軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

233.凱旋と賞賛。しかし英雄に休息はなく

233.凱旋と賞賛。しかし英雄に休息はなく

「うむうむ! よくやったぞ! 下級勇者ビビア! そして、大賢者アリアケ! 聖獣フェンリルよ!」

「ありがとう、ナイア」

「ナイア様のご期待に沿えて光栄です」

「うむうむ!」

魔王イヴスティトルを討伐した俺たち一行は、滅亡種人類王国クルーシュチャへと凱旋した。

そして、魔王討伐の報を冥王ナイアへと告げたのである。

ご機嫌になるナイアが、官吏たちの持ってきていた書類をブワサッと宙へと放り投げた。

「めでたいめでたい! ぬわっはっははは! 我は機嫌が良い」

「官吏たちが泣きそうだがな」

「おっと、これは失敬した! わはははははは!」

一緒に官吏たちと書類を拾い出そうとして、逆に止められる冥王である。

一方で、

「下級勇者じゃねえ! 俺もアリアケみたいに、大勇者ビビアって呼ばねえか!!!」

独りだけ不機嫌な者もいた。

しぶしぶ玉座に戻ったナイアが吟味するように言う。

「ふうむ、確かに魔王討伐を成し遂げた勇者を『下級』としておくのもちょっとアレな感じじゃな。政治的にもなんかかっこ悪くて、宣伝しづらいし」

「だ、だろう!? なら!」

下級勇者ビビアが目を輝かせる。

それに対して、ナイアが「うむ!」と力強く頷いた。

「これからは『初級』勇者ビビアと名乗るが良い! どうだ、アリアケ王よ」

「俺としても今回のビビアの活躍には思う所もあった。あの真に迫った油断を誘う行為がなければ、あそこまで大きな隙を魔王が見せたとはお目得ない。ビビアはもはや下級ではない。初級クラス……。よちよち歩きからはいはいが出来る程度には成長したと見ていいだろう」

俺は優しく微笑みながら、ビビアを見やる。

「うむ! では決定である。良かったな! 『下級』改め『初級』勇者ビビアよ!!!!」

冥王の裁可が下った。

「ちげえええええええええええええ!!! ってか、どっちが上か分からねえええええ!!! 俺は超勇者ビビア様だあああああ!!!!」

ビビアが吼えている。

それに対してフェンリルが冷ややかな様子で、

「いや、アリアケ殿はどうも過大評価しているようだが、あの怯えた様子は普通にただ魔王にしょんべんちびりそうになってただけだと思うぞ?」

「む! そうなのか!? ではやはりしょんべん太郎勇者ビビアとするか?」

「しょ、初級でいい! はははは! 気に入った! 俺は初級勇者ビビア! 世界を救った英雄だ!!!」

よく分からないが、納得してくれたようだ。

「こうして弟子が少しずつ俺に追いついてくれるのは嬉しいものだ」

「何万年かかかりそうだがな、アリアケ殿……。というか、私には前進している前提に疑問があるんだがな」

フェンリルが肩をすくめながら言った。

と、そのやりとりを聞いていたナイアが嬉しそうに言った。

「ほっほーん。フェンリルが人を敬称で呼ぶとは珍しい! かー! これはアレじゃな!? 我には縁がなかったが、人の営みには欠かせぬアレじゃろう! なぁなぁ!」

「ち、違います……」

フェンリルが若干頬を赤くして答えた。

なんのことか分からないが、この二人にしか分からない会話だろう。

それはそうと、ナイアには気になることを報告しておくことにする。

魔王が散り際に放った言葉だ。

『邪神様……申し訳ありま……せん……。ですが……既に因子は十分に蒔かれ……ました……。人類を……する……第一条件『孤独』は……達成して……』

「と言ったんだが、何のことか分かるか?」

「うむ! 分からん!」

「即答だなぁ。俺には邪神というのがどうにも引っかかったんだが」

「はぁ!? なーに言ってんだよ、アリアケ」

初級勇者ビビアがやれやれといった風に言った。

「邪神ニクスの野郎が魔王を作り出したんだからよお。別になーんもおかしくねえじゃねえか!」

「ふむ! それについては我もそこなしょんべん太郎に同意しよう! 邪神が星神と相打ちとなり休息中ゆえに、魔王を放ったと見るべきであろうとな。その目的はどう考えても人類の滅亡であろう!」

「私は『第一条件』というのが気になります」

フェンリルが言った。

俺の抱いた違和感は大した問題だとは見なされなかったようだな。

(ナイアにさえ、か)

まぁ、今考えても答えの出る問題ではないことは確かか。

そんなことを考えていると、ナイアが言った。

「とにかく魔王はアリアケが倒した! 今宵はゆっくり休んでほしい! 未来に還るための方法は我が責任をもって考えておこう!」

「倒したのは俺だって言ってんだろうがー!」

そうビビアが叫んだ瞬間であった。

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「うわあああああああああああああああああああああ!?!?!?」

神殿が大きく揺れ、快晴だった空は暗転していきなり雷が鳴り響いた。

「何事か!?」

ナイアが声を上げるのと同時に、一人の兵士が勢いよく扉を開けて玉座の間に駆け込んできた。

「急報です! 発言のご許可を!」

「許す! 申せ!」

「はっ!」

その兵士は思いがけない言葉を口にする。

「正体不明の超巨大な化け物が突如海より現れました!!!」

「なんと!」

「その大きさは目測で1キロ!!!! 形状は蛇のような頭蓋と、鱗におおわれた体を持つ化け物です!」

「沿岸警備隊は!?」

「既に7割が損耗! 残りは撤退しております!!!」

「なんということか!!!」

ナイアの怒声が響く。

だが、その兵士は最後にとんでもないことを口にした。

「ナイア様。その申し上げにくいのですが……その化け物は自分のことをこう申しております」

「人語を介すか。して、なんと言っておるのか!」

兵士は悍ましい言葉を口にするように、冷や汗をかきながら言った。

「自分は『魔王』である、と」

その瞬間、祝杯をあげんばかりだった神殿には沈黙がおり、時折、人々が息をのむ声のみが響いたのである。