軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タチキの謎とビキニアーマーの完成

姉に相談はしなかった。

アイテムボックスに入ると、姉に「転けて顔を打ったから回復ポーションちょうだい」と言ってからポーションをもらって飲む。

これはマスカット味だった。

飲むたびに味が違うのはなんでだろう。

前に飲んだのは、料理している時に包丁で指を切った時だった。

あっという間に傷が無くなるのは不思議な感触だ。

今回も頬や頭皮の痛みがなくなったので鏡を確認すると、腫れが引いている。

抜けた髪の毛までは治ってないだろうけど……ハゲになってないかな?

大丈夫っぽい。

よかった。

自分の中の凶暴性がぐわっと出てきたあの感触は、少しの爽快感とけっこうな後味の悪さとなった。

いや、ああでもしないと逆にどこまでされたのかがわからないからね。

正当防衛だったとは思ってるし、間違っていないと信じている。

ただ、あの後で出てきたおじさんはなんだったのか?

お嬢さんって言ってたし、その後に走り抜けた高級車はたぶん堂城さんのところのだったし。

そして厳里兄妹の運命は?

タチキ。

謎だ。

とりあえずスマホで検索してみると、市内に昔、立木村というのがあったという情報を見つけた。

昔にあった統廃合で住所としての立木村はなくなり、巣馬子町になっている。

ううん。

考えたけどよくわからない。

とはいえ集中力が乱れてしまい、鉄と向き合う気持ちにもって行くまでに時間がかかってしまった。

とはいえ……アイテムボックスの中は実時間が経過しないので、大きな問題でもなかったのだけど。

「なぁ、姉ちゃん」

「なに?」

「僕、すっごく筋力が上がったんだけどさ」

「そりゃあ、あれだけ鉄を叩いていたらね」

僕の報告に姉が笑う。

「僕の体……まぁステータスが変化するならさ。年齢まで変化したりはしないの?」

「……」

「姉ちゃん?」

「大丈夫、じゃないかな」

「微妙な反応じゃない?」

「まぁ、こっちの異世界にもアイテムボックスはなかったからね。お姉ちゃんが最初に作ったから、これから色々と検証をしないといけないわけなのよ」

つまり、はっきりしたことはなにもわからないってことか。

「とはいえ、老けたなって感じたことある?」

「まだないけどさ」

「なら、たぶん大丈夫だよ。むしろ肉体に魔力が満ちて、若返るまであり得るんじゃない?」

これ以上若返るのはいいかな。

そんな話をしている内に鉄を叩くのに集中できるようになった。

今回はいろんな防具……だけじゃなくて、鉄を色んな形にしていく経験値を貯める意味で金属細工のものを色々作っていく。

メインは鎧とか盾なんだけど、思いついたものを色々と作ってみる。ものを引っ掛けるフックとか、金属製のパイプとか、網棚とか。馬の像とか。

なんか流れでパイプと網棚を組み合わせて自分の棚を作る奴ができてしまった。

いや、いらないから溶かすけどね。

そうやって金属の形を整えるのに慣れた頃……。

「そうそう。デザインできたから渡しておくね」

とアイテムボックスにデザイン画が入ってきたので見る。

ただのビキニアーマーじゃなくて、踊り子がつけているような半透明な布、シフォンベールっていうんだっけ? そういうので飾られている。

シフォンベールや繋ぎの革製品は姉が作るというので、僕は金属部分を担当する。

ちゃんとパーツ毎に細かい数字も記載されているので作りやすい。

「姉ちゃん、これってさ」

「うん」

「ヴァレンナさんに頼んで測ったの?」

めっちゃ微細な数字が書き込まれているんですけど?

SMLみたいな曖昧なサイズ感じゃない。

一流のテーラーが個人のためにスーツを作るみたいな細かさじゃない?

こんなのその人の体を使って計測しないと無理でしょ。

「ううん?」

「じゃあ、どうやって?」

「うちで酒飲んで潰れた時に内緒で測った」

「うわぁ」

それ、本当にバレなかったのかな?

「アキヤ、鉄叩きに必死になってたから気付かなかったけどさ。お姉ちゃんも色々とがんばってるんだからね」

「はいはい」

まぁいいや。

ヴァレンナさんが本当に気付いてなくても、知らないふりをしているんだとしても、僕は注文通りにパーツを作るだけだ。

いや、それにしても……。

「でかいな」

胸のパーツの数字を見るに、すごいボリューム感がありそうなんだけど。

「……」

まぁ、どうせ僕は見れないんだからいいけどね。いくらだろうと。

そういうわけで一生懸命作った。

完成品にはスキルが付くのだけど、僕が担当したのはパーツだけなのでそこにスキルは発生しない。

なにより、僕だとまだランダム性が強すぎる。

その点で、姉はある程度アイテムに発生するスキルを操作できるそうなので、任せることになる。

……このアイテムボックス内には、まだ僕に見えない物も存在しているという。

僕がまだ未熟で扱えないから、下手に触って変化が起きないように、見えなくされているらしい。

ゲーム的に言えば自動で対処できない部分ということになるのだろうけれど、僕がこうやって自分で能力を上げていけば、やがてはそれらも扱えるようになるのかもしれない。

というか!

見えないものが未整理でどこかに山積みになっているという事実が耐えられない。

あの姉が整理するなんてできるわけがないのだから!

作った金属パーツは肩当て、胸当て、胸当て背中部分、左右の腰部分、股部分、そしてブーツとなる。

ブーツは可動域を確保するためにこれもいくつかのパーツに分かれているのだけど、ほぼほぼ僕が担当した。

肌に触れる部分には内側にまず皮を張り、鎧ずれ対策の処置などしながらもう一枚貼り付ける。これは季節毎に変化できるようにする。夏ならなるべく通気性が良くなるように麻布だったり、冬は暖かいように柔らかい毛皮にしたり。

パーツを完成させてからは完全に僕の手が離れてしまったので、鍛冶屋ジョブの修行をしている間に減ってしまった作り置きの補充に勤しむことにした。

向こうではそれなりに時間が過ぎてしまったのかな。

けっこう減ってる。

それでもファイアブルの肉は大量にあるんだけど。

いっそ売ってしまったらいいんじゃないかな?

金属ダンジョンで手に入れた他のドロップ品とかも溜まってるな。これも整理しないと。

そうこうしている間に、ビキニアーマーが完成した。

『神舞士の鎧:【防御力強化+10】【速度補正+10】【戦士判定補正+10】』

「なんだろう? 最後の戦いの時に使う装備?」

「あははは〜さすがにそこまでじゃないでしょう」

なんて姉は言っているが、どうなんだろう?

あっちの価値観がわからないからなんとも言えないんだけどさ。

+10ってたぶん、つけられる数字のマックスだと思うんだよね。ジョブレベルの上限も10っぽいし。

その+10を当たり前に揃えられるって……姉ってけっこうチートなことをしているんじゃなかろうか?

……まぁ、それぐらいじゃないと安心して見ていられないか。

こっちからは話せるだけなんだし。