軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14話.二年生筆頭・結月 陽葵

彰先輩の家にお邪魔した翌日。

リーシャさんとその時の事を会話しながら、廊下に辿り着いた時の事である。

また廊下がざわざわとしている。

誓って言うが、今日は俺に心当たりはない。

だというのに皆、廊下に着いた途端一斉に俺を見る。

皆の目が、『またお前か』と言っている気がする。

だって隣に居るリーシャさんすら、「またなの玲央君」って言うんだもん。

再度誓って言うけれど、今回こそ俺に心当たりは……

「あー!! 見つけたし! 榊 玲央!」

「「「「「……」」」」」

皆の、やっぱりお前かって声にならない声が聞こえた気がする。

「やっぱり玲央君か……」

いや実際に聞こえてきた、隣から。

でも、俺にこの人との接点は全くないのだけど。

結月(ゆづき) 陽葵(ひまり) 。二年生筆頭であり、二年生で千鶴先輩を抑えてトップのサブキャラクターである。

数ある女性サブキャラクターの中でも、この人だけは唯一の友情エンドを迎える人だ。

その理由は……

「あーしの彰先輩と、昨日一緒に帰ったの知ってるし! 一年生のお前が、どうして彰先輩と一緒に帰ったし!? あーしでもまだ彰先輩と二人きりなんてなれた事ないのに……その手腕、あーしに教えろし!」

「……」

うん、この言動からも分かるように……彰先輩の熱烈なファンと言うか……彰先輩一筋なサブキャラクターなのである。

普通、サブキャラクターの女性を選んでルートに入ると恋人エンドになるのに、シナリオライターは何をとち狂ったのか、この人とは恋仲になれないのである。

容姿も抜群に良くて綺麗な金髪、小柄で可愛く、なんならオタクに優しいギャルみたいな感じなので、人気は抜群に高かったのだが……。

「えっと……それ、ここで話さないとダメです?」

「むぐっ……た、確かに、そんな超A級の話題を、こんな多くの人達が聞こえてしまう場所で言えるわけないし!」

いや、そういう意味ではないです。

「なら、ついてくるし!」

そう言って俺の手を取ろうとしたところで、リーシャさんがその手を払った。

「お待ちください先輩。どういう理由があって玲央君を連れて行こうとしているのか分かりませんが、もうすぐ始業の時間です」

「……む、あーしに喧嘩を売ってるし?」

「それを先輩が望むのであれば、お受け致しますが」

リーシャさんの目は本気と書いてマジである。

すでに片手を剣の柄に置いている。

「あー……悪かったし。あーし頭に血が上ると、ちょっち冷静じゃなくなっちゃう癖があって。ごめんし」

「いえ、分かって頂ければそれで」

そう言って、一触即発だった雰囲気が和らぐ。

陽葵先輩は直情型の人間だけれど、悪い人ではないのだ。

「れおちー、ホームルーム終わったら時間取ってもらっても良い?」

れおちーとは!?

「あ、はい。それは構いませんけど、そんな短い時間で大丈夫なんです?」

「それもそうだよねぇ。それじゃ午後! ちょっちあーしに時間頂戴! この通り!」

両手を合わせて、拝むようにお願いをしてくる陽葵先輩。

この人の事を知っているだけに、断りにくいな。

チラリとリーシャさんの方を見ると、仕方ないわねって顔してる。

うう、申し訳ない。

「えっと、良いですよ」

「!! マジ感激だし! ありがとれおちー! それにリーにゃん!」

「リーにゃん!?」

「れおちーにリーにゃん、可愛いでしょ?」

「「……」」

この人は独特なあだ名で人を呼ぶんだよね。

ちなみに烈火の事はレカカって呼ぶ。

よく分からないセンスをしているのだけど、不思議と憎めないキャラなのである。

そして、ここ大事なんだけど……強い。

彰先輩に憧れ、自身も刀を学んだ彼女は……もはや見えないレベルで刀を振るう、神速の抜刀術を扱う。

その速度は彰先輩も認めており、自分よりもこと抜刀術においては上だと本人が言うほどである。

前提として、居合術と抜刀術は似ているが別物である。(同じと言う説もあるが、このゲームではそれぞれ別のスキルを覚える)

居合の場合、手口は守られる等、防御に秀でており、抜刀術の場合は手口は無防備になる。

つまり居合は攻守兼備なのである。

対して抜刀術は抜刀と斬る動作が同時であり、敵に太刀筋を悟らせずに一刀で勝負を決める超攻撃型のスタイルである。

陽葵先輩に斬られた敵は、斬られた事すら分からずに絶命するのだ。

二年生筆頭の名は伊達ではない。

「あ、言うの忘れてたし! あーしの名前は 結月(ゆづき) 陽葵(ひまり) ! それじゃ、また後でね! 皆ー! 騒がせてごめんし! チュッ! チュッ!」

投げキッスを振りまいて、二年生の教室へと帰っていく。

投げキッスの効果は抜群で、一部の男子生徒達は目がハートになっていた。

あれはファンクラブが出来るのも時間の問題だな。

すでに二年生の間ではあるはずだし。

「なんだか嵐のような人だったわね」

全くもって同感である。

最近、午後の予定がすぐに埋まるのなんでだろう。