軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いよいよ主人公との決闘に臨むことになりました。

「ハロルド殿下! 試合の詳細が決まりましたぞ!」

新年祝賀会から三日後、試合に向けてサンドラと特訓している僕のもとへ、ドレイク卿がやって来た。

というか、いくら近衛師団を辞めたとはいえ、ちょっとマメに王宮に顔を出し過ぎじゃない?

「ありがとうございます。それで……」

「うむ、こちらですぞい」

ドレイク卿が羊皮紙を広げ、僕達に見せる。

まず、試合の開催日は予定どおり今日から七日後。場所は、王都の中央広場に特別に会場を用意するというもの。

もちろん、民衆も観戦できるように、貴族用の席とは別に観客席が用意されることとなっている。

次に、試合方法や勝利条件などについて。

真剣の使用が認められ、武器の種類も自由。時間無制限の一本勝負であり、勝利条件は、主審一人と副審の二人の全員が勝者を決定した場合か、あるいはどちらか一方が戦闘不能に陥った場合のみ。

「……なお、審判については、このワシが主審を務めますぞ。ただし、副審は公平を期すため、カーディス殿下とラファエル殿下がそれぞれ一人ずつ用意することになりましたわい」

「ふむ……」

表向きに(・・・・) 、ウィルフレッドが選んだ審判が一人もいないというのは、それはそれで気になる。

もしアイツが敗れた場合、不正を疑って難癖つけてきそう。

となると……完全に勝利するためには、ウィルフレッドを戦闘不能まで追い込むしかない。

「これはなかなか厳しいね……」

「そうですな……じゃが、誰の目に見ても勝者が明らかであれば、たとえ審判に息がかかっておったとしても、そう簡単には不正を行うことはできますまい」

「ですね」

ここで、民衆達にも観戦できるようにしたことが大きな効果を見せる。

このようなことを見据えてシュヴァリエ公爵やオルソン大臣達も提案してくれたことに、感謝しかない。

「ふふ……でしたら、ハル様がすべきことは、たった一つですね」

「ええ。相棒のキャスと一緒に、アイツの攻撃を全て防ぎ、みんなの期待に応えるだけです」

キャスの【スナッチ】を使って攻撃することもできるけど、そんなことをしたら、絶対に卑怯だの反則だの言ってくるだろうからね。一応、ルール上は魔法スキルの使用は禁止されていないけど。

いずれにせよ、使用するとしたらウィルフレッドが先に魔法スキルを使用した時だけだ。

「わっはははははははは! そういうことであれば、このワシも殿下の特訓にお付き合いいたしますぞ!」

「いいえ、ドレイク卿はここまでです」

「っ!? なんじゃと!?」

サンドラがきっぱりと拒否したことを受け、ドレイク卿は大声を上げて詰め寄る。

せっかく僕に協力しようというのに、水を差されてしまったからね。

だけど。

「主審をお務めになるドレイク卿がそのようなことをなさったら、あの 屑(くず) は間違いなくそのことを理由に、ハル様が勝利しても難癖をつけることでしょう。ハル様の勝利を願うなら、どうかここは、身を引いていただきますよう」

「むむむむむ……っ」

深々とお辞儀をするサンドラを見て、ドレイク卿は 唸(うな) る。

その可能性があることを理解し、何もできないもどかしさによるものだろう。というかサンドラ、ドレイク卿の前でアイツのことを『 屑(くず) 』呼ばわりして大丈夫かなあ……。

「あはは、ご心配には及びません。僕は必ず勝ってみせます。それこそ、ウィルフレッドが何一つ文句を言えないほど、完膚なきまでに」

「むう……そこまでおっしゃられるならば、ワシはハロルド殿下を信じるほかありませんな。じゃが、『完膚なきまでに』とは痛快な話ですわい!」

ようやく納得したドレイク卿が、豪快に笑う。だけど、背中をバシバシと叩くのはやめてほしい。

「ハル様、特訓の続きをいたしましょう」

「ええ!」

僕とサンドラはドレイク卿が見守る中、特訓を再開した。

ウィルフレッドに、勝利するために。

そして。

「うわあああ……」

いよいよ試合当日となり、僕は控室で会場となる中央広場から聞こえる耳をつんざくような歓声に、思わず声を漏らした。

これ、何人くらいの人が来ているんだろう。

「ふふ……今日ここにいる観客達は、いよいよハル様の雄姿をご覧になるのですね」

「サンドラ」

僕の手を取り、サンドラがクスリ、と笑う。

「君に特訓してもらったおかげで、僕はこんなにも強くなれました。後は、それをウィルフレッドに全てぶつけるだけです」

「はい。ハル様ならば、必ず勝利できます。この私の攻撃を、 九割も(・・・) 防ぐことができるのですから」

最初は一度も防ぐことができなかったサンドラの攻撃も、今では十回のうち九回もシャットアウトできる。

いくらウィルフレッドが主人公とはいえ、まだ『エンハザ』の本編も始まっていないんだ。アイツはゲームの初期ステータスしかないはず。

なら、能力値をカンストさせ、相棒のキャスを携えて、さらには『称号』まで手に入れた僕が、アイツに負ける要素なんて何一つない。

だから。

「行ってきます! そして……勝利を君に!」

「はい! あなた様に、勝利を!」

サンドラに見送られ、僕はキャス……『漆黒盾キャスパリーグ』とともに、試合会場へと足を踏み入れた。