作品タイトル不明
121話
翌日から鬼ヶ島のモンスターを狩り、レアポップのモンスターがいないか確認してみるが、それらしいモンスターは湧かなかった。
もしかしたらもっと低確率で湧くのかもしれないが、ここにはワープポイントがあるので来ようと思えば比較的簡単に来ることができる。
詰まったら先に進む派の自分としては、あまりここで長居しても意味がないと思い、開かずの扉は後回しにして、再度訪れることにして鬼ヶ島を後にした。
「うどん美味しかったです」
「やっぱり本場は違いますね。それに、まさか漁に出ているなんて……」
鬼ヶ島に行ったついでにうどんの国にお邪魔したのだが、なんとあの避難所からメガオクトパスをテイムする猛者が現れ、漁をして出汁の素材となる煮干しの生産を始めていたのだ。
その情熱には驚かされたものの、肝心のうどんの材料の小麦粉や醤油はまだ確保出来ておらず、うどんロスに陥っていた。
なのでまた集めた小麦粉を提供すると、うどんパーティーが開催された。お松さんは自分たちが鬼ヶ島攻略中に、チャボさんの食堂で色々とご馳走になったようで、現代の食事にもうるさくなってきていた。うどんはお松さんも納得の味だったようで、非常に満足した様子でうどんについて語っている。
今までの傾向から、小麦粉はヨーロッパやアメリカあたりに行けばドロップするモンスターがいそうな感じはするが、醤油は難しいな。日本は大分見てまわったが、今のところ醤油をドロップするモンスターには出会ったことがない。
食料はモンスタードロップから得られたり、各避難所で栽培用の拠点でなんとか賄おうとしているが、日本人に必須の調味料である味噌と醤油の確保には頭を悩まされているところだった。
調味料の類いも集めてまわっているのでまだ備蓄はあるし、避難所にも配ったりしてはいるが生産をしていないのでいずれはなくなってしまう。
その味噌や醤油を作るのに必要な塩や大豆も、現状ドロップするモンスターには出会っていなかった。
以前までであれば、スーパーに行けば数百円で買えた品も今では貴重品だ。特に塩は人間が生きて行くうえで必須だが、多くの日本人がなんとなく製造法はわかっても、そう簡単に大量生産はできないだろう。
人間の社会っていうのは、見えないところや当たり前と思っているところで、色々な人が支え合って生きていたのだなと改めて思った。
「うぅ、そろそろ寒くなってきましたねぇ」
不意にお松さんがそんなことを言い出した。そういえばお松さんを仲間にしてから数週間はたつ。暦の上では十二月をとうに過ぎている。そろそろ今年も終わりを迎えようとしていた。
一応ゼロに乗っている時は風魔法の防風で周りの冷たい風を防いでいるのだが、レベルや装備の影響もあるのだろうか。こちらは気にならないが、お松さんは寒いようでふわふわのシュナイダーにピタリと張り付いていた。
「どうします? 追憶の広間に避難しますか?」
「いえ、我慢できないほどではないので。それにシュナイダーがもふもふで程よく気持ちいいです」
なんだろう。露天風呂的な感じなんだろうか? 寒いと言いつつもお松さんはシュナイダーに張り付いて、気持ち良さそうにしている。
シュナイダーは男らしくされるがままだ。モテる男は多少モフられたくらいではすでに動じない。
「そうか、もうすぐお正月ですね」
「え? まだお正月は先ですよね?」
ん? ……あーそうか。新暦やら旧暦の違いで江戸時代と現代では元旦が違うのか。お松さんに現代のお正月を簡単に説明をする。
「はぇー、今時の人はみんな裕福なんですね。皆お餅をお雑煮にいれるんですか」
「まぁそもそもお雑煮自体食べないって人も大勢いると思いますけど。人それぞれですね」
それに今年はお餅が手に入らない。いや、収納にある餅米を突けば作れるか。そんなことを言うと、お松さんがお餅を食べたいと言いだした。
旦那さん探しも今のところ進展はないし、丁度地元にも近付いてきたところだ。年末年始は地元の避難所で過ごそうかなと、東を目指した。