作品タイトル不明
65.鑑定士、罠も敵も気にせずサクサク進む
樹木の塔と化した、隠しダンジョンに足を踏み入れた、数分後。
俺は太い樹木の枝を延々と昇っていく。
途中、 茨(いばら) が敷き詰められたエリアへとやってきた。
『アインよ。あの茨の 棘(とげ) には致死性の毒が分泌してるようじゃ。しかも踏んだ瞬間に棘が肉に食い込んでくる』
「問題ないな」
俺は【飛翔】の能力を発動。
茨の上をスイーッと移動する。
棘地帯を難なく突破。
「次だ」
水が溜まり、ちょっとした湖になっているエリアへとやっていた。
【飛翔】を使って飛んでいく。
『アインよ。水中から食虫植物型のモンスターが顔を出して捕食してくるぞ。3秒後』
水たまりから、ツルの先に口がくっついているような植物が出現。
だがウルスラの警告、アリスの千里眼によって、位置もタイミングもバッチリ。
出てきた瞬間、精霊の剣で植物をぶった切る。
『10秒後。食虫植物がいっせいに捕食に来る。数は50』
波濤のように、食虫植物が襲ってきた。
『【水上歩行】をこの食虫植物から 鑑定(コピー) したぞ』
俺は飛翔を解いて、水上に立つ。
【不動要塞】を発動。
その場で動けなくなる代わりに、いっさいのダメージを受け付けなくなる。
俺の体を、食虫植物が噛みついてくる。
俺は【溶解毒】を発動。
触れている範囲の食虫植物が、すべて枯れる。
「次だ」
進んでいくと、四方八方に【花のつぼみ】のあるエリアへとやってきた。
『あのつぼみは破裂し、無数の植物の種子を、速射砲の如く吐き出すぞ。防御を貫通してくる。【不動要塞】は使うな』
俺が一歩足を踏み入れた瞬間。
ドパァアアアアアアアアアアアアアン!
つぼみが破裂し、種子の弾丸が雨あられと降り注ぐ。
「【超鑑定】」
その瞬間、動体視力を向上させ、世界が止まる
俺は【超加速】を使って、弾丸が止まっている中を、すいすいと進む。
進みながら、途中で【 攻撃反射(パリィ) 】を使い、何発かの弾丸を弾いておく。
視力が元に戻ると、弾丸は俺の元いた場所に全弾命中。
弾いておいた弾丸は、【精密射撃】の能力によって、四方を取り囲んでいた花のつぼみたちに命中。
『今のつぼみも植物モンスターじゃった。【弾丸生成】という、植物の弾丸を作る能力をコピーしたぞ』
「よし、次だ」
進んでいくと、今度は巨木がいくつも立ち並ぶエリアへとやってきた。
『あれは【トレント】と呼ばれる樹木型モンスターじゃ。あれをいくら倒しても無限に湧いてくる。本体である種子が地中に埋まっている。それを潰せ』
顔のついた巨木の群れが、いっせいに俺の元へ押し寄せてくる。
【斬撃拡張】と【居合抜き】を使用。
スパァアアアアアアアアアアン!
視界に入っていたトレントたちは、すべて切断される。
だが切断面から、うにょうにょと、新しい樹が生えている。
再生の間は動けないようだった。
俺は本体の位置を【鑑定】し、そこ目がけて【螺旋弾】を打つ。
空間をえぐる、真空の弾丸が発射される。
【精密射撃】のおかげで、本体を正確に潰す。
トレントたちは、いっせいに枯れた。
『【耐性・刺突】をコピーしたぞ。これでもう棘や落下による針トラップは一切通じなくなったぞ』
そんな風にトラップをものもとせず、俺は上へと進んでいく。
ややあって。
俺は休憩を取ることにした。
「お兄さんってさ~……ちょっと強すぎない?」
顕現してるピナが、俺に尋ねる。
「そうか?」
「強すぎるでしょ。トラップぜんぜん効いてないじゃん。もうちょっと苦戦とかさぁ、しないとトラップしかけてる側も楽しくないよ」
「別にメイがこのトラップしかけてるわけじゃないんだろ?」
「いやまぁ、メイちゃんは無意識に自己防衛してるわけだけどさぁ~……」
「なら問題ないだろ。トラップにひっかかって喜ぶのはおまえくらいだよ」
「べ、別にアタシ喜んでないし~。ただ、元ゲームマスターの立場で言うと? 超難易度のトラップを、こうもあっさり突破するのってつまんないだろうなー」
「おまえの言ってることはさっぱりわからん」
俺はその場に、ごろん、と寝ころぶ。
「ちょっと寝る」
「お兄さん、だいじょうぶ? 酸素薄くなってきてるから、たぶん頭痛すると思うけど」
ピナが心配そうな顔で、俺を見やる。
「さんそ? それがないとなんで頭痛がするんだ?」
「いや高山病とかそういうアレ。高いところいくと空気が薄くなって頭痛がするの」
やはりピナの言ってることがさっぱりだった。
『問題なかろう。アインにはイオアナから 鑑定(コピー) した【環境適応】がある。どんな環境下でも普通に過ごせる。たとえ低酸素の高所でもな』
「それってたとえ火の中水の中草の中森の中でも大丈夫ってことでしょ? なにそれすごい! 無敵じゃん!」
「意味わからん……」
「ユーリお姉ちゃんのスカートの中でも平気なんて無敵じゃん!」
「何を言ってるんだ何を……」
すると俺の眼前に、ユーリが顕現する。
ユーリがスカートの端っこを、ちらっ、とめくる。
「ユーリ……おまえ何してるんだよ」
視線を外しながら俺は言う。
「アイン、さんが……ごしょもー、なら…………ぽっ」
「ねーねーお兄さん、お姉ちゃんのパンツ何色だった~?」
「知らん!」
「……白」
俺の逆側に、アリスが顕現。
千里眼で心を見透かされたようだ。
「え~? ユーリお姉ちゃんそんな子供パンツはいてるの~? ダメじゃん! そんなんじゃお兄さんをゆーわくできないよ~?」
「がっ、がーん。ど、どうすれば、いいの……ピナちゃん?」
「アリスお姉ちゃんみたいに、紫のスケスケのパンツをもがもが……」
アリスが顔を真っ赤にして、ピナの口をふさぐ。
「姉さま、すごい……です! おとなの、パンツです! あこがれる、なぁ~」
「…………」
アリスが首筋まで真っ赤にしてうつむく。
ピナがアリスからするり、と抜ける。
「ち・な・み・に~? アタシのパンツ何色でしょーかっ☆」
「知らん」
「じゃあ3択! 1番は赤! 2番はレッド! 3番は赤いスケスケ! さぁどれでしょ~☆」
「興味ない」
「正解は赤のスケスケでした~☆ ねえねえみたい? みたい?」
うりうり、とピナが俺の頬を指でつついてくる。
「疲れてるから寝かせてくれ……」
「ピナ、ちゃん……わたし、興味、あります! スケスケ、履きたい、です!」
「えー、お姉ちゃんお子ちゃまだからな~。似合わないよ~」
「むぅ、似合う、もんっ」
わきあいあいと、精霊たちが背後で楽しそうに会話する。
「……緊張感なさすぎるだろ」
『みなおぬしがいれば、安全じゃと、信頼してるのじゃろう』
ウルスラが苦笑しながら言う。
「おまえもか?」
『当たり前じゃ。わしはおぬしの力を認めている。でなければ、大事な娘を表に出すものか』
「そりゃ光栄だ」
俺は目を閉じる。
先は長いが、ま、問題ないだろう。