軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68.鑑定士、本気の魔族を闘気で蹴散らす

精霊メイと契約した、数時間後。

「よし、【準備】完了」

俺は精霊の剣を出しておく。

『ねえゆぅちゃん、どーして、すぐに下におりなかったのですかっ?』

脳内からメイの声がする。

彼女の精霊核は取り込んである。

目の中に入っているのだ。

『ええっとぉ、アインさん? どーして、ですか?』

「敵が来るって、アリスが未来視してくれたからな」

精霊を4人取り込んだからだろうか。

結構遠くの未来まで、見ることができるようになってきた。

【敵】がここに来ることを、千里眼で見ていた。

少ない時間を俺は【修行】に当てたのだ。

と、そのときだ。

バサッ……!

巨大な竜が、俺の目の前に着地してきた。

その上に、赤毛の魔族が立っていた。

「やぁアイン。久しぶりだね」

上級魔族、イオアナ。

魔族の中でもかなりの実力者だ。

「この間はよくもボクに恥をかかせてくれたね。お礼に今日は、最初から本気で殺してあげる」

イオアナが俺をにらみ付ける。

その瞬間……。

ゴォオオオオオオオオオオオオオ!

やつの体から、半透明の【何か】が噴き出す。

「残念だけど本気を出したボクに、君は絶対に勝てない。なぜならボクと、君との間には大きな【違い】があるからさ」

「へえ。それはなんだ?」

「教えると思うかい? 今から死ぬ君は知らなくて良いことだからね」

体から噴出した【それ】が、イオアナの両足に収束していく。

「これが見えずとも肌で感じてるんだろ? ひしひしと、死の足音が聞こえてるんじゃないかな?」

「…………」

「ははっ……! 何をされるかわからない恐怖で、何も言えないかい。さて、蹂躙を始めようか」

グッ……! とイオアナが身を縮める。

「未来視も動作鑑定も意味ないよ。君が視認できる速度を、遙かに上回る速度で動くからさ!」

ダンッ……!

イオアナが、光を越えた速度で、俺に突撃してくる。

一直線に飛んでくるイオアナの攻撃を……。

俺は剣の腹で、イオアナの後頭部を、上からぶったたいた。

パリィイイイイイイイイイイイイイン!

イオアナは、地面を突き破り、凄まじい速さで落ちていく。

「ふぅ……」

地面には、イオアナの形をした巨大な穴が空いてる。

俺はその穴へと、一歩踏み出す。

凄まじい速さで俺は落ちていく。

数日かけて昇っていった距離を、俺はまっすぐに落下していく。

タイミングを鑑定し、俺は【飛翔】能力を発動。

地面に軟着陸する。

「…………」

イオアナは、白目をむいて倒れていた。

ぴく……ぴくぴく……とけいれんしている。

だがすぐに意識を回復させ、ガバッ! と立ち上がる。

「ぼ、ボクはいったい? なにがあった……?」

「おまえ、白目むいて無様に倒れてたぞ」

イオアナが俺を見やる。

「おまえ何をした!? ボクは何をされた!?」

その目には驚愕と、怯えが見えた。

「何って……バカ正直にまっすぐ突っ込んできたおまえを、剣で弾き飛ばしただけだ」

「ぱっ、 攻撃反射(パリィ) しただと!? バカ言うな!? 【 闘気(オーラ) 】で強化した脚力だぞ!?」

イオアナが切羽詰まった表情で言う。

「闘気をまとった体は、人間を、魔族を遥かに凌駕する身体能力を得る! さっきのボクは光を越えていた! それを目で捕らえることも、ましてや攻撃反射なんて!」

「闘気……ね」

俺は練習したとおり、【解放する】。

ゴォオオオオオオオオオオオオオオ!

俺の体から、大量の、黄金の【それ】が噴き出す。

「はぁあああああああああああ!?」

イオアナがふらり……とその場にへたり込む。

「あ、あり得ない! 闘気(オーラ) だ! こいつ……人間のくせに闘気を使っただってぇえええええええええええ!?」

俺はメイと契約したことで、闘気を解放できるようになったのだ。

「ば、ばかなっ!? とっ、闘気はボクら上級魔族しか持たないはず!」

「精霊も持ってたぞ」

「はぁ!? そんな話聞いたことないぞッ! 適当な事を言うな!」

「そんなこと言っても俺が闘気を出せることも使えることも事実だぞ」

しかもこっちは、4人分の闘気を持っている。

目で見てわかるが、イオアナのそれを、遥かに超える闘気の量だった。

「ふざ……ふざけるなあ!!!」

ゴォッ……! とイオアナの体から闘気が噴き出す。

「認めない……こんな展開……ボクは認めないぞぉおお!」

イオアナは闘気を操作し、体全身に纏う。

拳銃を2丁取り出す。

「死ねぇええええええええ!」

ドドゥッ! ドドゥッ!

イオアナの撃った弾丸が、凄まじい速さで飛んでくる。

『どうやら闘気を弾丸に付与してるようじゃな。それによって弾速と威力を底上げしておる』

やはり、闘気は体だけじゃなく、武器の威力、速度も格段に上昇させるらしい。

「こんなふうにな」

俺は闘気を、剣に纏わせ、振る。

パリィイイイイイイイイイイイイイン!

弾丸が剣の腹で弾かれる。

それは光を超えた速さ、神速の弾丸となって、イオアナの体を貫く。

「がッ! グッ! ガハァッ……!」

弾丸が命中し、イオアナの体勢が崩れる。

俺は体を沈めて、一直線に、やつの懐まで潜り込む。

「バッ……! バカな!? 闘気操作だとぉ!?」

俺は剣を振る。

ザンッ……!

1呼吸で、5回。

四肢、そして首を、ほぼ同時に斬った。

早すぎて、斬撃音が1つになって聞こえてきたくらいだ。

ボトッ……! と、イオアナのパーツが転げ落ちる。

「あり得ない! なぜだ!? なんで魔族ですらないサルに闘気が自在に操れるんだよぉおおおおおお!」

「ご丁寧におまえが教えてくれたんじゃないか」

「ああっ!? そんなことしてねえよ!!」

なんかこいつ、しゃべり方変わってない?

「おまえの持っている 技能(スキル) だよ。【闘気操作】っていうんだっけか。前に戦ったときにコピーしておいたんだ」

メイと契約したとき。

俺は単に闘気を出し、見ることしかできなかった。

鑑定すると、闘気を自在に操れるようになるには、凄まじい時間と修練が必要だということが判明。

しかし上級魔族たちは、【闘気操作】という 技能(スキル) を先天的に持っている。

そのおかげで、赤ん坊でも闘気を、手足のように動かせるのだ、と。

「おまえが俺のとこに来るのは未来視で知ってた。俺は待ち時間、じっくり闘気操作に慣れる練習をさせてもらったよ」

「そんな……あり得ない……全部……サルの手のひらの上だったってことか……? このボクが、エリート魔族の、ボクが……」

俺はイオアナの首のそばにしゃがみ込んで、言う。

「結局のところ、おまえの敗因は前回と同じ。 人間(おれ) を侮ったことだ」

俺は立ち上がって、イオアナを見下していう。

「前とまったく同じ失敗するなんてな。おまえ、サルより頭悪いな」