軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やっぱり僕達の招待には裏がありました。

「本日はお越しいただき、ありがとうございます」

ナイスミドルな髭を生やした一人の貴族が、僕達に声をかけてきた。

「えーと、あなたは?」

「申し遅れました。私はこのカジノを経営しております、男爵の“スタンレー=オーランド”と申します」

そう言うと、ナイスミドル……いや、オーランド男爵が 恭(うやうや) しく一礼する。

ちなみに、僕は彼をよく知っているよ。

『エンハザ』のカジノで、ゲームの説明役として登場するから。

「これは失礼しました。改めまして、僕はハロルド=ウェル=デハウバルズ、そしてこちらが弟のオーウェン=ウェル=デハウバルズです」

僕は席を立ち、オーウェンと一緒に頭を下げる。

もちろんオーウェンは分かっていないので、僕が強引に頭を下げさせたけど。

「おや? 私と殿下は初対面かと思いますが……」

「ええ、お会いするのは初めてです。ですが、僕を招待してくださったのはオーランド卿でしょう?」

おそらく、僕だけでなくオーウェンも彼に呼ばれたに違いない。

一応はマリオンに勧められてここに来たことになっているけど、そうでなければ今日という日にカジノでオーウェンと遭遇することなんてあり得ないから。

「招待状の差出人は、別の者の名前だったはずなのですが」

「ええ、そのとおりです。ですが、あなたが今おっしゃったではないですか」

要は、僕はかまをかけたわけだ。

僕のことを知らないのにオーナーが直々に挨拶に来た時点で、そう勘繰るのも当然だよ。

最初はマリオン……いや、王宮の仕業かもって思っていたけどね。

「それで、僕を招待してくださった理由は何ですか? ここは王都でも老舗のカジノですし、特にイベントも企画されてはいない。客寄せのためとも思えないし、王家のとの繋がりという点を踏まえても、『無能の悪童王子』の媚びを売る理由もないでしょう」

「いやはや、ハロルド殿下がここまで聡明な御方だとは思いませんでした」

まるで一本取られたとばかりに、ピシャリ、と額を打つオーランド男爵。

ちょっとわざとらしいけど、『エンハザ』でもお調子者みたいなキャラだったから、むしろ懐かしささえ覚えるよ。

「実はこの度、領内でとんでもないお宝を発見いたしまして。カジノの景品にしようかと考えたものの、さすがに王国に許可を得ずにそのようなことをしてしまうわけにはまいりませんので、王宮にお伺いを立てたのです」

「ほう……」

「そうしたら、『宝の処遇についてはハロルドとオーウェンに委ねる』と国王陛下から直々にお達しがあったわけです。さすがに物が物だけに、手紙でお伝えするわけにもゆかず、こうしてカジノに招待する形でお越しいただいたのです」

なるほど。なんだかんだ言って、やっぱり背後にはエイバル王がいたわけだ。

で、カジノなら隠れ 蓑(みの) になると。

であればカジノではなく、その宝とやらが『エンハザ』本編に関連するものということで間違いないだろう。

「まずは、その宝を見せてもらわないことには始まらないね」

「もちろんでございます。どうぞこちらへ」

僕達はオーランド男爵に案内され、カジノの奥……VIPルームと呼ばれるところへと通された。

「こちらが、そのお宝でございます」

「うわー……」

オーランド男爵が見せてくれたのは、よりにもよって水属性のUR武器、『聖者水瓶アクエリアス』だった。

このUR武器には、聖女であるクリスティアの回復魔法にも匹敵する固有スキル【エリクシール】があり、水属性のヒロインであれば誰でも回復役を担えることから、『エンハザ』でも大人気の武器カードなのだ。

だけど、僕が変な声を出してしまったのには、別の理由がある。

……『エンハザ』本編では、このUR武器を争って 二人の者(・・・・) が暗躍したんだよね。

「既に私のほうでお宝について調べましたが、これさえあれば誰でも治療を行うことが可能。数多くの者が喉から手が出るほど欲しい代物です」

「でしょうね……」

説明を受け、僕は納得して頷く。

誰でも聖女クラスの回復スキルを受けられるんだから、そりゃあ欲しがる奴は後を絶たないだろうね。

そして、それを受け入れられない者も。

「ですが、先程の話だとこちらを景品にと考えておられるようですが……オーランド卿自身が使うとか、王国や有力貴族に高値で売るといったことは考えなかったのですか?」

「まさか。私にはこのカジノのオーナーとしての矜持があります。ならばお客様を楽しませることこそが、私の本懐です」

胸に手を当て、力説するオーランド男爵。

その心意気は立派だと思うけど、その武器の存在が知られてしまえば、それこそよからぬ輩が狙ってくるだろうなあ……。

元々、この『聖者水瓶アクエリアス』はカジノの景品なんかじゃなかったのに、ねえ……。

まあでも。

「なら僕はこれをカジノの景品にしても……」

「待ってくれ!」

僕の前に左手を出して言葉を遮り、オーウェンが大声で叫んだ。