軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06.鑑定士、修行を開始する

奈落を脱するために、賢者ウルスラに修行をつけてもらうことになった。

ウルスラは最強賢者(自称)らしい。

うさんくささはあるが、少なくとも 死熊(デス・ベア) を簡単に葬れるレベルの強さはあるようだ。

いったいどんな訓練を受けさせてもらえるのか……。

やってきたのは、俺が死にかけた、あの通路。

「あのぉ……ウルスラさん? 修行は……?」

「ちんたら座学からやってたら、いつまでたっても貴様が外へ行かぬからな。最短で貴様を強くしてやる。あれを見よ」

「あのぉ……なにも見えないんですけど……」

「愚か者。貴様自分の目が誰の目かわかっているのか? 貴様には恐れ多くも世界樹の精霊、その精霊核の一部が埋め込まれているんだぞ?」

精霊核とは、精霊の力の源のことらしい。

ユーリは俺にその力の1割を分けてくれたそうだ。ありがてえ……。

「貴様は1時間前とはまるで別人の目を手に入れた。見える物もまた変わってくる」

「と、言ってもなぁ……別に前と変わらんぞ」

「それは貴様に、精霊の目を手に入れた自覚がないからだ。自覚しろ。自分の目は最強の目だと。まずはそこからだ」

自覚ねえ……。

「俺の目は……精霊の目だ! ……みたいな?」

そのときだった。

薄暗かった通路が、突如、昼間のように明るくなったではないか。

「な、なんだこれ……?」

「やっと精霊の目が貴様に馴染んだのだろう。これでやっと訓練が開始できる。ほれ、前を向け」

ウルスラは足元の石を拾って、迷宮の天井めがけて放り投げる。

その石が、天井にぶら下がっていた 単眼悪魔(グレムリン) に当たる。

「さぁ来るぞ。あの敵の動きをすべて避けきる。それがステップ1だ」

「ば、バカ言うなよ! あんな素早い敵の動きを、どうやって避けるって言うんだよ!」

「まったく……貴様は学習しないな。貴様の目はすでに精霊のそれとなっているのだぞ? 人間の時とは比べものにならにないほど上質な目を手に入れている。それに貴様には【鑑定】があるのだろう?」

「あるけど……だからなんだよ!」

「人間の目でできる【鑑定】と、精霊の目でできる【鑑定】は異なるということだ。ほれ、動きを鑑定してみよ」

動きを……鑑定だって?

何を言っているのだこいつは。

俺の鑑定能力は、物体、モンスターの情報しか読み取れないっていうのに……。

いや、でも、俺の目は精霊の目だって言っていた。

もしかして……。

「か、【鑑定】!」

『単眼悪魔の動き(S)』

『→右耳を狙って、高速で飛翔し、手に持った鎌で切りつける』

よ、読み取れた!

「やった!」

ザシュッ……!

「いってぇええええええええええ!」

俺はその場で転がる。

右耳に、鋭い痛みを感じた。

見やると、地面に俺の右耳が落ちている。

「いってえ……けど、鑑定したとおりだ……」

「精霊の目は、人間の目とは、目で捉えられる情報がことなるのじゃ。人間だったときと比べものにならない、いろんなものをおぬしは鑑定できるようになっている」

「な、なるほど……てか、いってえ……」

はぁ、とウルスラがため息をつく。

懐から革袋を取り出し、俺の頭の上でかたむける。

ちょろちょろ……と水みたいな物が、俺の頭にかかる。

すると……取れた耳が、まるで逆再生するかのようにくっついた。

「ユーリより世界樹の雫をあずかってきた。これでどれだけ貴様が傷つこうと全回復する」

「つ、つまりそれって……」

「文字通り必死になって技を極めよ。いくらぼろぞうきんになろうと全回復してやる。体で精霊の鑑定能力を身につけよ」

できればもっとお手軽に能力を身につけたかったんだが……。

いや、そんな甘い話はないのだ。

「ギシシッ! ギシッ!」

単眼悪魔(グレムリン) が笑う。

また俺に攻撃するのだろう。

「【鑑定】!」

『単眼悪魔の動き(S)』

『→左足を狙った鎌攻撃』

……狙いはわかっている。

だが俺の反射神経が並であるせいで、さっきは避けられなかった。

せめて来るタイミングがわかれば……いや!

「【再鑑定】!」

『左足を狙った鎌攻撃(S)』

『→5秒後に、左足を狙う』

よし! やっぱりそうだ。

鑑定は1体につき1情報だけ。

だが人間の尺度で考えてはいけないんだ。

動きが鑑定できたんだ。

ならそこからさらに、タイミングだって鑑定できるはず!

「ギシッ!」

ひゅっ、と素早い鎌攻撃が、5秒後に、左足めがけてやってきた。

だがタイミングも、狙いもわかっているのなら!

「オラッ!」

俺は大きく右にジャンプする。

すかっ……!

「ギシッ!?」

単眼悪魔は、俺が攻撃を避けたことに驚いているみたいだった。

「へへっ、どーよ!」

「ギシッ!!!」

ザシュッ……!

怒った単眼悪魔が、またおれの耳を狙って攻撃してきた。

「いってぇえええええええええええ!」

「……まったく、一度避けただけで油断しよって。阿呆が」

ウルスラがため息をついて、俺に全回復の薬をかけてくれる。

そうだ……一度避けたくらいで調子に乗ってはダメだ。

ウルスラは、完璧に動きを避けろと言っていた。

相手の攻撃の狙い、タイミング、それを呼吸するくらい自然に鑑定できるようになれば、俺の回避能力は超向上するだろう。

「やってやるぜ! 避けまくってやる!」

何せこっちは、ケガしても全回復してくれるからな。

何度だって傷つきながら、最強の回避能力を手に入れてやるぜ。