軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

69話.イベントに備えて

街の情勢を見るに、魔族襲撃イベントまでもう時間が無い。

はっきりとした日付は流石に分からないけれど、明らかに魔族の数が増えている。

俺は今まで甘えてきた。

モブだからと、戦いは皆に任せておけば良いと。

だけど、それじゃダメだと気付いた。

キング、指揮官。

皆の命を預かる大事な役目。

間違った指示を出せば、それが死に繋がる。

責任重大な役割だ。

そして……きっと皆は、俺を守る為にその命を掛けてしまう。

俺が守って死ぬのなら良い。いや良くはないんだけど……推し達や、クラスメイト達が俺を庇って死ぬよりはマシだ。

推し達やクラスメイト達が俺を庇って死ぬ……そんな事になったら、俺はきっと耐えられない。

だからこそ……俺も強さが必要だ。

リーシャさんも言っていた。俺は自衛の手段がいくらあっても良いと。

そしてそれは、結果的に仲間を守る事に繋がるんだ。

俺を守らなくて良ければ、攻めに行けるのだから当然だ。

ゲームに居たであろう本当のキングが誰だったのか、今ではもう分からない。

だけど、その存在はきっと、強かったはずだ。

だって、噂に聞いたキングの存在は、文武両道で一騎当千の強さを誇る最強の存在だ。

藤堂先生は全体を見る眼と指揮力が必要と言っていたけれど、それは最低限の条件なだけのはず。

俺は、強くならないといけない。

少なくとも、皆の足を引っ張らない程度には。

「にゃん(それで、魔力枯渇による最大魔力量の増加をしようというわけか)」

「うん。俺一人なら無理だったけど……幸い、マカロンが居るからね」

聖女のティナさんに指導した事を、今度は俺がする番だ。

俺の場合はポーションは要らないけどね。

「にゃ(良いか玲央。魔力を失うという事は、想像以上に辛い事だ。ゲームではキャラクターの痛みなど感じぬだろう。だが、今回するのはお前自身の体なのだぞ)」

「うん、分かってる。でも……」

「……にゃん(……そうか。決めているのだな。ならばこれ以上は言うまい。足りぬ分の補助は私がしてやる。クレハの時のように気絶せぬように耐えろよ玲央)」

「頑張るよ!」

そうして、俺は何度も気を失いながらも、最大魔力量を上げる為に『真鑑定』を使い続けた。

足りない魔力をマカロンに補ってもらいながら。

使った後の疲労感は相当なもので、全身が筋肉痛のように痛む。

『真鑑定』の熟練度も上がっていくが、一向に自身の魔力内で使用可能にならない。

一体どれだけの魔力量が必要なんだ、このスキルは。

ヴァルハラに行き、帰ってきた後は『真鑑定』を使う訓練を繰り返しているうちに……とうとう、イベントが発生した。

「すげぇな、ヴァルハラが完全に包囲されてるぜ」

「私こんなに多くの魔族を見たの初めてよ」

烈火と美鈴さんが窓の外を見ながらそう言う。

ヴァルハラは結界に守られている為、まだ魔族達は侵入しておらず、皆も警戒はしているものの、どこか安心している節がある。

けれど、この結界は一部破られて魔族達の侵入を許す事になる。

ただ、それを事前に伝えるわけにはいかない。

このイベントは皆にとって必要な事だから。

「「「「「……」」」」」

そう思って顔を上げると、烈火、美樹也、紅葉さん、美鈴さん、そしてリーシャさんが……俺の方を真剣な表情で見ていた。

「玲央。何か俺らに言う事があるんじゃねぇか?」

「!?」

まさか、烈火達に俺が未来を知っているとバレた!?

「お前はさ、きっとこの事を予測していたんだろ? みなまで言う必要はねぇさ。だからよ、命じてくれよ。俺達は何をすればいい?」

「!!」

烈火だけじゃない。皆、俺を見て頷いてくれる。

……俺は、馬鹿だ。

皆を信じているようで、どこかゲームでの皆を信じていた。

違うんだ。皆はもうゲームのキャラクターなんかじゃない。

俺の、友達だ。

俺の事を信じてくれている。

「……皆、ヴァルハラの結界は恐らく、破られる」

「「「「「!?」」」」」

「そうなれば、乱戦になって後手に回る事になる。この戦いは守るだけじゃ負ける。こちらから打って出る必要がある……と俺は思ってる」

あくまで、俺の予測という体は続ける。

これなら仮に違った展開になっても、俺の予測が外れたってだけで済むからね。

「へへ、つまり俺達は特攻隊ってわけだなっ!」

「敵大将を討ち取るという事か。面白い!」

「少数精鋭による一点突破ってわけね! 数の不利は明白だから、退路は無し……良いじゃない、燃えるわ!」

「ふふ……私達なら、なんとかできる……そう思います。私達には、一本の芯がありますから」

「そうね。玲央君、私達を導いて頂戴。私達は貴方の剣であり盾よ」

「皆……」

俺の話を疑う事無く聞いてくれて、その命を掛けてくれる。

俺は本当に……恵まれている。

「まずは藤堂先生の元へ行こう。全クラスの協力が必要になる」

「「「「「了解!」」」」」