軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28話.西園寺家①

「え、えぇ!? あの西園寺グループの会長さんのお宅へ行くのかい玲央!?」

「う、うん。明日」

「それも明日!? 何か菓子折りを買いに行った方が良いわよね!?」

両親に夜、明日出掛ける事を伝え、どこに行くのかと聞かれたのでそのまま言ったらこれである。

「落ち着いて父さん、母さん。別に面接に行くわけでもないんだし、普通に手ぶらで行くよ」

面接も菓子折りなんて持って行かないけど。

「そ、そうか? まぁ、玲央がそう言うなら大丈夫か……」

「まぁ、そうね。咲や拓が行くのとは違うものね」

両親からの信頼が厚くて嬉しいけど、普通に友達の家に呼ばれたってのとは違うんだから、両親がこうなるのも無理はないと思う。

「おにい、西園寺さんの家に行くの?」

「西園寺さんって、あのテレビでもよく話題になる超巨大企業の娘さんなんだよな兄貴」

「うん、そうだよ」

「すっごいねおにい! お土産買ってきてね!」

「すっげぇな兄貴! 安いもんで良いからさ、食べ物とか買ってきてくれよ兄貴!」

「旅行に行くわけじゃないからな……?」

しかも観光地ではない。

家族への報告をそこそこに、部屋に戻る。

服装はどうしようか。

「にゃん(お前はまだ学生だ。ヴァルハラの制服で良いだろう。下手にスーツで行っても浮くぞ)」

「そ、そうだよね」

ハンガーラックに掛けられた服の前で悩んでいると、マカロンにそう言われて納得する。

そうだな、それこそ面接じゃないんだし、制服で良いか。

心なしか良い匂いのする部屋で、ベッドに横になる。

今日、この部屋でリーシャさんと紅葉さんが服を着替えて……ダメだ、想像するな俺!

「にゃん(二人とも良い体型をしていたぞ。理想のスタイルと言うのだろうな?)」

「マカロン、妄想にダメ押しするのやめてもらって良いですか」

「にゃ(ククッ……一応お前にも性欲があって安心だ)」

「どういう安心なのか……」

そりゃ俺だって男だし、そういう欲はある。

だけど、推しってのはそれを上回るんだよ。

性別じゃないんだ。

存在がもう好きなんだよ。

だから推すんだ。

なんなら、中には自分の稼いだお金をスパチャ(配信者にお金を投げる行為)で捧げ、そのお金で推しが食べ物を買って、それが血肉となり自分が推しを養ってるって感じるのを生きがいにしている推す側にだって俺は共感する。

まぁ大体、男から女、女から男って構図になるけれどね。

でもゲームの場合は、また違うんだ。

そこに性別差なんてものは存在しない。

男も女も推せる。

だって、惚れたのは見た目だけじゃない。

その生きざま、性格、全てに惹かれたからこそ、推しになったのだから。

「にゃん(玲央よ)」

「っと、どうしたのマカロン」

「にゃん(私はお前が気に入っている)」

「!!」

「にゃ(お前達家族は、温かい。それはきっと、お前の影響だ)」

「俺の……?」

「にゃん(ああ。私は今の生活を気に入っている。変わってくれるなよ、玲央)」

そう言って、俺のベッドの端で丸くなるマカロン。

その頭に手を置き、撫でる。

マカロンは動かず、されるがままだ。

「ありがとう。俺は変わらないよ」

「にゃん」

返事は鳴き声だけだった。

けど、ああ、と聞こえた気がする。

「おやすみ、マカロン」

そう言って目を瞑って少し。

「マーちゃん! もう! 私と一緒に寝る約束したでしょー! さぁ確保ぉー!」

「うにゃー!!(そんな約束した覚えないわー!!)」

「おにい、起こしてごめんね! マーちゃんは任せて!」

「あ、ああ。おやすみ咲」

「おやすみおにい! さぁ良い子良い子、マーちゃぁ~ん!」

「にゃー!(頬ずりを止めろ! いい加減にせんかー!)」

突然の乱入者である咲に、マカロンは連れ去られていった。

あの魔王が勝てない唯一の相手じゃなかろうか、凄いぞ咲。

そんなどうでもいい事を考えながら、眠りに落ちた。

翌朝、すでに人型のマカロンが椅子に腰かけていた。

「起きたか玲央」

「おはようマカロン。まだ早いけど、猫の姿で居なくて大丈夫?」

「安心しろ。私達が出るまで、あの四人はぐっすりだ」

成程、魔法でも掛けたのか。

「寝ているだけで体の悪いところを浄化していく高等魔法を掛けておいた。目覚めすっきりの好調なこと請け合いだ」

それ俺にも掛けてもらいたかったんですけど。

とりあえず制服へと着替え、準備万端である。

「確か嬢ちゃんが迎えを出すのだったな?」

「うん。9時頃に家の前で待っててくれるみたいだよ」

「ふむ。待っておくのもあれだ。私が連れて行ってやろう」

「え?」

「『テレポート』」

何かを言う暇もなく、とてつもなく大きな屋敷の門の前へと景色が変わった。

「ほれ、靴だ玲央」

「あ、ありがとう」

玄関に置いてあった靴を、何故マカロンが持っているのかとか、気にしたら負けな気がするので言わずにおいた。

「いや、これは大きいな……ヴァルハラと同じくらいの広さがあるんじゃない、これ……」

「それよりも、嬢ちゃんに連絡を入れた方が良いだろう?」

「おっと、そうだね」

スマホのライムを起動し、マカロンに紅葉さんの家の前に転送された事を伝える。

慌てた様子で、紅葉さんは迎えをすぐに用意すると言ってくれた。

こっちのせいで、早速迷惑を掛けてしまったな。

いやマカロンのせいだけど。

少し待つと、黒いリムジンが俺の前で止まる。

「榊 玲央様とお連れ様ですね。当主様の元へご案内致しますので、お乗りください」

言われて乗ると、柔らかい座席に驚くしかない。

こんなにフワフワなのか。

まるでダメになるクッションみたいだ。

やっぱり高い車って違うんだなぁと思いつつ、外を見るとまた凄い。

なんで門から家までがこんなに遠いの?

うちなんて門から家まで数メートルしかありませんけど。

まぁ門の大きさからすでに違ったけどね……お金ってあるところにはあるんだなぁ。

そうして車から降りると、紅葉さんとクレハさんが待っててくれたようだ。

「おはようございます玲央さん、マカロンさん。わざわざご足労頂いてありがとうございます」

「魔王様☆ それに玲央ちゃん☆ おはよ☆」

「うむ」

「おはようございます。クレハさんはもう住んで良い事になったんだね」

「まだ仮住まいですけれどね。今日の話次第で、本格的に住居を構える事になるかと思います」

成程。

とにもかくにも、西園寺家当主、西園寺 剛毅さんの意向次第という事だね。

「ふむ、この先だな」

勝手知ったるなんとやらで、マカロンが進んでいく。

「ちょ、マカロン!?」

「ああ、構いませんよ玲央さん。マカロンさんは好きに通すように言われておりますから」

「そ、そうなの?」

「はい」

「魔王様の道を遮るとかありえないし☆」

それは魔王と知ってるからであって、いや西園寺 剛毅さんは紅葉さんからすでに聞いて知っているわけだから良いのか?

とりあえず俺もマカロンに続く。

その後ろに紅葉さんとクレハさんも続いた。

「よう」

「フハハ! よもや魔王とこうして会えるとは思わなんだぞ!」

マカロンが 襖(ふすま) を開けると、 袴(はかま) を着た白髪のお爺さんが立って待っていた。

この威圧感、只者じゃない。

けれど、何故か……この力に覚えがある、ような?

「フン。あの小僧が老けたな」

「わしとて歳は取る。魔族と同じにするでないわ」

「だが、百歳でも死ぬ未来は見えんがな」

「当然だ! わしは孫が大きくなるのを見届けるつもりじゃからな! 早く紅葉に後を任せて、わしは楽隠居させて貰う予定じゃ!」

「お爺様、元気なうちはそう簡単に辞めれると思わないでくださいね……?」

「ははは! まぁ跡継ぎが出来るまではな! なぁ榊殿?」

「え?」

「おっとすまぬ、ついな、つい! フハハ!」

なんでだろう。初めて会ったはずなのに、すでに好感度が高い感じがするのは。

紅葉さんから良い話を聞いてたりするのかな?

ってそうか、お爺さんからすれば、孫娘の命の恩人になるんだもんな。

俺はそのあたりの認識が薄かったかもしれない。

でも、それは俺がしたくてしたことだし、気にしないで欲しいんだよね。

とはいえ、俺が直接何かしたわけじゃなくて、マカロン任せではあるのだけど。

「ま、話を聞きたいと言ったのは口実でな。詳細は紅葉からすでに聞いておるのだ。今日はのんびりとお前達と過ごしたいと思って呼んだのだ。休日にすまぬな榊殿」

「あ、いいえ! 俺の方こそ、呼んでもらって光栄です剛毅さん」

「ふむ? わしの事はいつも通り、剛毅と呼び捨ててよいぞ?」

「え? いつも通り?」

「む?」

「御爺様……」

「……。……おお! そうじゃった。いや榊殿、今のは忘れておくれ」

「あ、はい。よく分かりませんけど、分かりました」

「玲央さん、時々その素直さが心配になります……」

「え……?」

「ふはは! いや、やはり変わらぬな榊殿は! うむうむ、孫の孫が見れるのもそう遠くないか? 頑張れよ紅葉!」

「御爺様!!」

一体何の話をしているのか分からないけれど、剛毅さんは楽しそうだ。

何故かマカロンも笑ってるし、クレハさんはなんかデフォルトが笑顔である。

あのきわどい服装ではなく、きちんとした服を着ているのは意外だったけど。

「ん? ウチの服が気になる?」

「あ、えっと」

「あの姿で居たら、住まわせてくれないって紅葉が言うんだよぉ☆ 仕方ないから、上から着てるし☆ ほら、中はそのまま☆」

「見せなくて良いですから!?」

下着ですらないのだけど、女性に服の中を見せられるのって何故か恥ずかしくなるんだよ!

よくスカートの下はスパッツだから大丈夫って言う女性が居るけれど、そうじゃないんだ。

男はスカートの下がなんであれ、見えたらドキドキするんだ!

見せパンとそうじゃないパンツの違いなんて男に分かるかと言いたい。

「玲央ちゃん純情だねぇ☆ そんなんじゃ先が思いやられるゾ☆」

「クレハ」

「あ、すみません魔王様☆」

「いや、もっと言ってやれ」

「畏まり☆」

「畏まらないで!? マカロンもクレハさんを焚きつけるんじゃないよ!?」

「しかし、お前はもう少し女の耐性をつけた方が良かろう。ほれ」

「うわぁっ!?」

「……これだものな」

いや、いきなり胸元を開かれたら誰だってそうなるよ……。

なんでマカロンもクレハさんも性に奔放なんだ……。

「気になってたんだけど玲央ちゃん☆ 魔王様を呼び捨てでウチをさん付けはキマズイってレベルじゃないから☆ ウチの事も呼び捨てて☆」

そういえば、クレハさ……クレハはマカロン直属の部下なんだったっけ。

「そっか、分かったよクレハ」

「オケマル☆ 魔王様の大事な人だから、特別なんだゾ☆」

「まぁ、これでも一応最上級の幹部でな。同じ階位はあと三魔しかおらん」

ゲームでは直接戦う事が無かった将軍も居たけれど、魔族の三将軍は全員滅茶苦茶強かった。

特にデイライトウォーカーと呼ばれる、吸血鬼の真祖である彼女は……1周目で勝つのはほぼ不可能なくらいに強い。

ランダムエンカウント制で、数ターン耐えれば去って行く気まぐれな性格のお陰で、倒さなくても良かったんだよね。

本来はクレハを合わせた四将軍だったって事か。

「それで魔王よ。この大陸に手を出さぬと言うのは、本気か?」

そしてようやく、話の本題が始まった。