軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160話

翌朝身支度を済ませ、昨日はまわらなかったところを探索するためホテルを後にした。

道すがら、街に配置されている氷像の回収もしていく。昨日は試していなかったのでわからなかったが、どうやら透明化をかけたまま回収が可能なようで氷像の回収でモンスターに絡まれることはなかった。

(これなら多少はマシかな)

とはいえ袋に入れるのは手作業なので本当に多少マシという程度だ。大変なことに変わりはない。

黙々と地味な作業をこなしながら歩くこと数時間。ようやく今日の目的地、赤の広場へたどり着いた。

広場からは特徴的な屋根をした教会や、宮殿が見える。こんな状況でも広場から眺める歴史的な建造物は壮観だ。

しかし文化遺産に登録されている赤の広場にも、例外なく氷像が配置されている。

お松さんには是非氷像のない状態で景色を楽しんでほしいものだ。

(さて、頑張りますか)

赤の広場の氷像の回収を開始して二時間ほどたった。全然終わる気配がない。

ここは気分転換に回収をすすめながらクレムリンを散歩することにした。

せっせとプレゼント袋に氷像をいれながら様々な宮殿を見てまわる。

そうして観光して建物をみてまわっていると、ある建物の窓を何かが横切るのが見えた。

(えっ? 生きてる人がいる!?)

慌てて駆け出しその建物の扉をノックする。しかし拳が扉に触れた瞬間、バンッ! という音とともに扉が木っ端微塵に吹き飛ぶ。勢いあまって力が入り過ぎてしまったようだ。完全にやらかした。

どうしよう……寒い外の空気が入っちゃうしとりあえず適当な物でもだして塞いでおくか。

建物の中に入り、丁度よさげな物がないか収納に目を通しているとドタドタと足音が聞こえてきた。

音の感じ的に一人ではなさそうだ。良かった、まだ生きている人がいたんだ。しかしこれ怒られるよな……扉。

やがて現れたのは屈強な身体を軍服に包んだ五名の男性だった。木っ端微塵に吹き飛んだ扉を見るや否や、一人は銃口を扉の存在していた場所へむけ、一人は来た道を走って戻り、残りの三人は近くの部屋の扉を開けてクリアリングを開始した。これはまずいと両手をあげて弁明する。

「すみません! 力加減を間違えました。怪しい者じゃないんです!」

「誰だ! どこにいる!?」

軍服の男性は油断なく銃を構えたまま問いかけてきた。

しまった。透明化がかかったままだ。これじゃあめちゃくちゃ怪しい奴だよ。

「今自分のスキルを使って透明になっています。解除するので撃たないでくださいね?」

「……」

男性からの返事はない。撃たれても大丈夫だと思うができれば撃たないでほしい。

「こっちには犬もいるんです。撃たないでくださいね?」

シュナイダーも撃たれても大丈夫だと思うが、むしろ避けると思うが一応言っておく。

「何……犬が? わかった。トリガーから指は外そう。ただしおかしな真似をすれば撃つ」

「犬、お好きなんですか?」

「……」

「すみません」

シュナイダーと一緒に透明化を解除して姿を現わす。

「お前は何者だ? 目的は? 仲間は? どうやってここに来た?」

男性は矢継ぎ早に質問を浴びせてくる。まぁ当然のことだろう。

「自分は佐藤と言います。目的は氷像にされた友人を元に戻す方法を探すためで、仲間はこのシュナイダーと、ここにはいませんがあと二人います」

「日本人か。氷像にされた友人を元に戻すとはどういうことだ? 何を知っている?」

「えーっと、確実とは言えないんですけど……」

とりあえず人々の氷像化に関して自分が考えていることを伝える。

「お前は、人間があの凍った状態でまだ生きているというのか?」

「恐らくは……」

男性は黙ってしまう。可能性はゼロではないとはいえ、自分も自信をもって確かだといえない。やってみなきゃわからないのだ。

「お待ちください! 危険です!」

「何、構わんさ。私が直接話しをしよう」

ん? また誰か来たようだ。先ほど来た道を戻っていった男性が誰かを引きとめながらこちらにやってくる。

新たに現れた男性は気にした様子もなくこちらに近づいてくると右手を差し出してきてこう言った。

「私はマキシム・メドヴォージェフ。ようこそロシアへ」

呆気にとられ差し出された手を握り返しながら、どうも佐藤ですと気の抜けた挨拶を返してしまう。

目の前に現れた見上げるほどの巨漢は、ロシア大統領だった。