軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

話し合わせ

堂城さんのすごい力で終わらされてしまった。

ちょっと消化不良な感じ。

しかし、真白を無事に救出できたので、それはまぁよしとしよう。

それより問題がある。

僕のこの姿だ。

堂城さんや断鬼の人たちには、姉のことなどは話していない。

つまり、このスーツのような明らかに異常なものの存在は見せられない。

それの説明をするとしたら、そのまま姉の異世界転生のことにまで話が及んでしまうからだ。

秘密にしたいと思うのは僕の勘みたいなものなんだけど、堂城さんとその夫の清十郎さん……二人のどちらからも姉に対してはなにか言葉にしにくい執着があるような気がする。

特に清十郎さんは強い。

あの二人が異世界転生のことを知ってしまったら、どうなってしまうかわからない。

だけどこのままでは、状況を確認に来るだろう断鬼の者たちに僕たちのことを見られてしまう。

見られれば、説明を求められてしまう。

どうする?

なので、対策を考える。

その一。

スーツの変身を解いて被害者ぶって二人でここで待つ。

たすけに来たけど、色々あってピンチだったので堂城さんの攻撃は本当にたすかりましたという言い訳だ。

「でも、その言い訳は通用するでしょうか?」

と真白がスーツの中で鎌首を傾ける。

「だって、本堂をこんなに破壊していたのにピンチって」

「ダヨネー」

僕もそう思う。

その二(修正案)。

たすけに来た僕も捕まってピンチだったところを謎の存在が襲撃。

僕と真白が一緒に逃げ出したところに、堂城さんの超常アタックがやってきた。

「これなら実際に戦った存在のことは知らぬ存ぜぬできる」

「そもそも、旦那様がどうやってここを見つけたのかと移動の速さの説明ができていませんが?」

「むう」

真白もちゃんと冷静だなぁ。

それはわかっていたけど、そこはもうどうしようもない。

「もういっそ、旦那様が到着していないことにするのはどうでしょうか?」

「それはいや」

「ええ……」

「そんな情けないのだけはいや」

いなくなって、ただ慌てふためくだけなんて、もう二度とごめんだ。

「ふふ」

「なんだい?」

「旦那様って冷静そうだけど、意地っ張りなところもあるんだなって」

「……ああ、うん、そう?」

ううん、なんかこそばゆいな。

「……このクソ寒いぃぃ中でぇぇ……見せつけてくれるなぁ」

声が聞こえたのでそちらを見れば、月丸だった。

ほとんど氷漬けになっているような状況の中でほんのわずかに凍っていない部分から目でもある触覚が伸びてこっちに向く。

そんなことをするからすぐに凍りついてしまっているけれど、声はまだ聞こえてきた。

「断鬼の連中にぃぃ……その格好を知られたくないんだぁぁ? ならぁ、手伝ってやるからぁぁ」

「まさか、交渉してくる気か?」

「その通りぃぃぃぃ」

「都合のいいことを」

「断鬼とやり合うのはぁ、前から決まってたぁぁ。お前の嫁を狙ったのはぁぁ、都合良く里から出てきたのがわかったからぁぁ」

敵が勝手に隙を見せたと言いたいのか?

その言い分に理解できる気がしてくるのが困りものだ。

「まぁいいや」

「旦那様?」

「それで、僕たちの秘密を守る代わりになにを求める?」

「庇護だぁ」

「庇護?」

「斜九字全体じゃないぃ。ボクのぉ一部だけを」

「自分だけたすかるつもりなのか?」

その言葉に嫌悪感を抱いた。

「旦那様」

「なに?」

「ナメクジはあまり知られていないですけど、多産の属性があります。神性を得ることができれば多産と健康の加護を与える存在になることでしょう」

「うん」

そうなんだ。

で、なんでいまそれを?

「ナメクジは雌雄同体で一匹でも増えることができます」

「ああ」

そっちの説明の方がわかりやすい。

「つまり、分体の一つでも生きていれば、いずれ斜九字は力を取り戻すかもしれないと?」

「はい」

「ううん」

迷惑の種を残しておきたくはない。

できることならこのまま消してしまった方がいい気さえする。

だけど、このままだと僕がここにいることの説明ができない。

「旦那様」

「うん」

「ここはましろにお任せください」

「え?」

驚いていると、僕の周りでなにかが動いた。

でも、それがなにかわからない。

わからないけど、なにか大きなものが動いたのだけはわかる。

「母様のおかげで、ここは断鬼の結界となりました」

真白の声が二重で聞こえる。

いままで通りのスーツの中と、外からも聞こえる。

どういうことだ?

よくわからないけど、真白が外にもいる?

そう思っていると、ぼんやりとだけど見えた。

半透明の巨大な蛇が鎌首をあげて氷漬けになった月丸に近づき、噛みついた。

その牙を突き立てて、そして離れる。

牙が抜ける時、小さなものがその表面張り付いているのがわかった。

ナメクジか?

「私の毒を入れました。あなたが私たちを裏切る時、その毒は瞬く間にあなたの全てを侵し、腐らせます」

「神ぶるぅぅ」

噛まれた月丸は悔しそうだ。

「妖に堕ちたのはあなたたちのせいでしょう。断鬼だけを恨んでもどうにもなりません」

「ぐうぅぅ」

「そして、噛みついた時に牙にナメクジが一匹張り付いていたとしても仕方ないことです」

「大丈夫なのかい?」

三すくみの影響とかで悪いことにならないのか?

「全体としての影響は変わりませんけれど、この妖とましろとの間では、もはや三すくみは意味をなしません。このナメクジはましろの眷属として仕えることになります」

「眷属なら、裏切らない」

「裏切れば全身が腐って死にます」

なんとなくだけど、とてもいい笑顔で言ったような気がした。

それからはアリバイというか、話を合わせた。

僕は真白が捕まった後で、待ち構えていた月丸に捕まって、一緒にここに連れてこられる。

堂城さんたち断鬼を待ち構えていたら謎の勢力の襲撃を受けて混乱していたところで、超常アタックを受けて全滅したと。

氷漬けの月丸が生き残って尋問された時には、そう答えるということで話が決まる。

そうなったら……次は、覚悟を決める番だ。

スーツを解除して、この寒さに耐えなければ。

それが一番きつい気がするけれど、なんとか決心して解除した。

寒ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ…………。

真白は速攻冬眠に入った。

南極調査隊みたいな格好をした立花さんたちがやってくるのがもう少し遅かったら、矛盾脱衣っていう凍死前の状態になっていたかもしれない。