作品タイトル不明
131話
「どうぞ、冷たいお茶です」
「あ、いえお構いなく」
外で立ち話もなんだと思い、三人をミニログハウスへ招いた。座布団を出して冷たいお茶を出す。雪女さんらしいので冷たい方が良いかと思ったのだ。
母親のふぶきさんを挟んで、右に双子の姉のせつさん、左に妹のゆきさんが座っている。向かい合う形で自分とシュナイダー、お松さんが座っていた。
「ネズミ女?」
「ゆきちゃん、失礼だよ」
「そういうあなたたちはなんですか。雪山なのに随分と薄着で怪しいですね」
ネズミ女というフレーズに少しムッとしたのか、お松さんがいつもよりトゲトゲしい。
「まぁまぁお松さん。ふぶきさん、そちらはなんだか複雑な事情がありそうなので、まずはこちらの事情からお話しますね」
「はい、ありがとうございます」
わからない言葉や表現があればその都度質問してもらい、なんとか異変が起きてからのこちらの事情を説明し終えた。
「と、まぁ自分が知っている範囲ではこんな状況ですね」
「なるほど……それでは、こちらのこともお話したいと思います」
薄々わかっていたが、ふぶきさんたちは人間たちからは雪女と呼ばれる存在らしい。
まさか昔話に出てくる存在が実在しているとは……それもビックリだが、カッパなんかのことを考えると雪女はモンスターとして現れると思っていたので、予想を外された。
実際最初にせつさんを見つけた時は雪女か? と思っていたのだ。強力な遠距離攻撃をぶっ放さなくてよかった。
山で隠れて暮らしていた彼女たちも、急に見たことのない化け物が現れ始め最初は戸惑ったそうだ。しばらく様子見していたが、人里近くまで行ってみても人間の姿はほとんど見えず、かわりに化け物たちがうろついていた。
ただ生きていくだけなら山からおりる必要もないが、種として存続していくためには人間の男性が必要で、力の強まる冬になって本格的に活動を始めたらしい。
「昔話で聞いたことがあります。本当に存在していたなんて、知らないだけで現実も結構ファンタジーだったんですねぇ」
「あの、私たちが怖くはないんですか?」
「え? そうですね。見た目だけなら色白な人間ですし、お話を聞いた限りでは人間とも共生してたんですよね? こちらに危害がなければそんなに怖くないです」
「ふふふ、お兄さんは怖いものが苦手なんですよ」
「その怖いもの筆頭のお松さんが何を言ってるんですか。お松さんは慣れたので幽霊でも怖くないですけど。あ、でも人形から抜けて枕元に立つのはやめてくださいね? 反射的に成仏させちゃうかもなんで」
「な、何を言ってるんですか?! そんなこと考えたこともありませんよ」
怪しい……お松さんも最近慣れてきたのとねこさんたちと付き合いがあるので、行動が結構アグレッシブになってきている。
それにこの慌て方はそのうちやるつもりだったな? 忠告しておいて良かった。朝気がついたら仲間が一人減っていたかもしれない。
「ふふ、おかしな人。あっすみません」
「お母さんが笑った」
「珍しいね」
「お兄さんはちょっと変だけど良い人ですよ!」
「いえ、気にしないでください。お松さんは気にしてください」
お互い大分打ち解けてきたところで、今後どうするつもりなのか聞いてみた。あの実力ならここら辺のモンスター相手に遅れをとることはないだろうし、問題は子孫を残す方法だよな。
以前までならこっそりと協力者を探せたかもしれないが、今は人類も存続の危機だ。各地の避難所に暮らしているので、訪ねていったら目立つだろう。
もし万一モンスターと間違えて攻撃されてしまったら……。いっそのこと周知されたほうが楽かもしれない。幸い自分は色々つてがあるので、協力的な避難所を探すことにも協力できそうだ。
隠れて暮らしているということを考えると、何か事情があるかもしれないし無理強いはできないが、一応提案だけはしてみる。
残念ながら新モンスターではなかったが、ここであったのも何かの縁だ。