作品タイトル不明
138話
「良いとこで戻ってきてくれたね、ゼロ」
ドロップを回収してゼロに歩み寄り鼻先を撫でると、得意げに鼻息を荒げ、その勢いに危うく転びそうになる。
しかし随分早かったな。一体どこに運んできてたのだろうか? そしてシュナイダーが見当たらない。まさかあまりのスピードで落としてきたとか? ゼロにそう聞いてみると、そんなヘマはしないと怒っている。
「あはは、冗談だって」
シュナイダーが居ないところを見ると、何やら事情がありそうだ。図鑑を確認しつつシュナイダーがいる場所まで移動することにした。
119番 海獣ナルワール アイテム1 海獣の肉 アイテム2 海獣の大螺旋牙
ドロップは大量の肉とあの巨大なドリルのような牙だった。肉は味の想像がつかない。クジラっぽい感じだし、似た味がするんだろうか?
分厚い氷を砕いていた牙は巨大で、太さは一番ふといところで直径三メートルほどで長さは二十メートルくらいある。形は捻れた三角錐だ。これは交換所で使えるのかな? 武器に加工されたとしてもでか過ぎて使いにくそうだ。重さ的には持てるけども。
ゼロの背中で牙の確認していると、飛びづらいのでしまえと怒られてしまう。ごめんなさい。
しかしこっちの方角は朝きた街の方だ。安全そうな場所へ運べと言われても、ゼロだってこっちに来たばかりで土地勘もなく困っただろう。結構な無茶振りをしてしまったな。
「街に運んだんだ。モンスターは湧くけど、シュナイダーがついてるなら何が出るかわからない場所よりも安全か」
賢いとゼロを褒めているうちに朝出た街まで戻ってきた。すると先ほど助けた白熊が、シュナイダーに見守られながらモンスターと戦っていた。
「ただいまシュナイダー、アイツは無事倒せたよ。それで何やってるの?」
おかえりと返してきたシュナイダーが説明をしてくれる。なんでも安全の為に街のモンスターを掃除していたのだが、それを見た白熊たちが自分たちも戦うと言い出したそうだ。
それでシュナイダーが魔法でサポートしつつモンスターを狩っているのか。真面目な白熊たちだ。
関心しているとモンスターを倒した白熊たちが近寄ってきて、こちらにペコリと頭を下げてきた。シュナイダーの通訳が無くてもわかる。お礼をしているのだ。
「はぇー、賢いな。やっぱりレベルが上がると知能も上がるのか」
ということは人間もレベルが上がるほど賢くなるのだろうか? 自分は全然そんな風に感じたことはないんだけど……
わからん。勉強とかしたら簡単に覚えたり出来るのだろうか? そこら辺は試したことなかったな。
ちょっと今後のために為に試してみるか。
その後街中のモンスターをシュナイダーと白熊たちが倒していくのについていきながら、収納から取り出した露和語辞典で勉強する。
「ず、ずどらーすとゔぃちぇ」
うーんレベルアップの効果があるのか、単語はわりと簡単に覚えられるものの、発音だけはいかんともしがたい。
しかしこれから広大なロシアを旅するのであれば、簡単な会話くらいできたほうが良いだろう。この街ではまだ人に出会っていないが、この先全く出会わないということもないだろう。通訳を雇ったりできないのだ。
耳慣れない言葉を呟き続ける自分を、シュナイダーが訝しげな表情でチラチラ見てくる。
「え、気になるから勉強するなら勉強に集中してくれって? ……わかった、そうするよ」
お昼も近いことだし、ミニログハウスを取り出して昼食タイムにすることにした。白熊たちにも肉を出してやる。
食後にコーヒーを飲みながらシュナイダーの通訳で白熊たちの事情を聞く。何でも二頭は夫婦のようだ。
なんだか見慣れない生き物が現れるようになったが、これまでと同じように暮らしていたようだ。普通にモンスターも狩ったことがあるようだが、肉が残ったり残らなかったりするので困惑していたらしい。
しかし他の獲物もモンスターに倒されて数が減り、倒せそうなモンスターは狩っていたそうだ。
「そうだよなぁ、人間だけじゃなくて野生動物だって大変だよな。さらにサバイバル度アップだもんね」
白熊のように素で戦闘力のある動物はまだマシかもしれない。これまでの世界だと食物連鎖の上位にいただろうから、以前よりは辛いことは間違いないけど。それまでの白熊の天敵といえば人間とシャチくらいか?
ポメラニアンの通訳で白熊と世間話をするようになるとは、世の中わからないものだ。
昼食後自分はそのままミニログハウスでお勉強をすることにした。白熊はどうするのかと聞くと、もう少しレベルを上げるため狩りをするという。
シュナイダーとゼロも暇なので白熊たちについて散歩をしてきたいようなので了承する。自分が勉強している間は暇だろうしな。
という訳で散歩に行く動物チームを見送り、学生時代以来のガッツリお勉強タイムに入ることにした。