軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

現れたのは、黒幕の執事でした。

「サンドラ! モニカ!」

「「っ!?」」

正面から向かっていたはずのナイフが、なぜか一瞬で背後から迫っていた。

「チッ!」

「面倒ですね」

舌打ちするサンドラと眉根を寄せるモニカは、かろうじてナイフを避ける。

さすがに追撃はなかったようで、ナイフは地面に突き刺さった。

だけど、これは……。

「【転移魔法】……か……?」

「残念、違いますよ」

カスパーはかぶりを振るが、そんなものを鵜呑みにすることはできない。

実際、僕が目の当たりにしたのは、マクラーレンと同じ【転移魔法】の 類(たぐい) だったのだから。

「二人とも、僕の後ろへ!」

「「っ! はい!」」

こうなると、バラバラになったら自分だけならともかく、二人を守るとなると僕の防御が間に合わない。

二人を背にし、カスパーに向けて盾を構えた。

「ふむ……その身のこなし、やはりあの 外道(・・) は実の息子の実力すら見抜けない無能ということか」

「その『外道』というのは、国王陛下のことか?」

「おや? 父親を 貶(けな) され、気に障りましたかな?」

「まさか。よく分かっているなと思っただけだよ」

どういう意図でエイバル王のことをディスったのかは分からないけど、少なくともあの男とは関係がない……とも言い切れないか。

ナイフを眉間に突き刺されて死んだサラの、最後の言葉。

『こ、こんな真似をして済むと思っているの! 私達には、エイ……ッ!?』

これ、絶対にエイバル王って言おうとしてたよね。

となれば、このカスパーという男はエイバル王との関係はよくないものの、仕事として割り切って手を結んでいるのかもしれない。

いずれにせよ、この男は油断できない。

「まあいいや。僕はオマエごときに倒されるわけにはいかない。『運命をぶち壊す』って、ユリとも約束しているからね」

「……外道の息子の分際で、坊ちゃまの名を 騙(かた) るな」

どうやらあの男の逆鱗に触れたみたいで、先程サンドラとモニカを狙ったように、正面から飛んできたナイフが消え、真上から降ってきた。

「よっと」

僕はそれを、盾で難なく弾いた。

自分に向けられたものなら、たとえ【転移魔法】で出所を変えられても、防いでみせるさ。

だって……僕には守るべき、『大切なもの』があるから。

「さあ! これで終わりか! こんなんじゃ僕達には当たらないよ!」

不敵な笑みを浮かべ、僕は尊大に言い放つ。

カスパーのヘイトを全て僕に集めるために。

その時。

「大人しくなさい。あなたごときが、邪魔なんですよ」

「ぐう……っ」

本人としては隙を突いたつもりなんだろう。

背後に回り込んだマーゴが攻撃を仕掛けるも、サンドラにあっさりと制圧される。

「ですが……ハア、お父様とお兄様に言って、シュヴァリエ家の人員の見直しを急がせませんと」

ごり、と踏みつけるマーゴを見下ろし、サンドラは溜息を吐いた。

モニカの実母といい、さすがに敵のスパイに侵入されすぎだからね。僕も同意見だよ。

「お、お待ちください! 私を生かしておけば、きっとお役に立ちます! 私達の主が誰なのか、あの男の能力の正た……はががっ!?」

地面に這いつくばりながら必死に懇願するマーゴだったけど、口の中からナイフが飛び出し、大量の血を吐き絶命した。

「本当に、この母娘はペラペラとよくしゃべる。やはりあの 外道(・・) の部下は使い物にならないですね」

「おや? この二人はオマエの部下じゃないのか?」

「違いますよ。私の主は坊ちゃまのみ。二人は王宮の 影(・) ですから」

ああ、なるほど。

ユリとエイバル王は手を組んでいるから共闘しただけで、別に馴れあうつもりはないってことか。

それに、エイバル王を外道呼ばわりしているんだから、確執とかもありそうだし。

このあたりは、ひょっとしたらデハウバルズ王国に滅ぼされた、ノルズの民だからってこともあるんだろうね。

僕には関係ないけど。

「それで、どうする? これだけの戦力差だ。たとえ逃げ帰ったとしても、『ノルズの民の恥さらし』だとも『ノルズの民は臆病者』だとも思わないよ」

「っ!」

お、効果 覿面(てきめん) だ。

さっきからエイバル王のことを外道呼ばわりしているし、きっとこの男はノルズの民を 貶(けな) せば怒ると思ったよ。

「ほらどうする? 闘う? 尻尾を巻いて逃げる? ユリに会った時の話のネタになるから、できれば逃げてくれたほうが愉快だけど」

「そうですね……まずはその小うるさい口を、斬り刻んで差し上げるといたしましょう」

これまで投げナイフ主体の攻撃だったカスパーだったが、ナイフを手に無造作に歩を進める。

まるで、 遮(さえぎる) るものが何もない道を歩くかのように。

その瞬間。

「死ね」

僕の後ろに現れ、カスパーがナイフを振り下ろす。

だから、さっきからワンパターンなんだよ。

「そうですね。あなたが」

「っ!? ご……ご、ぽ……」

さらにその背後で待ち構えていたモニカが、カスパーの喉笛にダガーナイフを突き立てた。