軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暗闇に落とされました。

「ハル様。エイバル王は打倒し、これで目的を果たしました。あとは、私達がこの国を去るだけです」

今もなおエイバル王の上半身が炎に包まれる中、サンドラが 蕩(とろ) けるような笑顔でそう告げる。

真紅の瞳と相まって、僕には冷酷な彼女がとても魅力的に見えた。

だけど。

「まだだよ。僕達の本当の敵は別にいる」

「本当の敵?」

「うん。ユリ」

僕は隣のユリに目配せして、別空間でのことをもう一度みんなに説明してもらう。

まさか本当に 神(・) と呼ばれる存在がいたことに、サンドラ達は驚いた様子ではあったけど、すぐに平静を取り戻し。

「……では今度は、その 神(・) を名乗る愚か者の首を刈ればいいのですね」

「ふふ……ハル様に刃を向ける不届き者が、 神(・) であるはずがありませんから」

サンドラとモニカの言葉に頼もしいことこの上ないけど、この二人なら本当に神でも悪魔でも 屠(ほふ) ってしまいそうだよ。

まあ、まがい物の 神(・) を消すのは、この僕の役割なんだけどね。

「それでユリ、“ナカノヒト”はどこにいるんだ?」

「この王宮の地下深くにある、奈落の底だよ」

「あー……」

つまり暴君竜ア=ドライクと殲滅竜グヴィバーが眠っていたあの穴の底が、“ナカノヒト”の棲み処なわけだ。制作スタッフから結構酷い扱いを受けているんだなあ。どうでもいいけど。

「じゃあ、僕達をそこに案内してくれ」

「ソノヒツヨウハナイ」

「「「「「っ!?」」」」」

突然ユリの声色が機械音声になり、謁見の間の床が……いや、王宮全体が消失して僕達は奈落の底へと誘われ、そして。

――僕達は、意識を失った。

――ポチャン。

「んう……」

額に冷たいものを感じ、僕はゆっくりと目を覚ます。

「ここは……?」

周囲は真っ暗で、何も見えない。

だけど、王宮が消失した時のユリの言葉から察するに、ここは奈落の底で間違いないだろう……って!?

「ハル!」

「わっ!?」

暗闇の中に光る黄金の 双眸(そうぼう) が、僕の胸に勢いよく飛び込んできた。

「キャス! 無事だったか!」

「うん! ハルの胸の中でずっとしがみついていたから、大丈夫だったよ! だけど……」

「どうした?」

「その……他のみんなとは、はぐれちゃった……」

キャスの声のトーンが下がる。

なるほど……穴に落ちた時に、みんなとは離れ離れになったか。

「となると、まずはサンドラ達と合流しよう」

「う、うん」

ということで、僕達は暗闇の中を歩く。

だけど僕の目では全然見えないため、夜目が利くキャスに指示してもらった。

「あ、そこ、足元気をつけて」

「う、うん」

何というか、さっきからパキパキと枝が折れる感触が足の裏に感じるけど、気にしないようにしよう。多分 アレ(・・) だと思うし。

前が見えないからどれくらい歩いたのかは分からないけど、体感で結構な距離を進んだんじゃないだろうか。

というか、キャスが一緒で本当によかったよ。

すると。

「あ! あれ!」

「うん!」

暗闇の中に灯る炎。

僕はキャスを肩に乗せ、そこまで一気に駆けた。

「! ハル!」

「リゼ!?」

なんと、そこにいたのは王宮の前で魔獣と戦っていたはずのリゼだった。

「どうしてここに!?」

「私達も魔獣を倒した後、ハル達の後を追ったんだけど、その時に急に王宮が消滅してしまって……」

「ああー……」

なるほど、そういうことだったのか。

「それで、怪我はない?」

「ええ。このとおり無事よ」

そう言うと、リゼはスカートの端をつまみ、くるり、と回って見せた。

「よかった……でも、さすがはリゼ達だね。あんなすごい魔獣を倒してしまうんだから」

「と、当然よ! ただ大きいだけの蛇に、この私が負けるはずないじゃない!」

いきなり褒めたからだろうか。炎に照らされているということを加味しても、リゼの頬は間違いなく真っ赤に染まっていた。

相変わらず分かりやすいヒロインだなあ。嫌いじゃないけど。むしろ大好物だけど。

その時。

「おおーい! 誰かいませんかあああああ!」

暗闇の向こうから聞こえる、女性の叫ぶ声。

これは……リリアナか?

「彼女、この炎に気づいていないのかしら……」

「ひょっとしたら障害物か何かで、見えていないのかもしれない。行ってみよう」

「ええ!」

「うん!」

僕達は声のするほうへと向かうと、目の前にそびえ立つ壁が立ち塞がった。

声は、この壁の向こうから聞こえてくる。

「これは迂回するしかないかなあ……」

「そうね」

壁を見上げ呟くと、リゼが頷いた。

「でもこの壁、ずっと向こうまで続いているよ?」

「「そうなの?」」

「うん」

などと困り果てていると。

――ドオオオオオオオオオオオンッッッ!

「な、なんだ!?」

とてつもなく大きな衝撃音が暗闇に響き、僕達は思わず声を上げた。

「もう一丁! おりゃあああああああああああああッッッ!」

――ドオオオオオオオオオオオンッッッ!

……これは、リリアナの仕業みたいだ。

しかもどうやら、この壁を破壊してこちら側に来るつもりみたい。滅茶苦茶だよ。

「これで……どうだあああああああああああああああッッッ!」

――ドオオオオオオオオオオオンッッッ!

三度目の衝撃音とともに、巨大な壁が貫通する。

その勢いのままリリアナが飛び出してきて、彼女は 躓(つまづ) いて転んでしまった。

「いてて……あ! ハルさん!」

「あ、あははー……」

屈託のない笑顔を見せるリリアナに、僕は思わず苦笑したよ。