軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

たくさんの人の応援と後押しを受けて、僕は勝利を誓いました。

「ハロルド兄上! このウィルフレッド=ウェル=デハウバルズ、あなたに決闘を申し込む!」

ええー……ウィルフレッドの奴、よりによって祝賀会の席で、とんでもないことを言い出したよ。

まあでも、既に茶番の後なんだし、今さらではあるんだけど。

おそらくウィルフレッドは、僕と闘って勝利し、改めて手を差し伸べるつもりなんだろうな。

そうすれば周囲の目には、非協力的だった僕を実力で従えたように映るだろうし、何より、コイツが僕の 我儘(わがまま) を許した格好になるだろうから。なかなか計算高い。

それに……『無能の悪童王子』である 僕程度(・・・) なら、闘っても負けることはないと踏んでいるんだろう。

実際、ウィルフレッドが僕の闘っている姿を見たのは、一方的にカルラの攻撃を受け止め続けていた、あの立ち合いだけだ。

だけど、 傍(そば) で様子を見守っているマリオンは、オロオロとしているよ。

マリオンがサンドラと立ち合いをした時に、僕が全力の一撃を止めたところを腰が抜けた彼女は目撃しているからね。

そうだよ、僕は『エンゲージ・ハザード』で噛ませ犬にならないために……主人公にざまぁされて処刑されないために、強くなったんだ。

とはいえ。

「断る。お前と立ち合って、僕に何かメリットがあるのか? ないだろう」

「…………………………」

そもそも、どうしてこんな奴の思惑に乗ってやる必要があるんだよ。

そんな暇があるなら、僕はサンドラと特訓しているほうがましだ。

「なるほど……兄上は、この俺が怖いんですね?」

「ハイハイ、それでいいよ」

ウィルフレッドは 煽(あお) ってくるけど、面倒なので手をヒラヒラさせてやり過ごす。

『エンハザ』に登場するハロルドならまだしも、この僕がそんな見え透いた挑発に乗るわけがないじゃないか。

「とにかく、僕はサンドラと祝賀会を楽しんでいるんだ。オマエの勝手な都合に巻き……」

「ハロルドよ、試合をしてやるのだ」

「っ!?」

面倒なことに、エイバル王がサマンサの肩を抱いて現れ、僕にウィルフレッドと手合わせをするように言ってきた。

これまで会場にいなかったはずなのに、こんな時に限って姿を見せるなんて、狙っていたとしか思えない。

「カーディス、ラファエル、そしてウィルフレッドが、王国のために一致団結しようとしているのだ。ここでお主だけが輪を乱してどうする」

「…………………………」

「もちろん、お主なりに納得できぬ部分もあるのであろう。だからこそ、わだかまりをなくすために提案したウィルフレッドの厚意、ありがたく受け取るがよい」

……どうやら、僕に逃げ場はないみたいだ。

ダメ元で反論してもいいけど、結果は変わらないだろう。

「分かりました。このハロルド=ウェル=デハウバルズ、ウィルフレッドと手合わせをいたします」

「うむ」

傅(かしず) く僕を見て、エイバル王が満足げに頷く。

こうなってしまった以上は仕方ない。試合で僕がウィルフレッドの奴を 分からせる(・・・・・) だけだ。

その時。

「エイバル陛下。ハロルド殿下とウィルフレッド殿下の試合なのです。限られた者だけが観戦するのではもったいない。ここは、多くの者に観ていただくのがよろしいかと」

ちょっと待って!? シュヴァリエ公爵、いきなり現れて何を言い出すの!?

「それはよいですな! 民衆達も、お二人の闘いをぜひとも見届けたいでしょう!」

「そうですな。二人の雄姿を見れば、民衆達もますます王家に忠誠を誓うことになるでしょう」

おおーい……どうしてオルソン大臣や宰相までしゃしゃり出てきて、完全同意してくるかな。

僕はそんなの、頼んでないんだけど。

「わっはははは! そうとなればこのブラッドリー=ドレイク、二人の立ち合いを取り仕切らせていただきましょうぞ!」

さらに厄介なことに、普段は王室の行事に参加しないはずのドレイク卿まで 絡(から) んできたよ。というか、どうしてここにいるの?

だけど、これでもう僕は、 晒(さら) し者になることが確定してしまった。

「ですが、せっかくの試合……何も賭けないのはつまらないでしょう。ウィルフレッド殿下がハロルド殿下の協力を求めたのであれば、ハロルド殿下にも同様に、勝利した時の対価を与えるべきかと」

「おお! よくぞ言った! ただ、それではウィルフレッドの望みも釣り合わず、不公平になってしまう。よって、勝者には褒美として、このエイバル=ウェル=デハウバルズの名において、一つだけ好きな願いを叶えるとしよう」

「「っ!?」」

うわあ……シュヴァリエ公爵のおかげで、僕は破格の報酬を得ることができそうだ……って、そういうことか。

公爵は、ウィルフレッドと試合しなければならなくなったことを逆手に取って、それを利用したんだ。

しかも、民衆の前で闘うことによって、言い逃れできないようにするというお膳立てまでして。

全ては、この僕のために。

見ると、オルソン大臣や宰相、それにドレイク卿も、シュヴァリエ公爵と同じ瞳を僕に向けていた。本当に……ちょっと買いかぶり過ぎじゃないですかね?

これじゃ僕、絶対に勝たなくちゃいけないじゃないか。

「うむうむ、これは楽しみになってきた。では二人の試合を、民衆達にも公開の上、十日後に執り行うこととする。ハロルド、ウィルフレッドよ。互いに研鑽を積み、試合に備えるのだ」

「はっ!」

「……かしこまりました」

ハア……メッチャ気が重い。

こんな大事になるなんて、これっぽっちも思わなかった。

ご機嫌な様子でこの場を去るエイバル王の背中を見つめ、僕は大きく溜息を吐く。

でも。

「ハル様」

「ハロルド殿下」

「うむ」

「わっはははは! 楽しみになってきたわい!」

「いやはや、お願いしますぞ」

こんな僕を信じて応援してくれたみんなに、僕は笑顔で頷いて見せた。

ウィルフレッドとの闘いの、勝利を誓って。