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作品タイトル不明

219.エピローグ/教主ジャルメル・屈辱の永久追放②

219.エピローグ/教主ジャルメル・屈辱の永久追放②

「あ、兄上! 聞いて下さい! 儂は何も悪いことなどしていない! それをこのアリアケという不敬者が儂をこんな目に! すぐさま処刑してください」

「……」

「あ、兄上! さぁ、早くこのアリアケを!」

「黙れ! 痴れ者め!」

「ひっ!?」

国王の威厳ある一喝で、教主は震えあがった。

教主ジャルメルの権威とは、要は国王の弟である、ということに尽きた。だから、様々な貴族が恩恵にあずかろうと、彼を担ぎ上げ、ちやほやとしていたのだ。

だが、その権力の後ろ盾である国王の逆鱗に触れたと分かり、ジャルメルは顔を青ざめさせていた。

「な、何をおっしゃいますか。儂はワイズ教の教主として勤めを立派に果たして……」

「それがあの孤児院の運営か?」

「なっ、なぜそれを……」

国王は頭痛がするとばかりに、額を押さえると、

「そこの大賢者が……。いや、中立国オールティのアリアケ王が教えて下さったのだ。まさかそこまで人の道を踏み外していたとは……。大方、ゆくゆくは王にでもなろうとしていたか……。あるいは、神にでもなろうとしていたか?」

「わ……」

その言葉に、ジャルメルの本性がむき出しになる。

「儂こそがこの世界で一番偉いはずじゃ! それなのになぜ旧国教ごときの教主におさまらねばならん! この国も、世界も、神すらも、儂にひれ伏すのが道理のはず! なのに、なのに、なのに!」

そう言うと、ジャルメルは俺に対して怨嗟のこもった凄まじい、恨みがましい視線を送ってきた。

「全てはそこの男が台無しにした! もう少しで! あとちょっとで! 儂が力を得て、すべてを支配する世界が訪れたというのに! そ、そうじゃ! ワイズ神様! 今からでも遅くはありません! 儂に神の力を! 必ずやワイズ神様の望む未来を実現してご覧にいれます! 人間が! いいや、儂が力によって全てを支配する、秩序ある最高の世界です! そこでは全て儂にひれ伏すのです。差別も何もありませぬ!!!」

忙しそうに、俺からワイズ神へと欲望の視線を向けた。

しかし、ワイズ神は、

「……」

何も答えずに目を閉じていた。

「ワ、ワイズ神様! どうして答えてくださらない! 今まであれほどの忠誠を尽くして来たのにぃ!!」

無様な絶叫だった。それに対して、ワイズ神は瞳をかすかにあける。

「なんだ、まだ終わっていなかったのか? 思わず意識の回路を閉じていたぞ」

「案外、おおざっぱな神だな、ワイズは」

「まったく、なれなれしい奴だ、アリアケ。だが許す」

彼女はそう言ってから、ジャルメルへと目をむくと、面倒そうに半眼で、

「汚らわしい人の姿をした獣よ。お前の役割は終わった。その罪に応じた罰を受けるのが、人の世にとり適当であろう」

「なっ!? 汚らわしい……獣ですと!? この儂を見捨てるのですか!?」

「最初からお前には人の負の側面があることは分かっていた。教主の器ではないことも。だが、霊長の歴史が続く今後数千年において、お前のような男が教主になることもあろう。リズレットやアリアケのような者たちが必ずしも権力の座にいるわけではない。それだけがお前の存在意義であった」

「な、な、な……」

自分の能力には何ら期待を抱かれていなかったことに、ジャルメルはわなわなと震える。

「そして、結論は得た。お前の役割も終わった。そのことだけは大儀であった。完膚なきまでに暴力による統治の不毛さを私に教えてくれた」

彼女はそう言うと、もう一度繰り返す。

「再度、告げよう。お前の役割は終わった。後は人の法に従い、アリアケ王かグランハイム王か、いずれの国の法かは、知らぬが、その裁きを受けよ」

「う、うがあああああああああああああああああ! そんな馬鹿なぁ! 儂は教主ジャルメル! 尊きワイズ教の教主なのだぞおおおおおおおおお! なぜアリアケごときに! くそおおおおおおおおおお!!」

現状を受け入れられないジャルメルが絶叫した。

裁きであるが、あらかじめグランハイム王に一任すると決めてある。

「黙れ、犯罪者ジャルメルよ。この度の沙汰を言い渡す」

「う、うぐぐぐぐ」

王の命令に、ジャルメルは悔しそうに顔を歪めて、その言葉を聞く。

「ジャルメルの計画は国家転覆に等しく処刑が相当である。だが、王弟であり、教主を処刑したとなれば民の動揺は大きい。ゆえに、終身刑とする。だが快適な暮らしなどできると思うな。お前が孤児の子供たちや、信徒たちにした様々な行いは全て白日の下にさらけ出されている。それと同じ生活を一生監獄でするとよい!」

それは事実上の処刑宣言であった。

「そ、そんな。そんな。儂の計画が……。神になるはずが……。世界は儂のものになるはずで……」

「聞くに耐えん。神々よ、そしてアリアケ王よ。手間をかけた。後はこちらで処理しよう」

「いいのか?」

俺の問いに、グランハイム王は苦笑した。

「世界を救ったお前とその仲間たちに、これ以上、こんな小物の相手をしてもらい、時間を奪うわけにはいかぬ。アリアケ王は特にこれから仕事が山積するであろうからな」

王のその言葉に、

「え? 俺はもうそろそろ解放じゃないのか?」

そう目を丸くする俺の腕を、後ろからワイズ神とブリギッテが、がしり、と掴んだのだった。

「「宗教の習合の段取りについて相談しましょう」」

「俺は入る必要ないだろう?」

と、何とか逃れようとするが、

「ダメに決まっています。話がこじれないように、絶対に隣席をお願いします」

ローレライにも後ろから羽交い絞めのように抱き着かれるのであった。

やれやれ、いつになったらゆっくりできるのやら。

俺は苦笑するしかないのであった。