軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

堂城さん交渉する

「私も行くわ」

カツ丼を上品に食べながら米粒を頬に貼り付けるという上級テクを見せつけて、堂城さんは言った。

ちなみに真白も同じところに米粒がある。

親子かな?

親子なんだけどさ。

もしかして、堂城さんはわざと娘と同じ状態にしていたりする?

「莉菜さんの遺体を取り戻す手伝いができるなら、光栄なことよ」

「はぁ」

なんだかやる気な堂城さんの同意を得て、僕は彼女から封筒を返してもらった。

「ああでも、まずは交渉が必要ね」

「交渉?」

「手紙を持ってこう伝えて『前向きに検討したいので口頭で説明できる者を派遣して下さい』と」

堂城さんに言われるままに封筒を持って言ってみると、玄関のチャイムが鳴った。

ドアスコープで覗いてみると、以前にも見たフードスーツの人が立っていたので開けて応対する。

「お望み通りに参りました。説明をいたしますが中に入らせてもらえませんか?」

「いいえ、そこでしましょう」

僕がなにか言うよりも早く堂城さんが答える。

「あなたたちも適切な距離を持って対応してもらわないと」

「失礼。我々が契約しているのはリファリナ様であり、こちらでの代理人が尾羽亮哉様であります。尾羽様、交渉権を堂城香澄様に委ねられますか?」

まだなにも言っていないのに堂城さんの名前まで知ってる。

堂城さんのことを前から知っていた?

それとも異世界の姉と契約できるような連中にとって、個人情報はないようなものとか?

「あ、それでいいです。……とりあえず今回の仕事に関しては」

僕も慎重にそう答える。

完全に交渉権を堂城さんに与えた場合、今日以外の件でも堂城さんを巻き込むことになるかもしれない。

言葉選びには気を付けないと。

フードスーツさんの表情は影に隠れてわからない。

「かしこまりました」

ただ、その声はあくまでも丁寧で、そして平板だった。

「まずは依頼内容に関して、より詳細な説明を求めます」

と堂城さんが言ったところで交渉が始まる。

そうして依頼内容がより詳細になった。

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仕事内容『GWを利用した短期調査』

報酬『情報(以前にご提案いただいた案件に関係します)

指定期間『5月3〜6日』

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これが。

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仕事内容『概要:●県近海にある無人島に出現した洋館の調査/報酬加点ポイント:洋館の出現元の世界が判明する情報or物品/洋館に潜在している世界侵蝕危険物の駆除』

報酬『尾羽莉菜の断片化した遺体の所在地、または所有者情報(報酬加点ポイント次第で最大二つ)。ただし報酬がそれに満たない場合は現金払い(百万円固定)。ポイントの持ち越しはなし』

指定期間『5月3〜6日(片道3時間。船の都合で最低1日は滞在することとなる)』

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こうなった。

こんなにも詳しくなるものなのかとびっくり。

交渉って偉大だ。

その代わり、ここまで情報を引き出した段階で、僕たちは最低1日はこの島に行かないといけなくなった。

行って帰ってくるだけで百万円もらえる話になっているんだから、十分においしくはあるんだけど……。

堂城さんや真白の表情を見る限り、それは甘い考えみたいだ。

あるいは二人はお金持ちすぎて、百万円程度で感情が動くことはないのかもしれない。

「それでは出発は5月3日の早朝。船が参りますのでどうか遅刻のないようにお願いします」

フードスーツさんはそう言って帰っていった。

市内のフェリー乗り場に迎えの船が来るということになったのだ。

「ここまで話が進んでおいていまさらだけど、堂城さんはよかったの?」

僕はここまで情報がなくても行く気だったし、真白も僕が行くならそうするつもりだったんだろうけど、堂城さんは本当によかったんだろうか?

「旦那さん無視で勝手に決めたけど、大丈夫?」

「それならもう報告したので大丈夫よ」

と蛇神な旦那さんこと堂城清十郎さんとのやりとりを見せられた。

『莉菜さんの断片を探すために5月3日より義息子と行動します。%&%$案件です』

『勝利を。最大限の加護を念じよう』

文章はこれだけ。

あとは延々と頑張れ系のアニメスタンプが貼り付けられている。

え? それが『加護を念じる』じゃないよね?

後、なんか『案件』の前の文字が読めないんだけど。知らない言語で書かれているとかじゃない。視覚に強制的にモザイクが入って見えなくなってる。

「いまさらなんだけど、堂城さんはあの人たちがどんな存在か知っているの?」

「非常識な存在よ」

うん、そんなことはわかっているんだ。

異世界転生した姉となんらかの契約をしていて、そしてこっちにいる僕と話をしているんだからさ。

堂城さんたちも日本では神と呼ばれる存在だったり、あるいはそれに等しい霊力? を持っているんだろうけれど、それでも異世界に行くとかは出来ないんだろうし。

だって、できているならとっくに姉のところに行っているだろうしね。

「非常識だけれど、私たちに積極的に害をなす存在でもないわ。……そうね、コレクターとでも思っていればいいわ」

「コレクター」

収集するのが趣味?

だから前の時も呪物っぽい怪しい物品を僕に拾わせたのかな?

「契約の中に収まっている限りは安全な存在よ。ただ、善意とかそういう曖昧で感情的なものは期待しない方がいいわ。生きていればそれでいいでしょと、人間以外のなにかの姿にされて戻されることだってありえるかもしれないのだから」

「気を付けます」

それはたしかに怖い。

肝に銘じることにした。