作品タイトル不明
忍者ミッション
そして翌日の放課後。
学校のトイレで着替えた僕はこっそりと外に出た。
着替えたと言っても、全部制服の下に隠せるものばかりだけとね。
内容はというと……。
『隠れ身パーカー:【清潔維持】【消臭】【透明化】』
『静音靴下:【清潔維持】【消臭】【静音】』
『マッスルアンダー上下:【清潔維持】【筋力補正+5】【速さ補正+5】』
『改造制服:【清潔維持】【防御力強化+5】【武器隠蔽】』
『妖刀・風魔魂:【忍者】』
アイテムボックスでクラフトするとスキルが付くって言ったけど、素材を余計に消費すればある程度意図したスキルを取り付けることができるし、さらにこのスキルを取り外して保持しておいて他の物をクラフトする時に取り付けたりすることもできる。
もちろん、高度なスキルになれば必要な素材もレア度の高い物になるのだけど、今回の物に関してはアイテムボックス内にあるものでなんとかなった。
普段からいろんなアイテムを溜め込んでいる姉のおかげだ。
あれで整理整頓もできたら……。
いや、それができてたら僕が必要とされなかっただろうから、これで良かったのかもしれない。
いまとなっては、の話だけどね。
そうそう、最初は隠れ身パーカーとマッスルアンダーだけだったんだけど、妖刀・風魔魂をもらったので、隠して持ち歩くために制服を改造して【武器隠蔽】を付けることになった。
内側に細長い内ポケットがあるんだけど、そこに入れると自分でも脇差サイズの物がそこにあるってわからないぐらいだ。
異世界のスキルってすごいな〜。
「よし」
【透明化】の効果時間は昨日のうちに実験して理解している。
トイレを出て、静丸を探す。
まだ職員室にいた。
机に座ってなにかをやっている。
職員室が見えるところに移動して、そこで静丸が仕事を終えるのを待った。
その間も誰かに声をかけられたくないので、【透明化】は使っておく。
効果時間が切れる十分前になるとバイブ機能で知らせるようにスマホを設定して、シャツの胸ポケットに入れておく。
ここならバイブの震動にも気付ける。
静丸が仕事を終えて学校を出た。
【透明化】のまま追いかける。
静丸が車で来ていないのは知っている。
電車に乗って二駅で降りると、そこから十分ほど歩いたところにあるマンションに入っていく。
オートロックは静丸の後に続いて抜けて、エレベーターにも滑り込む。
そのまま部屋の前に着く。
鍵を取り出し、鍵を開け、部屋のドアを開ける。
いまだ。
グッと手にしていた鞄を引っ張り、床に落とした。
さらに拾いにくいように蹴って遠くに滑らせる。
「なんなんだ」
静丸はなにが起きたのかわからない。
ただ、僕が見えていないのだし、なにかの不運が起きたと思ったのだろう。
イライラした様子で鞄を拾うためにドアから離れる。
その隙に、僕はドアを開けて中に入った。
靴は脱げないけど、仕方がない。
独身者用のマンションだったようだ。
玄関を抜けてトイレ、風呂、洗濯機があって、扉を抜けるとダイニングキッチン。
さらに奥に寝室兼私室がある。
狭いので難しいけれど、邪魔にならないところで待っているとブツブツと言いながら静丸が部屋に入ってきた。
静丸は家に帰るとまず着替えた。
風呂に入ってもいないのに下着も含めた全てを脱ぎ、それらを洗濯機に入れて洗濯を始める。
スーツやスラックスなんかのすぐ洗えないものはブラシで汚れを払い、きちん畳んでからハンガーに引っ掛けた。
なんか性格が出ているって感じだ。
だけど僕もこんなところがある。
つまり僕も、静丸みたいになる可能性がある?
……いや、そんなことを考えるのはやめよう。
地面に落とした鞄の手入れまでしっかりとやったので、けっこう待たされてしまった。
スウェット姿になった静丸は、それから私室に入り、PCデスクの前に座った。
鞄の中はバッグインバッグを使っていたので、手入れの時にそれが取り出されているのだけど、それからなにかを取り出した。
可愛らしい柄のシャーペンだ。
「ふっ」
静丸は口元を緩めてそれを眺めてから、PCデスクの引き出しを開ける。そこには百均ショップにありそうなクリアポケットがいろんなサイズで収められていた。
シャーペンが入るクリアポケットを選び、それに収めると今度は名前シールを取り出し、それに名前を書き込んでクリアポケットの表面に貼った。
静丸の名前ではない。
女子の名前だ。
たぶん、このシャーペンの持ち主の名前だろう。
「ふ、ふふ……」
PCデスクの後ろにベッドがあり、ベッド下に置かれた収納ボックスを引き出す。
そこにはボックスが半分ほど埋まるぐらいの、クリアポケットに収められた様々な小物があった。
文房具だけでなく、髪留めとかリップとか、なにかは知らないけどドラッグストアで見るペン型のとか、そういう物がたくさん入っている。
その全てに名前シールが貼られている。
「ふ、ふふふ……」
気持ちの悪い笑みを浮かべながら、静丸はそこに新たな戦利品を放り込む。
いままでのきちんとした性格からは少しズレた、雑な置き方だった。
だけど、それが静丸を興奮させているのはたしかだった。
しばらく見たくない時間が始まったので、僕は目をそらしたままスマホのカメラだけをそこに向けた。
ことが終わると、静丸はスンとした表情でそのまま風呂に向かっていく。
いまだと、行動を開始する。
シャワーの音が聞こえたところで、玄関から部屋の中をスマホの写真で撮っていき、最後にあの収納ボックスの中身を何枚も撮った。
僕の影なんかが映らないように気を付けつつ、いろんな角度で撮り終わると静かに部屋を出た。
さすが鍵を閉めるのは無理だった。
あの几帳面な性格からしたらそのことを疑いそうだけど、疑ったとしてももう遅い。
それからさらにマンション周りの写真も撮って必要なものを揃えると、電車に乗っていつもとは違う駅で降りて、そこのコンビニでさっきの写真を全てプリントし、百均ショップで必要なものを揃えて帰宅した。
次の日、出来上がったものを昨日の装備で校長室に忍び込み、机の上に置いた。
それは写真を入れておくフォトアルバムだ。
写真を一枚一枚スリットに入れるタイプで、上手く使えばパラパラ漫画のようにできる。
そこには静丸のマンションからエレベーターを使って部屋の前に到着し、部屋の中に入り、そしてあの収納ボックスを開けて中身を見るところまでの写真が入っている。
訝しげな顔でフォトアルバムを見ていた校長は、最後の部分で目を剥くことになる。
いろんな女の子の名前が貼られた小物たち。
その薄気味悪い光景の中央に雰囲気の違うものが置かれている。
それは静丸の教職員証だ。
しっかりと千館高校と静丸の名前、顔写真も写っている。
バッグインバッグの中にあったものを拝借して、写させてもらったのだ。
写真の意味がわかってきたのか、校長に慌てる様子が見られた。
僕はそれをたしかめると、タイミングを見計らって校長室から脱出したのだった。
これで静丸がどうなるかはわからない。
罰されるかもしれないし、真実を握り潰されるかもしれない。
握り潰した時は、静丸のアレなシーンと、校長が僕が置いたアルバムを見て慌てるところを収めたビデオを出すだけだ。
姉の遺体に関する情報はなにも手に入らなかったけど、とりあえず学校に潜んだ変態は一人、片付けることができたと思う。