軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.かつて鑑定士は不遇職だった

鑑定士アインがゾイドを倒し、【完全再生】の能力で、死者を復活させた。

話は数日後の夜。

精霊エキドナは、王都の市街地へと足を運んだ。

そこはアインとゾイドの戦いが繰り広げられた現場。

しゃがみ込んで、エキドナは【それ】を拾う。

ゾイドに与えた、赤黒い色の精霊核だ。

「回収完了。……まさか、あの使い捨ての駒までも、あの子は再生させるとはね」

ゾイドのその後を、エキドナは【目】を使って監視した。

アインは絶命したゾイドにも、【完全蘇生】を使用した。

破壊された体だけでなく、体細胞までもが、正常な状態へと戻った。

すなわち、魔獣から人の姿へと、戻ったのである。

その際にゾイドにつけていた【精霊核】はこぼれ落ちた次第。

アインがこれを回収できなかった理由。

彼が気づけぬよう【隠蔽】の力をエキドナが使ったからだ。

「さて。データは回収したし、あの子らの力はこの【目】でハッキリと確認できたわ」

にぃ……っとエキドナが邪悪に笑う。

「計画の首尾は上々。駒が盤上にそろうのも時間の問題。さて……帰ろうかしら」

エキドナは上機嫌だった。

軽い足取りで、その場を立ち去る。

「まっててね、ミクトラン。かならず……あなたを復活させてあげるから」

エキドナはそのまま、夜の闇へと、消えていったのだった。

ゾイドによる王都襲撃騒ぎから、1週間が経過した、ある日のこと。

朝。

ジャスパーの屋敷の、俺の部屋にて。

「アイン……さん。おねがいが……あります!」

俺がソファに座ってお茶を飲んでいると、ユーリが顕現し、こう言ったのだ。

「わたし、にも……、ちゅ、ちゅーして、ください!」

「ぶっ……! な、なに冗談いってるんだよ、おまえ……」

俺はカップをテーブルに置いて、ユーリを見やる。

「冗談、じゃ……ないです! おかーさん、とアイン……さん。ちゅーしました! わたしも、ちゅ、ちゅーしてくれなきゃ、不公平! です!」

最近なんか言いたげにこっちを見ていたのは、これだったのか。

「誰にそそのかされたんだ?」

「そりゃもちろん!」

「それと、わたしたちで~す♡」

俺の両隣に、ピナと 黒姫(くろひめ) が出現。

「おねーちゃんがねー、もー、奥手すぎて見てられなくってさぁ!」

「そんなにキスして欲しいのなら、素直に頼めばしてくれるとわたしたちが助言したのですよ♡」

「「ね~♡」」

……このアホコンビが。

「と、ゆーことで~、ささっ、お兄さん、ぶちゅっとぶちゅっと!」

「わたしたちは部屋の隅で様子をうかがってますので、どうぞごゆっくり♡」

「バッチリ見てんじゃねえか!」

すると、俺の目の前に、ウルスラが顕現する。

「ウルスラ。ちょっとこのアホ二人をどうにかしてくれ」

「ピナ。それに……黒ちゃん、アインが困っておる。勘弁してやってくれ」

黒姫は目をパチパチと瞬きさせる。

そして、にっこりと笑った。

「仕方ありませんね、ウルスラちゃん♡ さ、ピナ。わたしたちは退出しましょう」

「えー! これから面白くなりそうなのに~」

ぶーぶー、とピナが文句を言う。

ウルスラが二人を連れて、部屋を出て行こうとする。

「ウルスラちゃんは、いいの? 大事な娘が他人にキスされるかもしれないのに?」

するとウルスラが、俺を見て、ふんっ、とそっぽ向く。

「あやつは他人ではないから、良い」

ウルスラはピナたちを引っ張って、部屋を出て行こうとする。

「じゃがアイン。キスまでだからな。それ以上したらおぬしを殺すからな!」

幼女賢者は俺をにらみ付けると、扉をバタン! と強くしめた。

後には俺とユーリだけが残される。

「キスする必要あるのか?」

「ちゅ、ちゅー必要! 守り手、世界樹ともパスつながなきゃ、だめ! だから必要! とっても必要!」

ということでウルスラも、俺とユーリがキスすることを容認したみたいだった。

「どうしてパスをつながないといけないんだ?」

「…………」

「おいまさか知らないのか?」

「し、知ってます! つ、つなげないと……やばい、です!」

こいつ知らないな……。

まあ後でウルスラに必要性を尋ねてみよう。

「わかったよ。ユーリ」

ユーリはパァ……! と輝かせると、俺の隣に座る。

ちょこんと正座し、胸の前で両手を組んで、ん……と唇を向けてくる。

……改めてみると、可愛いな、この子。

「あの……はじめて、だから。いたく……しない、で……?」

「……はいよ」

俺はユーリの細い肩を抱き、そして、彼女の唇に、自分のそれを重ねる。

ぱぁ……! と俺の左目が、強く光り輝いた。

ややあって、俺はユーリから唇を離す。

「むきゅ~…………♡」

ユーリはソファに、後ろ手に倒れる。

「しあわせ、すぎて……てんに、のぼるぅ~……♡」

顔を真っ赤にして、ユーリは気を失った。

俺は少し考えて、鑑定能力を発動させてみる。

「【鑑定】」

『神眼(SSS)』

『→精霊神の目がよりパワーアップした姿。現状保持する目の能力の向上、および、神の力をその身に宿す』

……どうやらユーリとより深く結びついた結果、精霊神の目が進化したようだ。

神の力ってなんだよ。

女神と関係あるのか?

……わからんことが多い。

例えば、だれがゾイドを魔獣に変えたのか。

例えば残りの6つの隠しダンジョンの位置。

例えば、行方不明のユーリの姉エキドナの所在。

わからんことだらけだ。

けど……まあ、大丈夫だろう。

俺には、世界最強の目があるから。

かつて、俺の目には、この世界が大層憎たらしくうつっていた。

職業(ジョブ) で全てが決定づけられる世界なんて、くそ食らえと思った。

だって職業を変えることができないのだから、生き方だって、変えられないじゃないかと。

……だが、違った。

生き方は変えられる。

進むべき唯一の道だと思っていても、ふとしたきっかけで……まるで違うルートが見えてくる。

きっとこの世界は、俺が思っていたよりも……窮屈じゃないのかもしれない。

職業で人生の全てが決定づけられるのではない。

人生を決めるのは、結局のところの自分の意思だ。

鑑定職が不遇職だと、腐っていたから、俺の人生はくそったれだったのだ。

けど……俺はもう二度と、自分の職業を不遇職なんて思わない。

俺はこれからも、精霊や、仲間たちとともに、歩んでいこうと思う。

この目とともに、未来を見据えながら。