軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

247.第4の魔王 枯死ユグドラシル

247.第4の魔王 枯死ユグドラシル

「エルフの森の長から緊急の連絡がありました! 世界樹ユグドラシルが枯死した模様です!!」

「ぬわんと!? それは一大事ではないか!?」

伝令兵の言葉に、ナイアがギョッとした表情を浮かべた。

それはある意味、月が落ちてくることを告げた時よりも、驚愕していると言っても良い表情である。

「おいいいい! 今は月の落下の方が重要だろうが! 世界樹高何だかしんねーが、んなもんどーでもいいだろうが!」

「はぁ、お前は本当に何もわかっていないのだな」

フェンリルが嘆息しながら言った。

一方の俺はフォローの言葉を口にする。

「そう言ってくれるな。俺の時代、つまり未来においては枯れてしまった世界樹が、エルフの森で大切に保護されてはいる。いちおう文献には残された知識ではあるが、俺や 彼女(アリシア) のように学ぶ意欲がない者にとっては余りなじみがない存在かもしれない」

「学ぶ意欲がないのは勇者として致命的では? まぁ、アリアケ様が勤勉であることは分かりますが」

「ん? ああ、まぁ……今はその議論は置いておこう」

「どういう意味だこらぁ!?」

疲れてへたりこんでいる割には、文句の声だけは大きいビビアのことは置いておいて、俺は言葉を続ける。

何せ、

「ビビア、実は世界樹には大きな役割がある。何かわかるか?」

「はっ! 知らねえなぁ」

「この世界のマナ生成だ」

「な、なにいいいいいいいいい!? はぁ!? おっかしいだろうが!? マナは自然に発生すんじゃねえのかよ!? 現に俺たちがいた未来でもマナは普通にあったろうが!?」

「まぁ、間違いではない。確かに俺たち生き物の体内にも魔力が存在するからな。そして、その魔力は死ぬときに放出される。つまりマナとなる。宇宙癌ニクス・タルトロスは、その生死の繰り返しを早め、マナを早々に星へ充足させようとしたわけだしな。だが、本来、この過去において、つまりこの神代においてマナを供給していたのは『世界樹ユグドラシル』なんだ。そして、その世界樹が今枯死しようとしている。いや、もう枯死したのだろう」

「な、何が起こるってんだよ!?」

「決まっている。マナの減少……。いや、違う。これは……魔王なのか?」

「魔王? はいい? 魔王は上空を今覆いつくそうとしている月なんじゃねえのかよ!?」

ビビアが叫ぶ。

「確かに、私も不承不承ですが、このビビアに同意します。魔王は既に空に顕現しています。アリアケ様」

彼らの指摘は間違いではないが、

「もっと柔軟に考えろ、みんな」

「なるほど、そういうことか、アリアケよ!」

「そうだ」

俺は頷く。

「柔軟に……なるほど、そういうことですか」

フェンリルは若干青ざめたように頷き、

「いいから説明しろよ! 仲間外れはよくねーぞ! おら!」

ビビアは顔を真っ赤にして声を張り上げた。

俺は賢者として答えを与える。

「第4の魔王・枯死 世界樹(ユグドラシル) が誕生した。第3の魔王 月(イルミナ) と共闘するつもりだろう」

「魔王が共闘!? 卑怯すぎんだろうが!? っていうか、枯死した 世界樹(ユグドラシル) が何をするってんだよ!? しょせん木だろうが!?」

俺の考えを、冥王ナイアが代弁する。

「恐らく、マナの吸収であろう。マナの放出が出来るのならば、当然吸収も出来る」

「は? それはどういう……」

「じゃーかーからー。この星のマナを全部吸い上げるっちゅーてるのじゃ。現代の魔法使いどもは魔法を使えんようになるし、マナで筋力を強化していた戦士たちも軒並み戦力低下する! っていうか、ぶっちゃけな、全員使い物にならぬ! この神代と言うのは『マナ』だより! すなわち魔力を利用することで戦力を底上げしてきたのだ! 未来人のそなたらには分からぬだろうが、神代の人間は生身ではレベルが低すぎて、とてもモンスターと戦うどころではないのだ!」

「俺たちはこの神代の人間が1000年間レベルアップした後の姿だからな。例え1年で1レベルしかアップしないでも、1%強くなるというのなら、1000年後には……ビビア、何倍の力になるか分かるか?」

「はぁ? まぁ2倍とかか?」

「2万倍くらいだ」

「……は?」

「2万倍だ。それが俺たち人類のそもそもの ギフト(才能) なんだよ、ビビア。星神のイシスも言っていただろう? 人間の強さはこのレベルアップにある。そもそも、彼女は1000年後に宇宙癌を倒すことを期待して、眠りについたのだからな」

「興味深い話ではあるが、しかし、この状況は相当なピンチじゃな。マナが急速に減少しておる。なるほど、第4の魔王は良い仕事をしておる。我は元々メッチャ強いから戦えるし、フェンリルも元々アビスから召喚したからマナを自己清々するから問題ない。じゃが」

「三十四重障壁作戦は無理だな。作戦はA級冒険者クラスの魔法使いの多重障壁による月落下防衛だった。だが、マナがないなら、そもそも俺の支援で増幅することもできない」

「ひいいいいいいい!? 終わりか!? 終わりなのか!? 人類は滅亡するのかぁ!?!?!?」

ビビアの悲鳴が戦場に轟いた。

その絶望の声を聞いた兵士たちも、事態を察してどんどん戦意を落としていく。

俺と言う救世主によって辛うじて持ちこたえていた精神が、ビビアの悲鳴によって一気に打ち破られようとしていたのだった。

「滅亡か」

と、そこでナイアが落ち着いた声音で、天空を覆わんとする第3の魔王の光芒を見上げながら呟く。

「のう、アリアケ。滅亡とは何によってもたらされると思う?」

そう問うてきたのである。