作品タイトル不明
143.人魔同盟・盟主アリアケは全種族混合部隊を率い、盛大に見送られ出陣する
143.人魔同盟・盟主アリアケは全種族混合部隊を率い、盛大に見送られ出陣する
「盟主アリアケよ、頼んだぞ」
「了解した。グランハイム王。だが、こうしてすぐに人類・魔王国連合軍として出陣出来るのは、あなたの英断があってのことだ。感謝している」
俺の言葉に、
「そなたがそれを言うのか」
王は苦笑する。
その言葉の意味が分からずに、俺は首を傾げた。
「分からぬか? 賢者というのは遠くが見えすぎるせいで、自身が見えぬのかもしれぬな。そなたが起こした数々の奇跡と偉業は、この王国を何度も救っているのだ。儂とてそれくらいは理解しておる。ゆえに、儂に英断を促したのは、ほかならぬそなたである、賢者アリアケ・ミハマよ」
そんなものだろうか? 俺は腑に落ちないとばかりに、
「いや、俺はそんな大したことはした覚えはないのだが?」
俺は淡々と事実を伝える。
が、その言葉に、王は、
「こやつはいつもこうなのか?」
と周囲に聞く。
それに対して、これから俺とともに南部戦線へ向かう面々は大きく、
「はぁ~~~~~~~」
ため息をついて答えたのだった。
「魔の森から街を救いましたよねえ?」
「エルフの森を救って頂きました!」
「獣人に圧政を敷く領主を倒したのじゃ」
「聖都で復活した悪魔を撃退しましたよ先生?」
ふ~む、確かにそうだが、
「賢者として当然のことだ。それがどうかしたのか?」
その言葉にやはり全員が、
「はぁ~~~~~~~~~~~~」
と更に長々としたため息とともに、ブリギッテがまじめな顔をしながら、
「もう少しご自身の活躍を真剣に吟味すべきですね。周囲を見過ぎて、自分のことがおろそかになっているのではないですか!?」
そう指摘してくるが、やはり何を言われているのかよくわからずに首を傾げるしかない。
それよりも、だ。
「こうして、グランハイム王や領民たち、それにランド伯爵まで駆けつけて来てくれたのは嬉しい限りだ。武具もこれほど融通してくれたことには感謝している」
「そなたのためだ。出来る限りのことはさせてもらう」
「これくらいはさせて頂きませんとね。でないと……」
ランド伯爵が、俺の後ろに並ぶ軍勢を見ながら、苦笑しつつ言った。
「アリアケ様が数日で集められた、この奇跡の軍団を装備なしで出陣させるなんていう、領主の風上にもおけないことをしてしまうことになりますからね」
彼はそう言って、まるで目の前の光景を、やはりまだ信じられないものを見るかのように言った。
それも、まぁ仕方ないだろう。
俺たち賢者パーティーの後ろには、合計で500人程度の軍勢がいる。
数自体は問題ではない。
問題はその中身であった。
「いや、本当にこれは凄いことじゃ。今までこれほどの種族が手を組み、部隊を形成したことがあったろうか。あるとすれば、それは……」
「神話の中だけの話ですね」
「大仰な言い方だなぁ」
俺は呆れるが、王もランド伯爵も真剣な表情だった。
「いえいえ、アリアケさん。十分前代未聞なんですから、そこは認識を改めてくださいね!」
隣のアリシアが俺にツッコミを入れてきた。
ふうむ、彼女が言うのならばそうなのだろうか?
そんな会話をしていると、それぞれの部隊のリーダーから報告が上がってくる。
「志願した冒険者から100名すでに準備は出来てますぜ、アリアケの旦那!!! また『メディスンの町の奇跡』を見せてやりましょうや!」
俺が魔の森から、メディスンの町を守ったことは、『メディスンの町の奇跡』と冒険者の間で広く知られているらしく、その時の縁でオールティにやってきた冒険者は多い。今回志願した冒険者たちもその際に縁を結び、俺を信頼する荒くれ者たちだ。
「エルフ軍50名も準備できています、アリアケ様」
セラも報告をする。普通エルフは人間とは非協力の関係にある。だが、森を救った俺はすでにエルフの盟友として認められていて、今回の呼びかけに快く応じてくれたのである。このことは、人間たちをひどく驚かせると同時に、俺の影響力が甚大なものである印象を持たせてしまったようだ。
無論、彼らは少しばかり感謝してくれているだけだ。大したことをしたわけではないので、そこまで恩義を感じている訳はないと思うのだがなぁ……。
「ゲシュペント・ドラゴンも1匹、連れてきたのじゃ。本来は人の戦に興味のないドラゴン種族じゃが、今回は特別なのじゃ。のう、フレッド~?」
「はい、この戦いで自身の罪を償うつもりです」
聖都セプテノで悪魔フォルトゥナ側について戦ったフレッドであった。今は人の姿をしている。
彼は王になりたいという欲望を利用されて、数百年、悪魔によって心を操られ、裏切った。コレットを追放したのも彼が一枚かんでいるそうだ。
そして、その罪のつぐないとして、こうして今回の戦いに参戦する運びとなったのだ。
「ところでアリアケ様。コレット様の父上……シャーロット王より。伝言がございます」
「そうか。聞こう」
気性の激しい彼女のことだ。激励か何かだろう。
「早く孫がみたい、とのことです」
「はい?」
どういう意味だ?
「うにゃあ!?!??」
と、なぜか俺以上に、コレットは顔を真っ赤にして、バタバタと手を振り回している。
ドラゴン同志では通じる、一種のコミュニケーションなのかと思ったが、そうではないらしい。
謎だ。
そして、最後に、
「ハス、アンも準備は出来たか?」
「はい。『暁の鈴』を鳴らしてくだされば、いつでも駆けつけると言いました通り、獣人族200名、すでに準備は整っています!」
暁の鈴。それは犬耳種族の彼ら獣人が本当に信頼する者だけに与えるアイテムであり、その鈴が鳴らされればいかなる場合でもかけつけるというものだ。
俺がオルデンの街で差別されていた彼らを助けた際に、その鈴を譲り受けたのである。そして、今回その鈴を使用し、彼ら獣人たちの戦士を呼び寄せたのだ。彼らは力と素早さのある、実に頼りになる戦力である。
「頼りにしているぞ」
「はい! 主人に頼りにされるほど嬉しいことはありません!」
「そうだね。みんな、頑張るよ!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお! 主人の為に粉骨砕身するぞおおおおおおお!!!!」」」」
異様な盛り上がりだった。
俺への信頼が厚過ぎて、士気が異常に高い。
「とんでもない人たらしですね、アリアケ様は……」
ローレライがポツリと言った。
「いや、さほどのことはしていないんだがな……」
単に悪い領主をぶっ飛ばしただけだ。
「そうですか? ちなみに、お母様。リズレット様からも援軍が来ています。聖都を助けてもらった借りをちょこっと返済しないと気が済まないそうですよ。ブリギッテ教徒150名が合流しています」
「そうか。彼らの力は先日の悪魔との戦いでよく分かっている。頼りにしているぞ」
俺は集まってくれたブリギッテ教徒たちに、ちょっと冗談めかして肘を曲げて筋肉を盛り上げる仕草をしてみせる、が。
「「「「おおおおおおおおお! もう一度英雄と戦えるとはなんという僥倖! 故郷を救われた恩をここで返すのだ。みんなプロテイン・ポーションは持ったかあああああああああ!?」
なんだか凄い熱気がはねかえってきた。
「わざとですか、アリアケ様。そういうのって。どうでしょうか? 教会の次の幹部を狙ってみるというのは? ほら、パーティーメンバーに手ごろな少女もいますよ?」
「????」
俺は理解できないので、とりあえず首を傾げておく。
なお、ローレライはため息をついた。
うーん、なぜだ。
まぁ、ともかく、だ。
こうして俺たち人魔同盟軍は、あらゆる種族の協力を得て、強大な軍勢となったのだった。
数は魔族軍には到底足りない。
だが、非常に士気の高い、戦い慣れた軍団であり、おそらく余り戦いの発生していなかった南部戦線の兵士よりも戦える 戦闘集団(レギオン) である。
そして、沿道には、王とランド伯爵が並び、俺たちの出陣を 言祝(ことほ) ぐ。
同時に、発展したオールティの町の家々からは、戦勝を祈願する花々が舞い、俺たちの行く末を盛大に祝った。
大変な大歓声を受けながら、俺たち人魔同盟軍。
いや……。
この同盟軍の盟主アリアケが率いる『アリアケ軍』は華々しく出陣したのである。
ここに不死の軍勢を打倒すという希望を一心に人々より受け、アリアケ軍の行軍が開始されたのだった。