作品タイトル不明
160.すべてがつながるとき ~凶《まが》つ魔を討て『聖弓ミストルテイン』!~
160.すべてがつながるとき ~ 凶(まが) つ魔を討て『聖弓ミストルテイン』!~
「偽神だと?」
その言葉に、ニクス・タルタロスはこれまでの余裕を消して反応する。
「不敬な! 人間如きが! 星の表面に住む虫けら程度が。この全宇宙を支配する儂を偽神呼ばわりとは!!!!」
激高により秘められた魔力が暴走し、次元が振動する。それほどの 瞋恚(しんい) である。だが、
「だからだ。お前は神が何たるか、ずっと誤解している」
「ご、誤解だと」
「神は星の生物を滅ぼすことはあっても、星自体を消滅させることなどしない。なぜなら、神とは星に生まれ落ちた生命の管理と破壊をつかさどる存在だからだ。星自体を破壊する神は、もはや神ではない」
「馬鹿な! 儂は神だ! 儂ほどのっ……! 俺ほどの存在が神でないはずがないっ……!!」
「お前はただ宇宙を漂流する化け物だ。しかも、ずいぶんと臆病な、な。この次元に隠れて端末のみを現実世界で動かし、暗躍させていた。それは己の消滅を恐れてのことだ。千年も、次元に響き渡るほどの空腹を鳴らしながら、なお、結局自分から表舞台に出ることは無かった。そうだろう、臆病者の偽神ニクス」
「お、おのれえええええええええ!!! アリアケ・ミハマ! たかだか千年の時を超えた救世主ごときが俺を馬鹿にすることは許さんぞ!!!!!!」
そう言いながら、その大剣を振りかざし、俺を仕留めるための一撃を放とうとする。
「危ない! アー君!」
アリシアの悲鳴が聞こえる。だが、一方の俺は、
「ああ」
俺は安堵した。
「やっとか」
その声に、意味が分からないとばかりに、ニクス・タルトロスはピクリと反応する。だが、その挙動を止めることは出来ない。先ほどとは比べ物にならないほどの一撃を、この攻撃にかけようとしているのだから。
だから、
「俺の言葉の意味を理解してももう遅い」
俺は大賢者の杖、聖杖『ケルキオン』を大地へと突き立てる。
「お前は防御しなかった。そして、決してその玉座の前から動かなかった。なぜだ?」
俺はそう呟きながら、ラッカライを呼び寄せる。
ラッカライは俺の意図をすべて理解している訳ではないにもかかわらず、やはり、彼女の命より大切な聖槍ブリューナクを俺へ手渡す。
「次元が振動するほどの空腹の音を響かせながらも、この千年、空腹に耐え、あくまで端末体を動かしてなお、本体は決して玉座から動かなかったのはなぜだ?」
何よりも、
「ビビア。聖剣ラングリスを、ここに」
「くそが! くそが! くそが! これは俺のなんだよ! なんでお前にやらなきゃならねえ!!!」
罵詈雑言がかえってくる。しかし、
「あくまで貸し、だかんな! 俺がいなかったら、これからお前が何するつもりかしんねーが、その策は成功しなかったんだ! そこらへん忘れんじゃねーぞ!!!!!」
ごちゃごちゃと言いながらも、聖剣を俺へと手渡した。
3つの聖具を手にしながら、俺は今まさに、この次元そのものを崩壊させるほどの魔力を込めた一撃を放とうとするニクスを見上げる。
「何よりお前は、この第999次元階層が最奥と言った。それが決定的だった」
俺はそう言って、3つの聖具を目の前に掲げる。
「999次元階層が最奥の次元などと言う根拠は一つもない。一見、言われると思い込みそうだが、何ら根拠がない。そして、知っているか、ニクス・タルタロス」
俺はそう言うと、ビシリと、奴の後ろにある玉座に視線を向けた。
偽神ニクスではなく、その後ろの玉座に。その行動に、ニクスは初めて狼狽の表情を浮かべた。
「玉座の後ろには普通隠し通路がある。自分の命が最後助かるための切り札としてだ。無論お前も例外ではない」
「!? そういうことですか! だから、ニクスは玉座から動かなかったし、防御自体が不要だった。ここにいるのはあくまで本体を守るためのガーディアンとしての肉体! だからこそ、本体を守るために千年もこの次元を離れることもできなかったってわけですか!?」
「そうだ。この次元階層の向こう側。第1000次元階層、玉座の後ろに、奴の弱点がある!」
そう俺は断言したのだった。
「だ、だからどうした。それがわかったとして、我が弱点を攻める手段などあるまい!!!! 我が弱点は玉座の先にあるとて、遥か彼方にある!!!! 時間切れだ!!!!!!」
激高するように言う奴の言う通り、もはや時間はない。奴は全力の『 畢竟星の終焉(アカシック・ノヴァ) 』をもう一度放つつもりだ。その攻撃を防ぐアリシアの回復はまだ済んでいない。
ただ、
「気づかないのか?」
俺はやはり微笑みを崩さない。
「すでにお前は玉座の位置から移動するという致命的なミスを犯しているんだぞ? 何のために勇者パーティーが、お前の実力を推し測るような戦い方をしたと思う? 賢者パーティーがお前の全力を引き出させようとしていたと思う。すべてはこの時のため。玉座より引きはがし、 射線(・・) から、 盾(ガーディアン) であるお前を移動させるためだ」
「射線……だと……? 馬鹿な、次元を切り裂き、魔を 穿(うが) つほどの魔力と聖属性の武器がどこにっ……!? ……まさか! その聖具を集めたのはっ……!」
ニクスは俺が集めた3つの聖具を見つめ、初めて露骨に狼狽する。
「馬鹿な! それは! ただの剣! ただの槍! ただの杖ではなくっ……!!! 儂を 謀(たばか) ったか、大賢者! 星の女神!」
一方の俺は宣言するように言った。
「だから最初に言っただろう。間抜けな神よ、と! いや神を騙るただの臆病なモンスターだったな、偽神ニクス・タルタロス!!!」
「何をする気だ! まっ、まさか!?」
「そう、これこそが星の女神イシス・イミセリノスが最後まで隠し通した秘策! お前がいくら探しても見つからなかった最後の聖具のありか!!」
俺は叫ぶ。
「スキル≪融合≫を聖具へ使用する!!!」
聖具はもともと3つ!
だが、
「この3つを組み合わせることによって、 次元を切り裂き(聖槍ブリューナク) 、 魔力をたたえし(聖杖ケルキオン) 、 闇を穿つ(聖剣ラングリス) 『聖弓ミストルテイン』と 合聖(リユニオン) する!!
聖杖が魔力の 弦(げん) 、聖槍が 弓幹(ゆみがら) と成り、そして、聖剣が矢へと変形したのだ。
「や、やめろ! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ああああああああああああああああああああああ! お、おのれえええええええ! アリアケぇぇええええええええ! 最初、あの頃、出会った時に貴様を殺しておけばああああああああああああ!!!!!」
「残念ながら」
奴は全力の『 畢竟星の終焉(アカシック・ノヴァ) 』を放とうとする。
だが、俺は微笑みながら、
「俺はお前ごときに倒されるほど愚かではない」
そう言って、矢をつがえる。
「消えろ! 宇宙癌ニクス・タルタロス! その醜い野望と共に!!」
と同時に、
「アー君!」
「旦那様」
「先生!!」
「主様!!」
「アリアケ様!!!」
いつの間にか集まっていた賢者パーティの皆が、聖弓ミストルティンの弦を引き絞り、玉座へと聖剣の弓を放った!!!
―――――――瞬間。
第999次元。
無の次元と呼ばれる空間を切り裂き、その先にある、第1000次元が一瞬ではあったが姿を現した。
そこにはまるで何もない空間。あるいは、これが宇宙という存在なのかもしれないが、一切の光なき暗黒が広がっていた。
だが、そこにただ一つ、脈動し、 蠕動(ぜんどう) する、奇妙でたくさんの血管のようなものが覆う球体のような何かが浮いていた。
それこそまさに、次元の最奥に隠された、宇宙癌ニクス・タルタロスの心臓。
偽神の心臓こそが、星そのものとなり、第1000次元に浮かんでいたのである。
だが、その星に生命の息吹はなく、ただびくびくと脈動する心臓のみが星のごとく浮かぶのみ。
やはり、 奴(ニクス) は神ではない。
生命を宿せない。
ただの宇宙を 蝕(むしば) む漂流する 宇宙癌(モンスター) でしかないのだ。
ならば、
「頼む!」
「やめてくれ!」
「俺は!」
「まだ!」
「死にたくないいいいいいいいいいいい!」
そんな、偽神ニクスの端末や本体たちが、口々に上げる断末魔の叫び声を聞きながら、俺たちは聖弓を解き放つ。
そして、
『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
星の爆発(コスモ・ノヴァ) ともいえるような圧倒的な光の奔流が、暗黒の宇宙をかけめぐる。
第1000次元階層に浮かぶ宇宙癌ニクス・タルタロスの心臓は大爆発を起こしたのだった。
そして、その奔流にのまれるように、俺たちの意識もまた、まばゆい光の中に飲み込まれて行ったのである。