軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

161話

「マ、マキシム大統領……閣下? どうしてここに?」

「はっはっは、君は中々面白いことを言うな。ここは大統領官邸だ。そりゃあいるさ。まぁ玄関で立ち話もなんだ、奥に案内しよう」

えっ!? ここって大統領官邸だったのか。そりゃ大統領がいるわけだ。マキシム大統領は豪快に笑うと、こちらの肩をバンバンと叩いてきた。

犬好きっぽい軍人さんに玄関扉を修理するようにと指示を出し、こちらへ着いてくるようにと促してくる。

どうしよう。自分が壊したんだし直したいところだが、大統領を待たせるのも失礼な気がする。

「すみません、これ良かったら使ってください」

収納から扉の修理に使えそうな資材を取り出し、頭を下げてマキシム大統領を追いかける。

「今のは、君の能力かね?」

「はい。あの、扉を壊してしまい申し訳ありませんでした」

「あぁ、なに構わないさ。丁度換気をしようとしていたところだしね」

……今のは、ジョークだよな? 場に沈黙がおとずれ少し気まずい空気になる。笑った方が良かっただろうか。

妙な沈黙を保ったまま四人の軍人さんに囲まれながら大統領と並んで歩き、応接室に案内され席に着くように言われる。

ふかふかのソファーに腰掛けると足元にシュナイダーがちょこんとおすわりをする。

マキシム大統領がテーブルを挟んでソファに座ると、両脇に軍人さん二人が大統領を守るように立ち、残りの二人は自分の座るソファーの後ろに立っている。

「お茶でも出したいところだが、あいにくと物資が不足していてね。ご容赦願おう」

「あ、良ければお茶を淹れましょうか?」

収納からガスコンロにポット、水の入ったペットボトル、ティーセットを取り出す。ロシアでお茶と言えば紅茶か。茶葉とジャムも取り出す。

「君はマジシャンか何かか? 何でも出てくるな。いや、催促したようですまない。お茶を淹れるのは部下にやらせよう」

そう大統領が言うと軍人さんたちはテキパキとお茶を淹れ始める。中々訓練されているようだ。

「あ、良かったら皆さんもお茶飲んでください」

ティーカップをさらに四つ取り出して渡す。

「いえ、自分たちは……」

「なに、良いさ。皆でお茶会といこうじゃないか」

しばらくして紅茶がはいり、五人の強面たちに囲まれながらのお茶会が始まる。シュナイダーはお水だ。

大統領たちの作法を見ていると、ジャムを紅茶に入れるのではなくて、食べながら紅茶を飲んでいる。

ロシアンティーは紅茶にジャムを入れるものと思っていたが、どうやら食べながら飲むのが本場らしい。

お茶を一杯楽しんでからマキシム大統領が切り出してくる。

「それでは佐藤君。話を聞かせてくれるかな?」

日本でのことまで話すと長くなるので、ロシアに来てからのことを話す。アレクセイさんたちとの出会い、ロシアを旅して全くと言っていいほど生存者に出会わなかったこと、サンタを倒し氷像にされた人々を見て、なんとか治そうとしてモスクワにたどり着いたことを話す。

こちらが話し終えると、黙って聞いていたマキシム大統領が口を開く。

「そうか……まずは礼を言わせほしい。同胞のため危険をかえりみずこの地獄まで来てくれたこと、感謝する」

「いえ、そんな」

「そう謙遜することはないさ。君の行動はまさしく英雄のそれだ。それに玄関での話がチラリと聞こえたが、君の考えでは氷像にされた人間はまだ生きていると。何か元に戻す算段があるのかね?」

「えーっと、確証はないんですけど……」

追跡してきたサンタはモスクワ上空にそびえ立つあの城に入っていった。あの氷城に氷像化の元凶となるモンスターがいて、そいつを倒せばみんな元に戻るのではないか。

もしそれがダメでも上位の回復魔法なら治せるかもしれない。と自分の考えを伝えた。

その際、モスクワ中に配置された氷像が元に戻った時の危険性なんかも話す。

「モスクワ以外の街で氷像にされた人は見なかったんですよね。なのであの城が怪しいのは間違いないと思うんです」

「なるほど。こんな状況になる前なら信じられなかったかもしれないが、今や何が起きても不思議ではないな。日本人の君がロシアの人々を助けると言っているんだ。我々が黙ってみているわけにはいかない、全面的に協力させてほしい」

「本当ですか? 助かります。丁度人手が必要だったんです」

ここにはどれだけの人が生き残っているのだろうか。さっきの話だと物資も心許ないようだし、出来る限り融通しよう。

「戦闘できる人間は私を含めて三十名だな。非戦闘員、治療中の負傷者を含めると百五十人くらいいる。物資の提供は非常にありがたい」

まずは怪我人の治療をして、スキルスクロールで全体の底上げだな。あとご飯もお腹いっぱい食べてもらおう。肉と魚とオニギリは大量にある。