軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

98話.学年対抗戦・vs二年生①

「爺さん、ここに居たか。ったく、目を離すとすぐにどっか行きやがるのは現役の時と変わらねぇな」

「誠也殿か。すでに退役した元軍人に寄ってたかってくる奴らが面倒でな」

「気持ちは分かるがよ。そんでこの場所に目を付けたってわけか」

「うむ。ここは良いな。選手達全てを 直(じか) の目で見れるからな」

「おいおい、爺さんの目で見れるのは魔力だけだろ?」

「その通りだ。そして、誠也殿が頑なに取らなかった弟子を今日ようやく見れると思い楽しみに来たのだよ。そして、見つけたと思ったのだが……違ったようで驚いたよ」

「玲央の事か。あいつは戦闘能力自体は大した事ねぇぜ? あくまで今んとこは、だがな」

「はは。あの魔力を有していて、戦闘能力は無い、か。何の冗談だと言うのか。そしてその言い分では、それ以外の力が優れていると?」

「おう。百聞は一見に如かずってな。ま、ここなら声も爺さんなら拾えるだろ? 俺は他の軍部の奴らの相手もしないといけねぇからよ、爺さんの位置も把握したしこれで行くぜ」

「そうか。そうだ誠也殿、弟子の名は?」

「あー、爺さんは何度か戦場で会ってるぜ?」

「む?」

藤堂誠也はその表情を破顔させて言った。

「リーシャ・エーデルハイト」

「!! 成程、あの娘か。誠也殿に認められる程に成長したと」

「さっき会った玲央と同じチームだ。楽しみが増えたろ?」

「ふはっ……素晴らしい。この年寄りの心臓が、久しぶりに高鳴っておるよ」

「ククッ……」

学年対抗戦の戦場を全て見渡せる校舎の上から、二人は見下ろしていた。

「いよいよだね榊君……! 僕、緊張してきたよ……!」

「大丈夫アイン、気負わなくて良いんだ。先輩達の胸を借りるつもりで行こう」

「ふふ、それでも勝つつもりなんでしょう玲央君?」

「だよなリーシャさん。こんだけ綿密に作戦考えてるとか思わなかったぜ玲央」

「フ……やるからには勝利を。そしてそれを成す為に幾百もの戦術を考えてくれた玲央に、俺達が出来るのは……ただ確実に実行するのみ」

「そうね! 大変だけど、やりきってみせるわ!」

「はい。やりましょう!」

皆気合は十分だ。

少し前の相手チームとの顔合わせで、予想通り二年生チームのキングは千鶴先輩だった。

他の役職は明かされていないが、ゲームではクイーンは陽葵先輩だった。

取る作戦も知っているが……油断は禁物。

とりあえずゲーム通りの対策を取るように皆には指示を出してある。

後は状況が変われば臨機応変に皆に指示を出すつもりだ。

「アイン、美鈴さん、美樹也、旋風さん。耳に魔法を掛けるからこっちに」

「「「「了解」」」」

四人に掛けるのは、俺の声が直接届くようにする魔法だ。

この魔法と似たスキルに『テレパシー』があるのだけど、こちらは声ではなく念じて届けるらしい。

俺の制御では五人が精一杯なので、前線を維持するポーンのリーダーであるアイン、それから超範囲魔法を使って貰うビショップのリーダー美鈴さん、そして個人で動いてもらう二人に直接声を届けるようにする。

そして最後に。

「烈火」

「おう」

「俺の制御では五人がこの魔法を掛ける精一杯なんだ。だから最後の一人は、烈火に掛けるよ」

「俺か? でもよ、それなら紅葉かリーシャさんのが良くねぇか?」

「二人には俺の大体の指示は伝えてるよ。後は臨機応変に二人にはやってもらうつもり」

「まぁ、俺はそういうの苦手だからなぁ……」

「そうじゃないよ烈火。そうじゃない」

「そうじゃない……?」

「俺に何かあった時。烈火が皆をまとめて欲しい」

「「「「「!!」」」」」

「俺からの指示が届かなくなった時。俺の声がなくなった時。その時は、烈火が前に出て欲しいんだ」

「!! 俺が……?」

「うん。烈火なら出来る」

そう、烈火なら出来るんだ。

元々俺がやる事は烈火がしていた事。

主人公である烈火が出来ないわけがない。

「俺も予測不能な事が起きる可能性はあるからね。藤堂先生が言っていたように、その時に皆をまとめ上げる存在が必要なんだ。それは、リーシャさんや紅葉さんも出来るかもしれない。だけど俺は、烈火が一番皆のリーダーを張れると思ってる」

これは、ゲームの主人公だからだけじゃない。

いつも遅くまで修練を頑張っている烈火。

それを皆知っている。

皆が烈火の強さを認めている。

事実、A組は俺達が勝ったのを信じられないという様子で見ていた。

それくらい、烈火の強さは皆に強く印象付けられているんだ。

俺の近くにはリーシャさんが常に居てくれたから、あまり目立つ事はなかったけれどね。

「……分かった。他でもねぇ玲央がそう言ってくれんだ。やってやるさ!」

「うん! 勿論、俺も簡単に敗れる事がないように気を付けるけどね!」

「はは、頼むぜ!」

そうして烈火にも魔法をかける。

さぁ、準備は整った。

案内放送が響くまであと少し、俺達は作戦の確認を最後までしておくのだった。