作品タイトル不明
145.勇者パーティー仲間割れをする
145.勇者パーティー仲間割れをする
~勇者ビビア視点~
「おっらあああああああああああああああああ!!!!!」
ズバアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
『ギアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?』
俺の聖剣を受けた魔族どもが、一太刀で一斉に数匹ばらばらになった。
くひひひひ! 思った通り、こいつら俺の力に! 聖剣に! 全く歯が立たねえみたいだな!
それに。
「ほうら、この無敵の拳を受けて、天まで飛んで行きなさぁい!!!! 昇(テンペスト) 天撃(・グローリア) !!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
『グアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?』
「ファイヤーボール乱れ撃ちいいいいいいいいいいい!!!」
ちゅどどどどどどっどどっどどどどどんんんん!!!!!
『アギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!?!?!?』
デリアとプララの攻撃もかなり効いてる!
無論、俺の活躍が一番かっこよく、イケてるわけだが、その下僕どもが活躍するというのは、俺の評価が上がることでもある。
そう考えて俺は唇を思いっきり歪めて笑う。
と、その時、一匹の魔族が抜け出した。
瀕死でありながらも、俺たち前衛を振り切り、後衛の兵士どもを狙ってるみてえだ。
だが、
「甘いわあああああああああああああああああああああ!!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
『ンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?』
巨岩とでも評すべき筋肉の塊が、思いっきりその瀕死の魔族へタックルをかました。
余りの威力に魔族の体は再起不能なほどに痛めつけられ、吹き飛ばされる。不死であろうがもはや立てないことは明白だ!
「エルガー! ご苦労!」
「うむ! 勇者も素晴らしい太刀筋だな!」
そのやりとりに、後衛の兵士どもは一斉にワッと歓声と称賛の声を上げる。
「すごい、さすが勇者様たちだ!」
「不死と言われた魔族たちをこうもあっさりと退けて行くなんて!」
「仲間との連携も完璧だ。これが勇者パーティーの力なんだな!」
やれやれ。
俺は嘆息し、たしなめるように告げる。
「騒ぐな、この程度のこと。俺たちには出来て当たり前だ。完璧な戦術と冷静な判断力。そして仲間との連携。これらが出来て初めて『戦い』と呼べるものになる。ま、俺たちの真の意味での『戦い』、歴史書に残るこの戦いを目にすることを誇りに思い、精進するといい」
「は、はい! 勇者様!!!!!」
「まったく」
俺はフッと肩をすくめて、前に向き直る。
んあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ぎもぢいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
激しく唇を歪めてしまう。
「これだよ、これえ。あああああ。久しぶりだぜええ。く、くくく。そうだ、これが俺の真の姿なんだ。今までの失敗は全部たまたま運が悪かっただけだ。あるいはアリアケの陰謀なんだ」
「その通りですわ!」
デリアが激しく同意した。
「こうやって最強の私たちがパーティーを組んで負けるはずがないのですわ! 魔族に対して聖剣という切り札を持ち、そして防御無効や火炎といった『不死』であろうと再起不能に至らしめる力を有するわたくしたちにとって、魔族軍など恐るるに足りませんわ!」
「だよね! しかも、あたしたちは幼馴染! 阿吽の呼吸で完璧に連携して戦える!」
「何よりも戦いに慣れているからな。そんじょそこらの駆け出し冒険者や兵士とは、 モノ(筋肉) が違う」
ああ、その通りだ。
俺は更に激しく唇を歪ませて、
「楽勝だ! 俺たちの絆の力の前に、魔族どもは城塞にたどり着くこともなく、全滅! 敗走! するだろうよ! ぎゃーっはっはっはっはっはっ……!」
「危ないです! 避けなさい!!!」
「は?」
ティリスの悲鳴とともに、
バキ!!!
「……は?」
俺は地面を激しく転がる痛みを、何だか他人事かのように感じながら、もう一度疑問の声を口にした。
そして、次の瞬間、
「んっぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! いっでえええええええええええええええええええええええええ! いでええええええええよおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」
全身に走る痛みに耐えかねて、悲鳴と言う名の絶叫を戦場に 木霊(こだま) させたのであった。
「ちょ、ちょっと、勇者、どうなってるのよ!?」
「うわっ! 勇者めっちゃ血まみれの泥まみれ! ダセーじゃん! 何やってんだよ勇者!」
「大方、倒したつもりになっていて、斬ってなかった敵がいたんだろう。まったく間抜けな奴だ!」
「う、うるせえぞ!!」
俺は体中泥まみれになりながらも、恥辱に顔を真っ赤にして立ち上がる。
そして、
「てめーらこそ、何してやがる! 俺に尽くすためにお前らはいるんだろーが! 敵が俺を攻撃しようとしてきたら、命を懸けて守るのがお前ら肉壁の役目だろうがあああああ!!!」
俺は正当な主張を怒声とともに放つ。
すると、
「あ、あれ?」
「ゆ、勇者様?」
「さっきまで、冷静な精神とか……。阿吽の呼吸のパーティーの連携とおっしゃっていたような……」
俺たちを見ていた兵士どもが、なぜか静まり返り、何かボソボソと言い始める。
ち、ちい!
「あ、は、ははは。なーんてな。今のはちょっと油断しただけだ。あ、慌てる必要はねえ! 言ってるだろう。俺の聖剣ラングリスは魔族どもを一掃する力を持ってる! たまたま、運よく俺の剣を潜り抜けた奴が俺に一撃を入れただけで、もうこんなことはっ……!」
しかし、その言葉の最中に、
「どうやら、そう簡単にはいかないようですよ!」
「……は?」
俺はそのティリスの言葉に混乱する。
何言ってやがる!とティリスを怒鳴りつけてやろうと一瞬考えたが、目の前の光景が信じられず、ただただ唖然とする他なかった。
俺は混乱していた。
いや、俺だけではない。
「な、なんでですの……。わたくしの防御無効で体内の組織はもはや機能不全のはず」
「そうだよ、あたしのファイヤーボールを何発も直撃させて再起不能にしてやったはずなのに……こんなのズルじゃん!!」
「俺の筋肉で粉々にしてやったはずが……! 立ち上がれるはずがっ……!」
パーティーメンバー全員が精神の均衡を崩し、混乱と恐怖に包まれていた。
それも仕方ないだろう。
なぜなら、目の前で先ほど倒したはずの魔族どもが、一匹残らず復活しているのだから。
ある者は頭をその場でくっつけ、ある者は骨が砕かれた状態で前へ前へと進む。ファイヤーボールの火炎に体を燃やされながらも進む魔族すらいるのだ。
「お、おい! デリア! てめえパーティーの参謀役だろうが! 何かいい案を出せや!」
「え、ええ! そうですわね! ああ、思いつきました、まずは一旦プララとエルガー! あなたたちが前衛に出て時間を稼いで頂戴。私は一旦勇者を治療して、すぐに戦線に復帰しますわ」
「ざけんじゃねーよ! あんたまたあたしを置いて逃げる気だろ! あの洞窟の時みたいによ! は、はは! ははははは! 今度は騙されねーぞ! 騙されねえ! 騙されるくらいだったら、あんたらから先に焼いてやんよおおおおおおおお!」
「やめろ! プララ! この馬鹿が! お前たちは冷静さを失っている! まずは俺が兵士たちの士気を維持しつつ後退する! 大丈夫だ、お前たちなら戦線を維持することは可能だ!」
「エルガー!!!!! てめえ盾役だろうが!!!! こんな時に役に立たねえならクビだ! クビィイイイイイ!!!」
「はぁ!? 何を言うか! 俺は建設的意見を述べているだけだ! 俺は勇者パーティーだけでなく、『国の盾』なのだからなぁ。そのつらい役割をまっとうするためにこうして苦渋の決断をしているだけだ!」
「あなた最低のクズですわ! エルガー!」
「さわんじゃねーよ! キモイ!」
「うるさい! ほら前にっ……!」
ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー!!!!
俺たち勇者パーティーたちの絶叫が戦場に木霊する。
「お、おい。あの勇者パーティー。戦場で仲間割れをしだしたぞっ……!」
「き、絆とか、連携どころか、即効で仲間を見捨てようとするなんてっ……! た、ただのクズでしかないじゃないかっ……!」
「しかも、冷静さどころか、常識さえ持ち合わせていない。あんなのが、この国の勇者パーティーだなんて。う、嘘だろう……」
「その上、聖剣が役立たずだなんて。まったく戦術的にも役立たずだ」
「「「「何しに来たんだこいつらはっ……!」」」」
何やら兵士どもが俺たちに対して何か言っているが、もはやそんな声は俺の耳には届かない。
今は俺という人類の希望がいかに生き伸びるかが大事だ。
そのために、いかなる犠牲を払うことも許されるのは自明の理というものだろう。
だが、そんな正論を怒声と共に吐き出していたのだが、
「皆さん! 何をやっているんですか! 戦闘中ですよ! せめて前を向いてください!」
ティリスの悲鳴が耳朶をうった。
だが、
「ひっ」
「あっ」
「げっ」
「ぎっ」
俺たち四人は喉から変な悲鳴じみた、豚のような音を上げるのが関の山だった。
目の前に迫っていたのはオーガ・デビル。
巨躯を躍動させ、その得物たる大鎌を俺たちに対して横なぎに振るったのだ。
それはもはや、俺たちの可視速度を超え、絶命を確信させるに十分なものであった。
そして。
俺たち勇者パーティーの命は。
こうして南部戦線で華々しく散って……。
「なーにを勝手にエピローグしているのだ、勇者ども!」
「はひ?」
俺はこれまでの生涯で一番間抜けな声を上げることになった。
オーガ・デビルの鎌を、あろうことか俺たちの鼻先で、指先一つでとめていたのは。
あろうことか。
「勇者を倒すのは魔王。魔王を倒すのは勇者なのだ。これくらいの常識はわきまえておくのだ。賢者アリアケの不出来な弟子、勇者ビビア」
この勇者を助けたのは、宿敵であるはずの魔王リスキス・エルゲージメントだったのである。
俺は命が助かったとホッとするのと同時に、
「お、おい、あれはもしかして……」
「あ、ああ。魔王だ。手配書で見たことがある」
「あろうことか、勇者が魔王に助けられたってのか。あのクソ勇者は……。どこまで人類の恥をさらすんだ」
そんな声を兵士たちから聞かされて、改めて屈辱と恥辱で頭を思わずかきむしり、顔を真っ赤にして悔しがったのである。