軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『エンゲージ・ハザード』の本当の目的を知りました。

「「「「「わああああああああああああああああああッッッ!」」」」」

大勢の王侯貴族、それに民衆達が見守る中へと姿を見せた瞬間、ひと際大きな歓声が沸き起こった。

「うわあ……キャス、すごいね……」

「ねー……ボク達、あの馬鹿とここで闘うんだね……」

「あれ? ひょっとして緊張してる?」

「まさか! むしろ、ボクとハルのすごいところ、みんなに見せつけてやれるんだから、今からワクワクしているよ!」

あはは、僕の相棒は頼もしいな。

キャスのおかげで、少し……いやいや、結構緊張していたけど、すぐにほぐれちゃったよ。

「そうだな。それに、アイツに負けるなんてあり得ない。あの舞台で最後まで立っているのは、僕達だ」

「うん!」

「さあ……行こう!」

ゆっくり歩を進め、僕は舞台へと上がる。

主審を務めるドレイク卿が口の端を持ち上げ、僕を見て頷いた。

ちなみに、ウィルフレッドの登場は僕より後みたい。おそらく、主人公よろしく満を持して登場するつもりだろう。

まあ、『エンハザ』としてもそのほうが物語も盛り上がるし、必要な演出なのかもしれない。

だけど……そんな主人公が、噛ませ犬以下の僕に敗れれば、それはそれでドラマチックだよね。

すると。

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」」」」」

僕の時よりもさらに大きな歓声を受け、ウィルフレッドが現れた。

王宮によってアイツの活躍を大きく 喧伝(けんでん) している効果もあって、民衆達は明らかに期待に満ちた瞳でウィルフレッドを見つめているよ。

それよりも。

「へえ……」

ウィルフレッドの持つ武器……あれは、UR武器の『英雄大剣カレトヴルッフ』か。

というか、『エンハザ』本編も始まっていないっていうのに、いきなり最強クラスのUR武器を持ち出してくるなんて反則じゃない?

だけど。

「僕のキャスのほうが、間違いなく 上(・) だけどね」

『英雄大剣カレトヴルッフ』による物理攻撃力の上昇効果は全武器中最強の四〇〇〇〇。

一方で、『漆黒盾キャスパリーグ』による物理防御力と魔法防御力は、それぞれ一五〇〇〇だ。

でも……キャスには僕と同じように、『称号』【金剛不壊】がある。

その効果によって、キャスの防御力は三倍の四五〇〇〇に跳ね上がっているのだから……って。

「えへへ……ハルに褒められちゃった」

「何言ってるんだよ。僕がどれだけキャスのことを信頼しているか、知らないんだろ」

「もちろん分かってるけど、それでも嬉しいものは嬉しいんだ」

「そっか」

まったく……僕の相棒、メッチャ可愛い。

できれば今すぐ撫でてやりたいけど、残念ながら今のキャスは『漆黒盾キャスパリーグ』に変身しているので、それはちょっとできない。

なので、ウィルフレッドを倒したら存分に愛でてあげるとしよう。

「ハロルド兄上……今からでも、やめにしませんか? 国王陛下に言い出せないのなら、この俺がとりなしますから……」

「へえー。オマエ、陛下と仲良いの? 知らなかったよ」

対峙するなり、おかしなことを言い出したウィルフレッドに、僕は皮肉を込めてそう告げた。

コイツがエイバル王の寵愛を受けていることは、さすがに気づいているよ。

エイバル王の命によってカーディスの派閥に迎え入れられ、バルティアン聖王国のホスト役にも任命された。

カペティエン王国への親善大使にも、僕の補佐として就けようとしたし、近衛師団も任されている。

極めつけは、新年祝賀会の場で、コイツの母親であるサマンサを第三王妃に引き上げたんだ。

エイバル王がウィルフレッドを寵愛する理由は、僕には分からない。

愛人に頼まれたのか、愛人の気を 惹(ひ) くためにそうしているのか、それとも、他に理由があるのか。

ただ……『エンゲージ・ハザード』において、どうしてエイバル王が『世界一の婚約者を連れてきた者を、次の王とする』などと 宣(のたま) ったのか、それは理解したよ。

――全ては、ウィルフレッドを次の王にするためだったということだ。

王位継承順位が一番低くても、これなら全員が同じスタートラインに立つことができる。

あとは、誰の婚約者が一番優れているのかを、エイバル王の独断で判定すればいいのだから。

「……本当に、 憐(あわ) れだね」

王族が座る席でウィルフレッドに声援を送っているカーディスを見やり、僕はポツリ、と呟いた。

エイバル王の命令なのか分からないけど、ウィルフレッドを派閥に受け入れ、踏み台にされたんだから。

それに、母であるマーガレットの歪んだ期待を一身に背負い、次の王になることだけを求め続けて努力を重ねてきたのに、全部無駄になってしまうっていうね。

この事実を知ったら、カーディスは嘆き悲しむだけでは済まないだろうなあ。

「ふう……仕方ありません。なら俺は、ハロルド兄上を叩き潰すだけ。どうかお覚悟を」

「いい顔で 嗤(わら) うじゃないか。ようやくオマエらしくなったよ」

灰色の瞳を 爛々(らんらん) と輝かせたウィルフレッドの不気味な表情を見て、僕は皮肉を吐いた。

だけど……これが、『エンゲージ・ハザード』では決して見せることのなかった、 屑(くず) の本性か。色々と納得だよ。

「既に聞いているとおり、勝敗は三人の審判全員による判定か、もしくはどちらかが戦闘不能となった場合のみ。双方、よろしいですかな?」

「はい」

「ああ」

「よろしい。では、両者構えて」

ドレイク卿の言葉を受け、僕は盾をウィルフレッドへと向ける。

ウィルフレッドも、正眼の構えで『英雄大剣カレトヴルッフ』の切っ先を僕の眉間に合わせた。

「キャス、行くぞ」

「うん……!」

キャスの覚悟と決意に満ちた声を聞き、僕は口の端を持ち上げた。

そして。

「では……はじめ!」