軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話.本郷家へ

四時限目の授業が終わると同時に、元気な声が轟き叫ぶ。

「玲央ー! 居るかー!」

「おい本郷! ここは一年生の教室だぞ!?」

「分かってますよ先生。俺は玲央に用があって来たんですよ!」

「また榊か……お前は模範生なのに、変な奴にばかり絡まれてるな。榊よ、何かあれば先生に言うんだぞ。藤堂先生程の力にはなれんが、協力してやるからな?」

「そりゃないですよ先生!?」

「あ、あはは……」

彰先輩は先生達にも認められているリーダー格の生徒なのだが、その性格故に割とざっくばらんな対応をされている。

打てば響く人とでも言おうか。

裏表のない性格なのだ。

だからこそ、三年生皆から慕われている。

「すまねぇな玲央。待たせるのも悪いと思ってよ。ダチに転移魔法でここまで送って貰ったんだ」

そこまでする!?

しかもそれを簡単に行う友達、絶対超凄い人なんですけど!

「そ、そうですか。それじゃ、行きます?」

「おう!」

「いってらっしゃい玲央君」

「え?」

「うん?」

「「……」」

「行かないの、リーシャさん」

「……そんな捨てられた子犬のような顔をしないで頂戴。本郷先輩が誘っているのは玲央君。妹さんを救ったのも玲央君。今後私が呼ばれる機会があったとしても、それは今ではないわ。……本郷先輩が一緒なら、危ないなんて事もないでしょう? だから、行ってきなさい玲央君」

正論すぎて何も言えなかった。

俺は頭の中で、リーシャさんと当然一緒に行くものと考えてしまっていた。

これは少し反省すべき点である。

「良い嬢ちゃんだな玲央。安心してくれ、俺の大恩人である玲央を危ない目には絶対に合わせねぇと約束する」

「はい。玲央君の事、頼みます」

「おう! 任せてくれ!」

お父さんとお母さんかな?

俺そんなに頼りないですかね?

「それじゃ行こうぜ!」

「分かりました」

そうしてヴァルハラの外へと出る間に、

「本郷! この間はサンキュな! マジ助かったよ」

「おう、気にすんな。ついでだったからよ」

「本郷! 明日の実技参加してくれよぉ! 本郷が居ないと絶対負けるってばよぉ!」

「ド阿呆! 俺が居たら勝てるくらいの僅差なら、宗次に戦略でも聞いてこい!」

「本郷……」

等々、彰先輩への声掛けの数が凄い。

本当に慕われているのが分かる。

彰先輩に声をかけた後、不思議そうに皆俺を見るのだけど、何も聞いてこなかった。

一応軽く頭を下げておくと、皆苦笑しながら手を振ったり、同じように軽く会釈をして離れていった。

良い人には良い人が集まるのだろうか。皆気遣いのできる人達って印象だ。

「お、本郷。珍しいな、今日はもう帰るのか?」

「ええ。ちょっと用事があって」

「そうか。お前なら気を付けてって言葉は不要だろうが……」

「心配は嬉しいですよ。それじゃ、お先に失礼します」

ヴァルハラの警備員の方達とも親しげに話す彰先輩。

通常、ヴァルハラの警備員の方達は生徒達と話すことはないというのに、だ。

それは警備上の観点からだったり、色々な理由で基本的には話さないのだ。

それなのに、彰先輩には気さくに話しかけていたのが意外だった。

ちなみに、俺やリーシャさんがすれ違う時も無言だったよ。

俺に限らず、基本皆に対して無言だけれど。

警備員の方達は、基本的に生徒達より強い。

卒業生であったり、軍部から派遣される人達だからだ。

そこら辺が以前の世界とは違い、プライドもある方達というのもあるのだろう。

「さ、この階段を上がった先なんだが……」

「……」

彰先輩の家が神社である事は知っていた。

その階段を上った先に家がある事も。

だけど、これは……

「先が、見えない……」

「ははっ。皆最初はそういう顔すんだよな。3,333段あるらしいぜ?」

いや、これは1時間くらいかかるのでは?

「つーわけで、だ。乗れ、玲央」

「え?」

「お客様を疲れさせるわけにはいかねぇだろ? 運ぶのが俺でわりぃが、すぐに着くからよ」

「い、いや、俺も鍛えてますから!」

「おお、男だな玲央! なら、一緒に走るか!」

正直、俺はこの言葉を後悔した。

「ぜぇっ……ぜぇっ……」

「やるじゃねぇか玲央! まさか一度で登りきるなんてよ!」

『魔法のカバン』の疲労回復効果がなければ、無理だったかもしれない。

帰りは頼もう、うん。

しかし、彰先輩は汗一つかいていない。正真正銘のバケモンである。

「おーい! 帰ったぜ千鶴ー!」

「はーい!」

奥からドタドタと音が聞こえたかと思えば……紅白の色をした、巫女服姿の美しい女性が現れた。

綺麗な黒髪が、まさに巫女って感じで素晴らしい。

「お帰り兄さん。そちらが?」

「おう。お前を救ってくれた、玲央だ!」

「まあ! 初めまして、本郷 千鶴と申します。この度は本当に、見ず知らずの私の為に、貴重な物を頂きまして……感謝の言葉もありません」

深々とお辞儀をしてくれる千鶴さんに、慌てて言葉を返す。

「榊 玲央といいます。あ、あの! 気にしないでくださいね! 彰先輩にも理由を話したんですが……俺にも妹と弟が居るんです。俺にとって、妹は元気で笑っていてくれたら、それだけで良くて……彰先輩にとっても、きっとそうだと思って……」

「榊さん……」

「かぁー! やっぱ分かってんな玲央! そうなんだよ! 兄にとって可愛い妹はよ、元気で笑っててくれたらそれで良いんだよ! くぅ~! 他の奴に言ったらシスコンだとかよ! ようやく俺の気持ちが分かる奴と出会えて嬉しいぜ心の友よ!」

それなんてジャイアン? と思ったのを謝りたいくらいに、彰先輩は俺の事を気に入ってくれた。

スマホに咲と拓の写真があったので見せたり、三人で楽しく会話をしていると時間があっという間に過ぎる。

「っと、暗くなってきたな。玲央、帰りは流石に送るぜ」

「ご迷惑をおかけしますけど、お願いします」

「ちょっと待って兄さん、帰り『は』?」

「っ!?」

一瞬で般若のような顔になった千鶴さんへ、俺が慌ててフォローする。

「あ! 俺が自分で言ったんだよ! 彰先輩は最初から、俺をおぶろうとしてくれたよ!」

まぁ、事実である。

「そうでしたか……。でも、あの階段を登った事がない榊さんに登らせるなんて……兄さん?」

「い、いや、悪かったって。でもよ、階段を登るのは下半身の強化に良いんだぜ?」

「それをお客様である榊さんにさせるのは違うでしょう!?」

「その通りです……面目次第もありません……」

借りてきた猫のように小さくなる彰先輩に笑ってしまった。

やはり兄は妹に勝てないのか。

いや俺もね、普段筋トレしてるし、いけるかなぁっていう驕りがあったのは事実でして。

体力Sの俺でもキツかったのに、彰先輩はケロッとしてるし、基礎体力の違いをまざまざと見せつけられた感じだ。

ちなみに後から聞いたけれど、家族だけが使える転送装置があるらしく、普段千鶴さんはそれを使っているのだとか。

そりゃこの階段を毎日往復するのはキツすぎる。

彰先輩は毎日走ってるらしいけど、化け物か。

そりゃ強いはずだよ。

「榊さん、またいつでも来てくださいね。兄さん共々、歓迎致しますから」

「あ、はい! ありがとうございます千鶴先輩!」

「え?」

「え?」

千鶴先輩が意外そうな顔をして言うので、俺も言ってしまった。

「なんだよ、気付いてなかったのか千鶴。玲央は一年だぞ?」

「え、えぇ!? てっきり、兄さんと同じ三年生の方かと……ほら、兄さんって同級生の方からも先輩って呼ばれたりしますし。……そう、だったんですね。なら、少なくとも2年間はご一緒できそうですね榊さん……いえ、年下なんですから榊君って呼んじゃいますね?」

「あ、はい。それはお好きに……」

「ははっ! そんじゃ玲央、家まで送るぜ!」

「えぇ!? あの兄さんが!? 同級生を谷へ落とすくらい厳しいあの兄さんが!?」

どこの獅子ですかね?

「いや、兄ちゃんをそんな鬼みたいな事してるように言うのやめよ? 千鶴、玲央には良い先輩として映るようにフォローしてくれよ!」

「兄さんがぁ!?」

「うん、これ無理か。いや玲央、勘違いしないで欲しいんだが、俺は愛故にだな、仲間達を死なせたくねぇからこそだな、厳しくしてるだけであってだな……」

しどろもどろになっている彰先輩を見て、我慢しきれなくなって笑ってしまった。

当然だけど知っている。

自分が抜けた後も、仲間達の事を思う彰先輩のサイドストーリーがあった。

文字通り命をかけて、仲間の危機を烈火達と共に救いに行くのだ。

「ほらみろ千鶴、玲央に笑われちまったじゃねぇか」

「兄さんが悪いんです」

「なんでだよ……」

仲の良い兄妹で、触発された俺が家に帰ってから咲と拓をいつも以上に可愛がった事は言うまでもない。

「もうおにい、暑苦しい~!」

「兄貴!? 一体どうしたんだよ暑苦しいな!?」

滅茶苦茶嫌がられましたけど(悲)