う、うん。素材は四つ必要で、そのうちの最後の一つは烈火と一緒に行ってもらう事になる」

「ええ、最初にそう言っていたわね。玲央君は行けないって事なのよね?」

「……うん。そのダンジョンボスがね、三人以上だと出現しないんだ」

「成程……厄介なボスね。……そう、だから、なのね」

リーシャさんはこの一言で全てを察してくれたんだろう。

黒騎士の件もあるが、俺は弱い。

皆を上手く指揮する力があろうと、それは皆が居てこそ。

二人という人数制限では、同等の強さの二人が居るのと、片方が戦力外では差が大きい。

しかもあのボスは、即死攻撃を使ってくる。

あれに耐えられるのは烈火しかいないんだ。

俺でも身代わりの木偶人形を準備しておけば一度は耐えられるけど、それは避けられるものじゃないわけで。

優しいリーシャさんは必ず動揺してしまうだろう。

実力伯仲の戦いで、それは命取りになる。

だから、この戦いだけは……烈火に託すしかないんだ。

まぁでも、その点も心配はしていない。

彼は、烈火は、俺の大好きな『ブレイブファンタジー』の主人公なんだから。

炎のように熱く、友情に厚く、どこまでも明るく、それでいて優しい熱血漢。

俺の大好きな人だから。

「それでね、その……言いにくいんだけど……」

「どうしたの?」

「水着、用意しておいてね」

「……。……なんて?」

「水着。一つは海底神殿ダンジョンだから」

「成程。……あの、玲央君。私、流石に海の中で戦える自信はないのだけど……息が続く自信もないわ……」

「あ、その点は大丈夫。海の中でも呼吸が出来る魔道具があるんだ。紅葉さんに在庫あるか聞いたら、あるって言ってたから買ったんだ」

「買ったのね」

「買いました」

「紅葉の事だから、あげるって言わなかった?」

「言いましたね」

「……相変わらずね玲央君」

だってすっごく高いのだ。

紅葉さんにはスマホもプレゼントしてもらってるし、皆の為に使ったアイテム類までこっそりプレゼントしてくれたり、お世話になりっぱなしなのだ。

これ以上貰えないよ、恩を返しきれなくなってしまう。

「それじゃ、その魔道具は私が買うから」

「え?」

「当たり前でしょう。私の都合で……」

「それは違うリーシャさん。それはもう、違うんだ」

「違う……?」

「うん。藤堂先生を呪いから解きたいのは、俺ももう同じなんだよ。だからこれは、リーシャさんの手伝いじゃない。俺のしたい事なんだ」

「!!」

「だから、仮に俺に何かあっても、リーシャさんが罪悪感を感じる事は無いからね? 俺がしたくてやってる事なんだから」

こう言っておかないと、優しいリーシャさんは俺が怪我しただけでもオルタ化…… Alter(アルター) Ego(エゴ) とも言うけど、簡単に言うと闇堕ちしそうな気がするんだよね。

「……ありがとう、玲央君。私が最初に玲央君に声を掛けたのは、本当に正しかった」

そう言って、自然な笑いを見せてくれるリーシャさんに、胸が高鳴る。

烈火とエンディングを迎える時に見せてくれたスチル、そのまんまの笑顔で。

俺なんかが見ても良いのかという思いと、そんな自然な笑顔を見せてくれるまでになった事を嬉しく思ってしまって、感情が罪悪感と板挟みになってしまっている。

「どうしたの?」

「あ、いや……」

不思議そうに首を傾げるリーシャさんも、とても可愛くて。

ダメだ、一旦落ち着こう。

感情のジェットコースターになってしまっている。

「ふぅ……ふぅ、よし!」

「? クス、おかしな玲央君」

またその笑顔は今はやめてぇぇぇっ!!

心臓が動きすぎて、急に止まってしまうから!

とりあえずなんとか平静を装い、明日ダンジョンへと向かう約束をしてから家へと帰宅した。

「おにいおかえ……なんでそんな顔真っ赤なの!?」

「ゆでだこみてぇだぞ兄貴……」

「うん、理性と知性と興奮が戦ってたんだ」

「何言ってんのおにい……」

「とりあえず冷えピタでも持ってくるわ。風邪がぶり返してるのかもしんねぇし」

「そうかなぁ……?」

拓の優しさが身に染みる……俺の情緒、レベルアップしませんかね……?