作品タイトル不明
165話
いやー、育った育った。目の前には戦闘訓練とレベル上げが終わり、ただでさえムキムキだったのが、さらに屈強になり魔法も使いこなすマジカルマッスルソルジャーと化したロシア軍人が整列していた。
今日はこれからダンジョン攻略にむけての作戦会議だ。ここまで本当に長かった。
実は大統領官邸でマキシム大統領たちと出会ってから二カ月ほど経っている。なぜこれだけの時間がかかったかというと、レベル上げはもちろんなのだが氷像の移動が想像以上に大変だったためだ。
まずプレゼント袋の回収が思ったより捗らなかったのだ。最初に入手した分と、次に氷の城前に狩りにいった分の二つまでは良かった。
しかしサンタのリポップ間隔が幸か不幸か七日ごとという事実。個体数も自分が倒した二体しかいないようで、中々プレゼント袋を入手できない。今後を考えるとサンタのリポップ間隔や個体数の少なさは朗報なのだが、氷像の移動はプレゼント袋でなんとかするつもりだったので困った。
困った結果、ロシア軍みんなのレベルをガッツリと上げフロストドラゴンをテイムしてもらった。
もちろん部隊で一体とかではなく、一人一体だ。
鍛えあげられ、フロストドラゴンをテイムした彼らを止められるモンスターはもうモスクワの街にはおらず、街中のモンスターを殲滅しながらトラックやドラゴンを使って堂々と氷像を大量に移動させたのだ。
それでも百人ほどの少人数でモスクワ中に配置された氷像を回収するのには時間がかかった。二カ月かかってようやくだった。
これまでレベル上げや氷像の回収で大変だったがいよいよダンジョンに侵入できる。
まずはマップスキルを持ち、こちらの最高戦力である自分とサポートにロシア軍から三十名が参加することになった。
マキシム大統領もやる気満々だったが流石に初見のダンジョンに大統領を連れていくわけにもいかない。
全会一致で却下されしょんぼりしているマキシム大統領。確かに大統領官邸にいる人間の中でマキシム大統領は自分の次に強いと思う。
でもそれはそれ、これはこれで我慢してもらわなければいけないし、他にもやらなければならないことはたくさんあるのだ。
会議の翌日、とうとう氷の城に乗り込む。サンタ狩りに何度か城門前の広場には来ていたが、入るのは自分も初めてだ。
後ろについてきている軍人さんたちはダンジョン自体が初めてなのでいつもよりピリピリとしていた。
「皆さんも強くなりましたし大丈夫ですよ。ヤバそうだったら一度戻れば良いし」
しかし前から気になっていたが、この城門には門番らしきモンスターが配置されていない。逆に不気味だ。
そっと城門を押しあけると、特に門に鍵がかかっているわけでもなくゆっくりと開いていく。
今のところ生命感知にもモンスターの反応はない。巨大な城門をくぐり中へ入ると氷でできた庭園からは道が三本伸びている。
正面に伸びる階段は城に続いており、左右の道はどこに続いているのか先が見えない。
正解ルートは後で行く派の自分としては右か左から攻略したいところだ。しかし理由はそれだけでもない。
もしかしたらこの城内にも氷像化して捕らえられている人がいるかもしれないのだ。
「右から探索しましょう」
道なりに進んでいくと、氷でできた樹の森が現れる。ここまでモンスターの出現はなかったが、この森からはアイスフォックスやキラーラビットなどの雑魚モンスターの反応がある。
今さらこのランクのモンスターにやられることもなく、蹴散らしながらどんどんと森を進む。
やがて森の中に氷でできた塔が見えてきた。城からは独立した塔で高さもそれほどなく、五階建てのビルくらいの高さだ。
いかにも何かありそうな場所なのに、扉を何かが守っているわけでもなく鍵もかかっていない。
そのまま塔の中へ侵入し、各階を調べていった結果本当に何もないことがわかった。
宝箱もモンスターもなしだ。まぁこういうこともある。
塔を出て再び森を探索してみたが、こちら側には城への侵入ルートはないようだ。
きた道を戻り今度は反対の左の道へ行くことにした。
またもや何もいない建物があるので入ってみると、どうやら牢獄のようで誰も入っていない牢屋が並んでいる。
「また、何もありませんね」
「そうですね……うーん、流石に何か怪しい気もしますがさっぱりですね。何もなさそうだしとりあえず本命のお城に乗りこみますか」
「そうしましょう」
モンスターも森であった雑魚くらいしか戦っていないし、生命感知にもモンスターの反応がない。自分なんかはすでにさっきから手ぶらで探索していた。
来た道を戻り、いよいよ城内へと侵入する。両開きの扉へ手をかけて押し開き中へ入った。
「う、うわああああ! 佐藤さん! 佐藤さん!」
突然叫び声が上がり、名前を呼ばれて振り返ると怯えた顔で扉の外に立ちつくすみんなの姿があった。
「どうしたんですか? ……あれ? ひい、ふう、みい、……なんだか少ないですね」
「と、突然消えたんです! その扉をくぐった瞬間でした」
すぐ後ろにいた軍人さんたちが十名ほど居なくなっている。目撃者によると、どうやらこの扉をくぐった瞬間消えてしまったようだ。
「罠ですかね。自分は平気だったようですが……とりあえず皆さんは動かないでください。扉をくぐったらダメそうなので」
入り口から転移系の罠とは中々にいやらしい。しかし自分は平気だったようだ。自分とみんなの違いを見比べたら原因がわかるかもしれない。