作品タイトル不明
姉は冒険者
姉の尾羽莉菜は異世界転生してリファリナという名前になり、魔道学園に通っていた。
そこで王子様に狙われて乙女ゲーヒロインになりかけていたのだけど、悪役令嬢の逆襲を恐れて逃亡。
いまは他の国にまで逃げて冒険者生活をしているのだそうだ。
冒険者の生活はどんなものかと言うと、まぁ、web小説の異世界冒険者物を読んでいればだいたいOKという感じだった。
姉……リファリナは天才的な魔法の才能とアイテムボックスを利用して、活躍しているようだ。
そんな今日はどこぞの伐採の護衛と荷物持ちとして雇われ、大量の木材がアイテムボックスに積まれている。
エルダーシダという名前の木らしい。
「アキヤ〜その木、枝を落としといてね。で、枝はもらっていいらしいから」
「了解」
杉のように真っ直ぐな大木がいくつも積み上げられているのは圧巻だけれど、この空間にある限り重量はないも同然なので、ひょいひょい動かして鉈で枝を落としていく。
でも、こんな枝をもらってどうするんだ?
薪?
と考えたところで僕の中に入っていた知識が教えてくれる。
この葉っぱと花粉は薬になるらしい。
ただ、かなり古い書物からの知識らしくて、いまの人たちには知られていないらしい。
ちなみに、オプションとして与えられている知識や技術は姉とリンクしているので、姉が知らないことは知らないし、姉が作れないものは僕も作れない。
アイテムボックスに送られてきた大木はかなり多く、そして切り落とした枝の数もそれに比例する。
その枝から葉っぱと花粉をさらに分ける。
葉っぱは生でも乾燥でもどっちでもいいらしいので、そのまま素材棚におく。
花粉は瓶で密封にする。これはアイテムボックスから取り出した時のための処置だ。
で、この瓶はどこから現れた?
バケツと同じで勝手に現れたんだが?
と疑問はあるけど、そんな謎仕様はもう見ないふりをすることにした。
あれだよ。
ゲームで採取して液体系を手に入れた時、なぜか瓶に入ってたりするの。
ああいうのと同じ仕様なんだよきっと。
だって姉はこっちのゲームを知っているからな。
こっちのご都合主義的な部分を魔法パワーで実現させたんだよ。
だって無限の空間に時間停止なんて意味が不明すぎるもんね。
「アキヤ〜ついでにその葉っぱでお茶、花粉で丸薬作っといてくれる?」
「数は?」
「ん〜材料の十分の一ぐらい消費で」
「了解」
伐採作業は終わり、大木の追加が終わったらしい。
作る数ではなく消費材料の割合で答えたということは、明確な目的があるのではなく、なんとなくストックしておきたいという気分からの言葉だ。
クラフト区画に移動する。
そこは鍛冶場と理科の実験室……いや、ここは錬金術師の工房と言った方がいいのかな……それらが合わさったような雰囲気になっている。
時間停止した空間で燃え続ける紫色の火を燃やす炉があり、そこから少し離れたところに大鍋やらビーカーやら蒸留器やらが並んだテーブルがある。
残った枝本体は薪にするらしいので、炉の側に置いて乾燥させる。
この火を使うと時間停止空間でも加熱ができる。
枝を置き終わったら、次は松葉みたいな葉っぱから薬湯を作る。
携帯ガスコンロみたいなのに炉の火を分けてから、そこにフライパンを置いて葉っぱを炒る。
焦げない程度の弱火で青臭さがなくなったら終了。吸熱器という板の上に置いて、熱が冷めるのを待つ。
時間停止した空間では勝手に冷めるということはないので、こういうアイテムを使わないといけないのが面倒だ。
葉っぱから熱が取れたら、次はそれを手で折っていく。
包丁を使うと、金属臭が移って香りが悪い扱いになるらしい。
瓶詰めに使った瓶に適量を入れ、その後にお湯を注ぐ。
蓋をして終了。
普段飲みしてよし、薬としてもよしなので悩んだけれど、食品棚の方に並べることにした。
アイテムボックスから出した段階で時間が進み、湯の中に入った葉っぱの薬効が染み出てお茶になる。
普段飲みができるのだから、薬としてそこまで強くもない。免疫力を上げて風邪予防ができるぐらいらしい。
次は花粉団子だ。
丸薬とか言っていたけど、頭に思い浮かぶレシピはどう考えても団子でしかない。
向こうとの解釈の違いかもしれない。
こっちは花粉にだんご粉(市販品)と砂糖(市販品)を使って、普通に団子を作るように混ぜてこねていく。
ちょっとずつ水を足しながらこねて丸めてして、その後、一口大の大きさに分けてから鍋に湯を沸かし、その中で茹でて、水に移してから吸熱器で冷まして取り出して、完成。
ついでに、みりん、醤油、片栗粉、砂糖、水でみたらしのタレも作っておく。
うん、全部市販品だ。
どう考えてもここで作るより買った方が早いものとか、そもそも買わないと再現無理なものは市販品を持ち込んで利用している。
特に料理はそうだ。
ていうか、キッチンでやってもいいような物ばっかりだったけど、いまは夜だから時間を進めたくなかったっていうのもある。
睡眠時間を削りたくないので。
「うあああ、みたらし〜っ! アキヤありがとう!」
「どういたしまして」
出来上がったそれに歓喜する姉の声を聞いてから、今夜の仕事は終了。
俺もみたらし花粉団子と葉っぱ茶をもらうことにした。
花粉のせいかもちもちの中に粒々感があるけど、これはこれでうまい。
葉っぱ茶の香りはいい匂いのする木って感じだけど、うん、まぁ美味しい。