作品タイトル不明
月曜日の怖い話
日曜日も終わり、学校が始まる。
なんとなく忘れていたかったタチキ関係のことを思い出すと、少し気分が暗くなる。
なにしろ、このままだと行方不明者が出る。
厳里妹、柚木、with男子×3と、学校内だけでも五人が行方不明になるということになるのだ。
さすがに五人もいきなりいなくなったら話題になるだろうし、場合によってはニュース沙汰とかになるかもしれない。
連中の末路は自業自得だとしか思っていないけれど、そこから生まれる疑惑の目などが僕に向かってくるのは面倒だなと感じる。
そう思いながら学校に到着した僕は、校門の前で硬直した。
頭の中で考えていた五人が揃って校門を抜けていく姿を見てしまったからだ。
厳里と柚木の二人、その後ろに男子三人が仲良く喋りながら歩いている。
僕と目が合うと、五人全員が友好的な笑顔で軽い挨拶をしてそのまま下駄箱のある方向へと吸い込まれていった。
「どういうこと」
「彼らのことなら心配しなくていいわよ」
僕が呆然としていると、背後からいきなり堂城さんに話しかけられた。
振り返ると、校門の向こうに堂城さんを送ってきた高級車があって、ちょうど走り出すところだった。
「もう尾羽くんに変に絡んでくることはないわ」
「ええと……どういうこと?」
「彼らはタチキの者になったのよ」
「……どういうこと?」
「そのうちわかるわ」
なんでそんな意味深な言い方になるのさ。
「ええと、僕と同じってこと?」
「いいえ、あなたの方が上位だから彼らがあなたに命令してくるようなことはないわ。お願いならあるかもしれないけど」
つまり、僕みたいに蛇に見初められて結婚してるわけじゃないってことだよな。
それなら、どういうこと?
「ああ、そうそう。渡したい物があるから、帰りは一緒にしましょう。乗って帰ってもいいわよ」
「はぁ、それはありがたいけど」
なんか、急に距離感がおかしくない?
「あなたはもう一族だから」
堂城さんがいままでとは違う笑みを向けて、先に行ってしまった。
そしてそれを、多くの人に目撃されてしまった。
「どういうことなのかな?」
昼休憩に、僕は知らない男子たちに囲まれた。
「ええと、どちら様?」
「そんなことはどうでもいい。お前は、堂城さんとどういう関係なんだ?」
「どういうって……クラスメート?」
「ただのクラスメートが! どうして堂城さんからあんな笑顔を向けられるんだ‼︎」
それで僕は朝のあの場面を見られていたのだと理解した。
いや、朝の校門から下駄箱までの生徒がたくさんいるルートだったからね。
それは目撃者もたくさんいるよね。
「彼は私の親戚なのよ」
と、教室近くの廊下で囲まれていたのだから、すぐに気付かれたのだろう。
堂城さんが声をかけてきた。
「親戚?」
「最近になってわかったの。だから仕方ないのよ」
「そ、そっかぁ、親戚かぁ」
そんな感じで、僕は窮地? を脱することができた。
まぁ、真白との結婚? でタチキの一族になったんだから親戚なのは違いないのか。
しかし、あの男子たち(わずかながら女子もいた)は一体なんだったのか?
もしかして、全員が堂城さんに告白してフラれた人たちとか?
女子も?
まぁ、気にするのはやめよう。
僕もちょっと前に姉と堂城さんの疑惑を考えたしね。
それ以上のことはなにも起こらなくて、無事に放課後になった。
堂城さんと校門に行くと、もう高級車が待っていた。
もちろんご好意に甘えて乗せてもらった。
「では、これを持って帰ってください」
と、後部座席にあったスポーツバックを僕の隣に置いた。
「え? なにこれ?」
やはり高級車は座席の座り心地が違うと思ってすぐのことだった。
「真白の着替えなどです。普段は蛇の姿なので問題ないでしょうが、人の姿で出かける時には必要でしょう。サイズが変わったらいつでも言ってください。補充しますので」
「ええと、どうも」
「後、こちら真白用のスマホです」
スポーツバッグを開けて最初にあったのが、スマホの箱だった。
最新機種だ。
僕のよりいいな。
「ええと、サブスクはどうなってます?」
試しに聞いてみると音楽を一つと動画の有名どころは大抵課金されているそうだ。
「え? めっちゃ甘やかすね?」
「真白が退屈したらいけないし。これぐらいは普通です」
普通じゃないと思うなぁ。
「ええと、真白と清十郎さんは関係があったりするの?」
なんか待遇がいいんだけど、近しい関係だったり。
妹とか。
「娘です」
「はぁ、娘さん」
と言ってから「ん?」となった。
真白は五歳。
「え?」
「私の、娘です」
と、堂城さんはにっこり笑顔でまた言った。
「それって、つまり?」
堂城さんが産んだ。
それはまぁ、いいだろう。
世間的には婚約者がいるってことになっているけど、実際は結婚しているとか、そんなことはまぁいい。
子供を産んでいたとしても、別にいい。
団地の中には、明らかにあなたのお母さんはあなたを産んだ時は●学生だったよね? みたいな家族もいたりするしね。
そんなことはいいんだ。
真白は堂城さんの娘。
つまり……?
「あなたは私の義理の息子になるの」
にっこり笑顔のままの堂城さんがホラーだと思った。