軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ep26 影猫と東京への出発。

それから更に数日が経過した。

俺は相も変わらず七規と幸坂さんの二人とダンジョンに潜っている。

正直に言ってとても充実した日々だ。だって二人ともとんでもない美人。そんな彼女たちとパーティーを組んで楽しくない訳がない。

基本的には一泊二日で宿をとりつつ夜叉の森ダンジョンに潜っている。かなりハイペースであるが、そのおかげで二人の研修も終了。既に俺が居なくても自由に潜れるようになっていた。

だからと言って、パーティーを解散するつもりはないが。

そうして連日潜っていると、必然夜叉の森の探索者とも顔なじみになっていく。

特に仲良くなったのは先日知り合った三人。

Cランク探索者、 白木(しらき) 音沙(おんさ) 。

Cランク探索者、 江渡(えと) 詩織(しおり) 。

Cランク探索者、 友利(ともり) 冬華(とうか) 。

全員高校二年生で、特に七規が良く懐いていた。年が近い上に同性の探索者は少ないので、必然と言えば必然だ。

閑話休題。

ダンジョン以外では休日に実家へ顔を出したり、はたまた松本さんに会いに探索者ギルドに行ったり。友部さんに勉強を教えてもらったり、シャルロッテさんと遊んだり。

それなりに充実した夏休みを送っていた。

そして本日はというと――俺はパソコンの液晶に視線を向ける。

夏休みに入ってからの――否、松本さんたちと焼き肉に行った日からの日課だ。

画面に映るのは渋谷ダンジョン。そこではダークサラマンダーと呼ばれるBランク指定のモンスター相手に戦闘を繰り広げるのの猫の姿があった。

彼女はあっという間に脳天を貫いてモンスターを殺す。と、同時に右方向へとナイフを投擲し、遅れてカメラが向けられた先には、頭にナイフが刺さったオークが倒れていた。

『……ふぅ。どう、でしょうか?』

:えぐww

:最近の成長速度ヤバない?

:やっばww

:ネタじゃないレベルで強くて草

コメ欄は喝采の嵐。

当然だ。

俺から見ても今の動きは素晴らしかった。

(既にBランクの実力はありそうだな)

などと思いつつ、キーボードをカタカタ。

—————

影猫@Aランク探索者 ¥50,000

『かっこかわいくて☆最高☆だったヨ!(♡ω♡)/魔速型の起動も早くなってるし、初速も格段に良くなってるネ‼️びっくりしちゃった( ゜Д゜)‼️武器も速度重視の刺突が効いてるヨ❗ただ☆インパクト☆の瞬間、力がぶれてるから踏み込み→腰→上半身の動きに気を付けようネ☆参考までにTwitterのDMに動画送っといたヨ‼️(*^^*)』

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:相変わらずきっしょい

:ただガチっぽいのよね~

:前に猫ちゃんが軽く見せてくれたけど、動きは人外じみてたよ

:影猫がちでAランク説

:↑さすがにそれは……

:あってもBか?

:Bでも十分以上にすげぇんだよなぁ。まさかあのきしょい指示厨が……

賛否両論のコメ欄。

これでもかなりマシになった方だ。

俺がのの猫の後方腕組師匠面に就任した当初、コメ欄は荒れた。

当然だ。

一視聴者が女性配信者に近付いたのだから。

が、俺は別に直結厨ではない。

師匠であることを望まれたのなら、そうあるのみだ。

最初はコメントで教えていたのだが、それだと伝わり切らない部分もあった。

そこで俺は、夜叉の森ダンジョンに行った際、のの猫へ向けた身体の動かし方や魔力の流れを解説した動画を撮影し、彼女のDMに送信していた。

もちろん顔は隠し、左腕も氷の義手の上から長袖を着用して誤魔化す。

別にのの猫にはバレてもいい。

しかし今の俺は炎上しやすい。

ただでさえ一視聴者に指示を仰いで荒れ気味だと言うのに、何かのはずみでその相手が相馬創と分かれば、俺のアンチが彼女の配信に押し掛ける可能性がある。

——なんで俺にアンチとか居るんだろうね。

こんなにいい子なのに。

ちょっと人妻とご飯に行くことが多くて、美少女な後輩相手にキープ宣言しているだけなのに。……極悪人じゃねぇか。

何はともあれ念には念を。

のの猫にも正体がバレないようにするに越したことは無い。

編集に当たっては、以前探索者ギルドにモノクルの男のビデオレターを送りつけた経験が生きた形だ。

何事も挑戦するのは大事ってことだね。

それでも難癖をつける視聴者はいる訳で……一部を視聴者に公開してもいいか? とのの猫から打診が来たので、俺は許可。結果、俺の指示はある程度の信憑性があると認められているのが昨今の風潮だった。

なんて考えているとRINEが通知を伝える。

確認すると焼き肉屋で知り合ったのの猫古参ファンの『彼女さん』から。

【スパチャ気持ち悪いよ! 余計な記号減らして!】――【は、はい!】

現在俺は文章の健全化を目指している。

冷たい文章にならないようにしていたのだが、俺の文章はかなり気持ち悪いらしく、それを彼女さんと連絡を取りながら改善を目指していたのだ。

『動画の方確認しました。これ、踏み込みはどちらの足でも大丈夫ですか?』

—————

影猫@Aランク探索者 ¥50,000

『猫ちゃん(=^・^=)の場合は左足が良いと思うヨ‼️その( ◜ω◝و(و "キレイナアシで踏んで欲しいナ‼️ナンチャッテ(´>ω∂`)』

—————

『……』

『……猫ちゃん、返事返事!』

『ぁ、は、はい……ソウデスネ……』

あれ? 絵文字は減らしたのに……。

なんて思っていると彼女さんから再度連絡。

【どうしてそうなるの!? 多分『小気味よいジョークを挟んでやったぜ!』みたいに思ってるんだろうけど、間違ってるから! それ絶対ダメだから!!】――【わ、わかりました!】

ダメだったのか……。

ちらりとコメント欄を確認。

:露骨に顔引き攣ってて草ァ!

:動画見たけどスタイルは良さそうなんよな……でもそれを消して余りあるキモさ

:猫ちゃん、師匠を俺に変えないか?

:つか、なんで教える側が金払ってんの?

:↑金払うことに快感を覚える変態だから

やはりまだ気持ち悪いらしい。

因みに金に関してはただ猫ちゃんを支えたいだけだ。

『お金はいらないって言ってるんですけどね……一円も手を付けてないから、全部教わり終わったら手数料含めて全額返すつもりだよ~』

—————

影猫@Aランク探索者 ¥50,000

『やめテ‼️そのお金は全部♡猫ちゃん♡のだカラ‼️俺の気持ちを拒絶しないで( ;∀;)‼️』

—————

:そういうとこやぞお前

:スパムよりスパムしている影猫くん

:オジサン構文であることを除けば、それなりに分かりやすいのに……

【余計なのが戻ってるよ相馬くん!】――【す、すみません!】

方々からの声に俺は反省。

難しいぜ……。

だがしかし、俺は決してあきらめない!

頑張って普通になるのだ!

そんな感じで、のの猫の指導を続ける夏休みであった。

§

三日後。

「それじゃ、行ってくるよ」

「行ってらっしゃい、せんぱい。東京の悪い女の人にたぶらかされちゃだめだよ!」

「大丈夫だって」

「絶対だよ、絶対! もしクラっと来たら私を思い出してね! 田舎に残した可愛い後輩思い出してドキドキしてね!」

「わかったわかった。というか親同伴なのに変なことにはならないよ」

「むぅ……わかった。それじゃ、信じて送り出すね」

そんな寝取られ同人の導入みたいなこと言わなくても……。

俺は内心溜息を吐き、両親の車に乗り込む。

本日、俺は東京に出発する。

理由は明日開催される俺のSランク認定式に参加するためだ。

このために購入しておいた高級なスーツも持参して、朝早くから出発。

帰ってくるのは早くても明後日の予定である。

「それじゃ、行ってくるけど……七規も幸坂さんも研修が終わったとはいえまだ慣れてないんだから、夜叉の森に潜る時はあんまり深い階層まで行かないようにな」

「はーい。……えへへ、なんかせんぱいお母さんみたい」

「男なんだがなぁ」

「そうだよね、旦那さんだもんね」

「はいはい。ったく……行ってきます」

俺が苦笑を返すと同時に、車が出発。

「気を付けてね~」と手を振る七規に、こちらも手を振り返し、俺は東京へと向かうのだった。

「……こりゃ、孫の顔はすぐに見れそうだな」

「そうね、あなた」

七規との会話を聞いていた両親に揶揄われたが、無視。

割とあり得る未来だから生々しい事この上ない。

(それにしても東京か……)

東京と言えば渋谷ダンジョン。

そして渋谷ダンジョンと言えば……のの猫。

時間を作って渋谷ダンジョンに行ってみようかな?

もしかしたらのの猫と会えるかもしれないし。

……いかん、考えたら胸がどきどきしてきたぞ?

(流石にキモいから会いに行くことは無いけど……でも、一応のの猫の配信時間を確認しとくか)

そうしてDtubeを開いて彼女が発信している一週間の予定表をチェック。

するとそこには——。

『八月×日、遠征! 遠征先のダンジョンは着いてからのお楽しみにゃ~』

「……」

この世界ってクソだな。