軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

箱入り蛇

箱の中にいたのは白蛇だった。

大きさは十センチ程度の小蛇だ。

「ああ……ええと」

小さな蛇は頭を持ち上げて、赤い瞳を僕に向けている。

見ている、よねぇ。

「もしかして、僕を蔵みたいなところから出してくれたのは君……だったりして?」

って言ったら、すごい勢いで頭を上下させた。

予感がして言ってみたんだけど、まさかの的中だ。

あの時は人の姿っぽかったけど、蛇だったのかぁ。

「ええと、また人の姿にはなれる?」

頷いて、そして首を横に振った。

「それは、いまは無理ってこと?」

頷く。

「なら、近いうちには人の姿になれるってことでいい?」

また頷く。

「じゃあ、詳しい話はその時でいいか。ご飯はどうする? ええと、生肉? 料理?」

左手が生肉、右手が料理って感じにしたら、左手の方に首を向けた。

「生肉か。鳥、牛、豚だったらどれ?」

今度は三択、左手、真ん中、右手って感じにしたら鳥を選んだ。

「鳥ね。じゃあ……あっ、そうだ。ここで起こることは秘密だよ。タチキの方にも僕の許可なく話すことは禁止。守れる?」

念の為に確認すると、白蛇はしばらく悩んだ後でゆっくり頷いた。

上から圧をかけられたら喋りそうだなと思ったけど、まぁ、その時はその時か。

「じゃあ、ちょっと待ってて」

と僕は机の上に白蛇を残して自分の部屋からアイテムボックスの領域に入る。

さて、ご飯をどうしようかと考えていると、大量の魔物がアイテムボックスの中に放り込まれた。

なにこれ?

あっ、蛇か。

ツヤツヤした真っ黒な大蛇。

僕なんか丸呑みしそうな大きさなんだけど。

ええと……ブラックサーペントね。

これが一、二、三……二十以上はめんどくて数えるのはやめた。

だっていまだに増え続けてるし。

「姉ちゃん、これなに?」

「あ、アキヤ。解体よろしくね。いまね、蛇退治してるんだよ」

そっかぁ。

蛇退治かぁ。

「全部解体していいの?」

「いいよ。あっ、皮は売ったりもするから綺麗に剥いでね」

「鋭意努力しますよ」

帰ってきたばっかりで疲れてるんだけどな。

でもまぁ、ここにいると疲労とかあんまり感じないし……がんばるか。

というわけで五十匹以上のブラックサーペントを解体した。

頭と肉と皮と骨。

頭には毒袋とそれに繋がる毒牙がある。

「なんでこんなに大量?」

「村の近くの森に地割れが起きたから調査してくれって依頼だったんだけど、まさかの蛇の巣、もうびっくり」

「はぁ」

ほんと、出不精な陰キャの姉がどうして外に出る冒険者なんてやってるんだか。

「そういえば、姉ちゃんって本当に堂城さんと知り合いじゃない?」

「ええ? またその話? だから私があんな美人と知り合いになるわけないじゃない」

「ふうん。ならいいんだけど」

嘘を吐いている感じはないかな?

なら、本当に覚えてないってことか。

「そうだ。蛇皮が大量に手に入ったんだし、今度はこれで服とか作ったら?」

「蛇皮って、ヘビーすぎる」

冗談じゃないぞ?

本当だぞ。

「そう? 軽くて防御力に優れてるわよ」

そして姉にスルーされる。

気付いた自分だけが恥ずかしい。なんて自爆。

仕方ないので知らないふりで話を進めていく。

「こっちの世界で防御力を求めてどうするのさ」

「ああ、それもそっか」

「……まぁでも、なにか作ってみてもいいかもね。使うかどうかはわからないけど」

「うんうん。素材は余ってるから、どんどん作りなさい。そしてスキルレベルを上げて、お姉ちゃんに貢献するんだよ」

「はいはい。じゃあ、俺はそろそろ晩飯を作るよ」

「なに作るの?」

「ううん。唐揚げかな」

この前も作ったような気がするけど、口の中が鳥肉の気分になってるので仕方ない。

唐揚げ(コカトリス)だけど。

鳥肉には違いない。

「あれ? その蛇肉使わないの?」

「いやあ、蛇はまだレベルが高いかな」

それに外で白蛇が待っているのに、蛇肉を食べるのはなかなか……。

うん、猟奇的な気がしてくるな。

「まぁいいけどね。じゃあお姉ちゃんの分もよろしく!」

「姉ちゃんは作り置きを勝手に取って行ってもいいんだけど?」

ファイアブルの肉もたくさんあるのに、こんなに蛇肉増やしてさ。

「そんな冷たいことを言わないで! 泣くよ!」

「泣くなよ。わかったよ。じゃあ姉ちゃんも唐揚げ定食ね」

「よろしく!」

そんなわけで二人分の唐揚げ定食を用意し、それとは別に 鳥肉(コカトリス) の肉を白蛇の一口分ぐらいで切って小皿に山盛りにする。

「なにそれ?」

「んっ、ちょっと……ペットができたから」

「バレないようにしなよ」

「わかってる」

一応、団地はペット禁止なんだよね。

こっそり犬やら猫やら飼ってる人もいるけどね。

「じゃあまた後で」

「はーい」

という感じでアイテムボックスを出た。

「おまたせ」

と唐揚げ定食と鳥の生肉を乗せたトレイを持って戻ってくると、白蛇はびっくりしたようにピンと直立した。

びっくりしてる?

ああ……。

「ええと、もしかしてだけど、僕がそこの……」

と、僕が戻って来た辺り、かつて自室の壁があったところを指差した。

「壁に立って、振り返ったらいきなりトレイを持っているように見えた?」

と聞いてみると、白蛇がブンブンと頷いた。

なにこれ。

ちょっと面白い。

そっか。

他の人にはアイテムボックスのことは見えていないのか。

白蛇を人と表現するのはどうなのかって話だけど、あの時チラッと見えた姿になれるなら、人でもいいかなって思う。

「まぁ、僕にも秘密があるってことだよ。だからタチキの人たちに話したらダメだよ?」

と、もう一度念を押す。

白蛇は頷いた。

「よしよし、じゃあご飯にしよう」

そう言って、箸で摘んだ生肉を箱の中の蛇の前にやった。

「ほれ、お食べ」

白蛇はちょっと悩んだ様子で頭を動かし、それから生肉に噛みついた。

「っ!」

びっくりしたようにピンとまた直立。

その後、すぐに生肉を飲み込んだ。

「美味しかった?」

聞いてみるとコクコク頷いた。

「それはよかった」

と、次の生肉を摘んで持っていくと、今度はすぐに噛みついて、飲み込んだ。

小皿に乗せた生肉を全部しっかりと食べて満足した白蛇が木箱の中でグデっと伸びるを確認してから、僕は唐揚げ定食を食べ始めた。

うん、美味い。

唐揚げは揚げたてと冷めてからでは別の味わいが楽しめるよね。